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中国: クレイジー・イングリッシュは本当にクレイジーになってしまったのか?

カテゴリー: 中国, 教育, 若者, 言語

クレイジー・イングリッシュ(Crazy English) [1]とは、英語学習法の新しい方法を提唱するLi Yang(李陽)によって設立された私立教育機関である。その英語学習法は、羞恥心を払い去るために古めかしい英語のフレーズを叫んで、英語話者と会話できるあらゆるチャンスをつかむというものである。 学習者は耳をつんざくほどの大声で力の限りに英語を叫ぶ。中国国内の至る所に教室を持ち、設立から10年足らずの間に数百万人もの英語学習者が受講したことで知られている。

しかしLi Yangのブログ [2]に投稿された写真が物議を醸し、非難や嫌味そして擁護論などあらゆる意見が飛び交っている。ブログ界やメディアの強い反応からしてこれは避けられない話題である。

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9月4日に投稿された写真では、3000人の学生がクレイジー・イングリッシュの講師達にひざまずいている。これは内モンゴル自治区のパオトウ(包頭)市で2番目にオープンしたクレイジー・イングリッシュの訓練センターのオープニング・セレモニーで撮影されたものである。彼らは全て地元の高校に通う生徒達である。

多くの憤慨したネチズン達はすぐに、これは教育ではなく隷従や意思を奪う洗脳だと非難した。というのも、中国ではひざまずくという行為は、歴史的に権力に隷従することのシンボルであったからだ。
ブロガーのTong Wandou(铜豌豆) は以下のような疑問を投げかけている [3]:

跪拜礼虽表现的是种至尊的礼数,但它更多地代表着王权,凸现着人权的不平等,显然是不适宜当今社会互尊互爱的人际礼仪行为

ひざまずいて崇拝するのは最上の礼ではあるけれども、それは現代お互いを尊敬し合うという社会ではなく、人々の間の不平等を重視していた王政を象徴するものだ。

Xu Xiaoping(徐小平)は別の教育機関New Oriental [4]の講師で学生達にTOEFLやSAT対策を教えているが、Li Yangに対して非難を浴びせている [5]。:

李阳接受学生下跪事件,必将成为2007年教育界最重大标志性事件之一。它标志着中国教育核心价值的缺失达到了怎样严重的地步。而李阳老师对几百学生向他下跪这种骇人听闻的现象公然表示欣赏,说明李阳老师心灵深处还不懂教育的基本价值。

Li Yangが生徒達がひざまずくことを受入れた事件は、今年の教育界で最も特筆されるべき事件のひとつであろう。これは中国の教育における本質的価値がどれだけ失われたかを示すものである。しかもLi Yangはこのショッキングなひざまずきを開けっぴろげに感謝している。これは彼が教育の基本的価値を全く理解していないということを人々に知らしめた以外のなにものでもない。

さらにはLi Yangをカルト宗教の教祖に比定する者も現れた:

笔者知道,越是神化了自己,李阳的疯狂英语会更加的红火。说到底,这是一种奴化人性的教育,是一种迷惑人的教育。这与民间的装神弄鬼来骗钱的把戏,没有本质上的区别。我不是英语老师,但我知道,学习英语却不必疯狂。难道美国人、英国人学习自己的语言也要通过疯狂的方式?

笔者看武侠小说,那些邪教门派总是通过下跪等方式神化自己,以达到统率的目的。而李阳的某种方式却与之挺像。难道李阳也走火入魔了?谁来拯救他? ——海峡都市报 王军荣

Li Yangは自分自身を神格化することで、クレイジー・イングリッシュをさらに繁栄させるのだ。それは魅惑的な教育のようだが、詐欺師のトリックと何ら変わらない。僕は英語教師ではないけれど、英語学習がクレイジーである必要がないことは知っている。アメリカ人やイギリス人は自分の母語を勉強する時は頭がおかしくなるというのか?

武侠小説を読んでいると、カルト教団(悪役)のリーダー達は、自分たちを神格化し統率力を高めるために異教徒達を集めてひざまずかせる。Li Yangは全く同じことをしたのだ。Li Yangも正気ではないのか?誰が彼を救うのか?
–海峡都市報記者 Wang Junrong(王軍栄)

Li Yangの投稿記事にはたった数日間で270000ものアクセスがあり500件のコメントが付いた。明らかにこれらのコメントはLi Yangの期待に沿うものではない。しかし彼は自分の非を認めず、9月8日の投稿では [6]彼は自分の立場を主張した:

在这里,我要申明我的观点:第一,是我提议学生给他们的老师跪下感恩的;第二,我认为这是普通的、伟大的一跪!

ここで私の立場から言わせてもらうと、第一に、教師達への感謝のためにひざまずくよう生徒達に提案したのは私である。第二に、こうしてひざまずくことは至極普通のことだが大きな意味のあるものだと思っている!

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彼はその日の出来事をこう述べている; 初めに受講者たちに対し、講師陣に向けて謝意を表すためにお辞儀をするよう持ちかけた。しかしすぐにやはりひざまずくように提案した。というのもスペースが限られていたからだ。生徒達は彼の提案を受けいれて自発的にそうしたのだという。

インタビューの中で、Li Yangはこの行為が深い内省を意味していると反論している。それは我々がしばしば自分達を助けてくれる人々への感謝を忘れてしまうからと言っている。またドイツの首相もポーランドでひざまずいたことも例に挙げた。 彼はまた、前述の徐小平の論調を相手を非難しお互いに評判を傷つけ合う文化大革命時代のスタイルだと批判した。

しかしほとんどのネチズン達は批判を止めなかった。Zhang Junyi (張軍顕) は自身のブログ [7]で以下のように非難している;

让学生学会感恩是正确的,但是采用这样一种差不多已经被历史淘汰的集体极端方式来表达所谓的感恩,本身就是对感恩的一种情感强奸。

確かに感謝することは何も悪いことではない。しかし今ではほとんど忘れ去られた方法を使うということ自体が感謝の意を感情的に踏みにじることなのだ。

Xu Xunlei はLi Yangが教育の意味を誤解しているのではないかと考えている [8]:

教育的核心价值是“立人 ”,如今却是“跪人”。把下跪磕头等同于尊师重教,这根本就不值一驳。教育的奴性与奴性的教育,在反复戕害孩子的心灵。

教育の神髄はその人の品位を育て上げることであり、膝をつくように押さえ込むようなものではない。ひざまずかれるほど尊敬される教師であれば、そもそも非難など受けないはずだ。

さらにネチズンたちの中には、Li Yangがナチスの集会のように抑圧的な雰囲気を作り上げたために生徒達がひざまずくことを余儀なくされたと論じている者もいる。

Li Yangは批判の渦中にあるが、それでも多数の人々が彼の味方をしている。Li YangのブログにはWang Zhijie (王志杰) というクレイジー・イングリッシュの信奉者がコメント [6]を残している:

大成者,大寂寞!

出る杭は打たれる!

中国人が過去の虐げられていた時代に敏感になりすぎているのかどうかを断言できる者はいない、あるいはこれはブログポータルサイトのSina.com [9](新浪)による見せ物なのか、はたまたLi Yangがちょっと違ったやり方で注目を集めるためのトリックなのだろうか。全体的にみて、この論争では、主人公であるLi Yangが最も自身の論点に固執している。彼はことの次第を こう要約している [10]:

李阳回应:“下跪的照片是真的,我已经习以为常了,学生下跪是对老师的尊重。过几天我还要去成都讲课,相信可以让成都最好中学的全体学生下跪。” 9月10日< 新快报>

この写真は本物だ。それに私はこういうこと(ひざまずかれること)には慣れている。これは教師に対する尊敬の意だ。数日後に私は成都で講義をする。そして私はそこの最も優秀な生徒達もひざまずかせることができる。

原文:Bob Chen [11]