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日本:インターネット規制最終報告

おそらく世界最大のブロゴスフィア、そしてほぼ間違いなく最大のオンラインフォーラムを有し世界で最もアクティブなネット文化を誇る国が、国内のネット上コンテンツの規制を試みるなど信じ難いどころか実行不可能であると思うかもしれない。しかし、先立って日本政府が明らかにした計画(ほとんど話題にならなかったが)の狙いはまさにそれであり、極めて漠然とブログや個人のホームページなど幅広いコンテンツを対象としている。

6月に総務省の研究会が発表した規制案についての中間報告では、オンライン通信で最も大きい3つの分野の規制について極めて漠然と示されている。6月にアットマーク・アイティに掲載された記事ではこう説明されている:

最後の公然通信は最も対象コンテンツが幅広い。中間報告は「ホームページなど公然性を有する通信コンテンツ」と公然通信を定義する。電子メールなど特定の人とだけ行う私信以外のすべてのネット上のコンテンツが、対象になると見られる。「2ちゃんねる」などの掲示板や、個人のブログも公然通信だ。

中間報告はまた、パブリックコメントを求めるよう提案しており、総務省は6月と7月にウェブサイト上にコメントを提出できるスペースを解説した。後の報道によれば、個人から222件、事業者・団体から54件、合計276件の意見が政府に寄せられた。KDDIやスカイパーフェクト・コミュニケーションズなどの通信事業会社は法体系の組み替えに賛成しつつもコンテンツ規制には難色を示しており、一方で日本経済団体連合会(日本経団連)、テレビ朝日、フジテレビ、NHK、日本新聞協会などはこの案に反対の構えを明確にしている。ヤフージャパンなどの組織も「公然通信」に含まれる範囲を明確にすべきだとしている。

今月はじめに規制案の最終報告が発表され、2010年通常国会への法案提出へと進む段取りがそろい、やっとこの問題に注目が集まり始めた。ブロガーtokyodo-2005(ヤメ蚊)は、この問題がまだパブリックコメント段階だったころから取り上げており、最終報告についての詳しいエントリーを掲載している。

このエントリーで同ブロガーはまず、規制に対しコメントを送った222人の手柄を評価している:

ネットについての規制が政府主導でなされ、ネットの表現の自由が奪われるのではないかというおそれがある、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の「中間取りまとめ」に対しては、異例の多さのパブリックコメントが寄せられた(※1)。その多くは規制に反対するものだった。その結果、同研究会が12月6日にとりまとめた通信と放送を融合させる法制度に関する最終報告書には、反対の声を少し配慮したような表現が盛り込まれた。罰則を阻止したようにも読め、大きな成果といえるかもしれません(パチパチ)。パブコメをお願いするシリーズを展開した当ブログとしても少しほっとしています。しかし、規制は一度始まれば強化されます。しかも、致命的な欠陥である「政府による監督」については「独立行政委員会」を設けるべきだという提言はされていません。このまま、法制化させないように、今後も、声を上げ続けましょう。

最終報告書21頁からの引用:

日本国内では現在、著作権法や薬事法等の個別法において違法情報の発信規制が行われているほか、ICT利用環境整備の観点からは、個人の権利を侵害する情報についてプロバイダの責任制限や発信者情報開示請求権を定めたプロバイダ責任制限法が制定されているが、社会的法益を侵害するような違法な情報への法制的な対応は諸外国に比して十分とは言い難い。プロバイダが自主的に行っている対策について、法的根拠等の規律整備を求める声や、迅速な被害者救済を求める声も多い。

しかしながら、違法な情報に対して国が包括的かつ直接的な規制を課すことは、言論・表現活動の過剰な萎縮を招くおそれがあり、また、ブロードバンド網の発展等を背景にここ数年で急速に開花した我が国の自主・自律を旨とする豊かなネット文化と相容れない可能性が高い。パブリックコメント等でも同様の意見が多数寄せられたところである。

これらを総合的に勘案し、情報通信法という包括的な法制においては、違法な情報に対する国による包括的かつ直接的な規制は当面差し控えることとし、情報通信ネットワーク上で情報を流通させる全ての者が本来遵守すべき最低限の配慮事項を、具体的な刑罰を伴わない形で整備することを検討すべきである。同時に、社会的法益を侵害するものも含め、違法な情報への迅速な対応・被害の防止・被害者の救済を図るため、例えば、関係者の法的責任の明確化や、ISP等による削除やレイティング設定等の対応の法的根拠の整備など、行政機関が直接関与しない形での対応を促進する枠組みを整備すべきである。なお、違法な情報の流通状況・被害状況については今後詳細な調査を行い、必要があれば刑罰の付与等の適否についても検討すべきである。

そして、中間報告からの引用(※3):

【具体的には、「公然通信」に係るコンテンツ流通に関して、各種ガイドラインやモデル約款等が策定・運用されていることを踏まえ、違法・有害コンテンツ流通に係る最低限の配慮事項として、関係者全般が遵守すべき「共通ルール」の基本部分を規定し、ISPや業界団体による削除やレイティング設定等の対応指針を作成する際の法的根拠とすべきである。「プロバイダ責任制限法」などICT利用環境整備関係法制度についても、可能な限り一元化すべきである】(10頁)

同ブロガーは以下のようにコメントしている:

両者の違いは、どうやら罰則の有無のようだ。中間とりまとめ段階では、明記されていなかったが、罰則が設けられる予定だったが、最終報告書では罰則をはずす方向で明記されたということらしい。

 もし、そうだとしたら、これはパブコメによるかなりの収穫だと思われる。罰則を伴うということは強制捜査を伴うということで、その場合、いやがらせ逮捕などによって、表現の自由を封殺することができる。しかし、罰則がなければ、強制捜査はできない。

 …とはいえ、もし、パブコメでの反対表明がなければ、罰則がつく方向で最終報告書が作成されていたのかと思うと、ぞっとする…。

 もちろん、【行政機関が直接関与しない形での対応】(最終報告書22頁)といっても、放送に関する独立行政委員会のない日本では形式的には間接的であっても実質的には直接的な関与となることが十分に考えられるため、油断できないし、【なお、違法な情報の流通状況・被害状況については今後詳細な調査を行い、必要があれば刑罰の付与等の適否についても検討すべきである】(最終報告書22頁)とまで言っているのだから、なおさらだ。

 なお、有害情報(違法な情報とは必ずしも言い難いが、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報や特定の者の権利や福祉にとって有害と受け止められる情報)については、中間とりまとめでも最終報告書でも、ゾーニング規制を採用するべきだと述べており、この点は変更がない。

 ところが、最終報告書(23頁)によると、【具体的にはフィルタリングの提供の在り方について検討すべきである。また、民間事業者による有害か否かの具体的判断を支援するための第三者機関を制度化することについても、その必要性も含め検討すべきである】とされており、危険性が顕在化した格好だ。

 つまり、第三者機関を設けて有害性の判断をする方向へ持って行くようだが、その第三者機関は、政府主導のものとなりそうなのだ。なぜなら、同じページに、【具体的な有害性の判断について、ISP等では現実的には個別に判断することが困難だという問題点が指摘されており、現行の自主的な対応では十分ではなく国の積極的な対応が必要との声もある】と明確に書かれているからだ。

 フィルタリングソフトによって遮断すべき情報の選択に政府が絡むなんてとでもない話だ。到底容認できない。

 
 しかも、個人のブロガーの問題だけでなく、いわゆる報道機関にとっても、問題の残る最終報告書となっている。毎日新聞(※4)によると、【新法が制定されれば、影響力の大きいメディアによってネット配信されたコンテンツが政治的に偏っていたり、有害だと判断された場合は配信者(事業者や個人)に対し削除や訂正を求めることができるようになる】という。確かに、その趣旨のことが、最終報告書17〜20頁にかけて掲載してある…。

 政府が、メディアに対し、「政治的な偏り」を訂正するよう指摘できる国…それって共産国とか独裁国なみの自由しか与えられないってことではないだろうか…。放送については電波の有限性から説明がなされうるが、そもそも、日本では放送行政を政府が携わっていること自体が問題なのだ(※5)。

 本報告書の決定的な問題点は、通信と放送を融合した法制度を設けるに当たって、監督機能を政府から「独立行政委員会」に移すべきだという提言をしていないことなのだ。政府による監督を許す限り、日本の表現の自由は、共産国や独裁国なみだというほかない。

 この点、パブコメでも多くの方が、指摘していたが、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」は、これを無視した格好だ。

 上記毎日新聞によると、総務省は来年1月にも情報通信審議会(総務相の諮問機関)に制度の見直しを諮問し、新法の具体案を詰めるたうえ、2010年の通常国会に提出する構えだという。

 それまでに、独立行政委員会の必要性をより多くの市民に理解してもらわなければならない。みなで、情報流通させましょう!

  1. http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/9af67d642137296e32de93bb1908fcc5
  2. http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/pdf/071206_2_bs2.pdf
  3. http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/pdf/070619_3_bs2.pdf
  4. http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071206k0000e040043000c.html
  5. http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/59df2623d2dbe2c0c3569bd9862508df

原文:Christopher Salzberg

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