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ロシア:電気技師がヴァシリー・アレクサニアンの事件に思うこと

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, ロシア, デジタル・アクティビズム, 人権, 健康, 国際関係, 抗議, 政治, 法律, 経済・ビジネス, 行政, 言論の自由

投獄されているユコス前代表、ミハイル・コドロフスキー [1]の弁護人、ロバート・アムスターダム [2]いわく、「死の病に冒されているヴァシリー・アレクサニアンは、ずっと許可されなかった治療を受けるために、『神隠し [3]』にあって新しい施設に移されたという相容れない報告」があるという。詳細 [4]はこうだ。

[…]彼の弁護人による最新プレスリリースによると、アレクサニアンが治療を受けたとは確認できていない [5]。実際には、彼の弁護人も家族も、アレクサニアンが「秘密の場所」に移送されてからは、その居場所すらまったくわからないのだ。弁護人に囚人の居場所や治療について連絡しないのは、ロシア国内法に違反する-検察による数多い違法行為のうち、最新のスタイルだ。[…]

別の投稿 [6]でアムスターダムは、アレクサニアンを支援する「大合唱は大きくなる一方だ」という。

[…]コドロフスキーは、同僚でもあった友人のためにハンスト [7]を始め、これが国際社会の注意をひきよせた。欧州議会の議員23人が連名でヴラディミール・プーチンに書簡 [8]を送り、何らかの配慮をするべきだと訴えた。ロシアの人権オンブズマンも、ロシア正教代表も、やんわりと同じことを要請した。アムネスティ・インターナショナル [9]他の人権団体 [10]も声を挙げた。[…]

以前Global Voicesで紹介したアレクサニアンのケースに関するの翻訳 [11]では、国際的には比較的静かに受け止められ、ロシアのブロガーからは大反響を得たことを取り上げたが、以下ではアレクサニアンについてはまったく何も知らなかった、あるロシア人電気技師の話を紹介する。LJユーザであるジャーナリストのbecky-sharpeが書いたものだが、この寸劇 [12][Ru]は、オンラインメディアを情報源として信用していないロシア人がコドロフスキーやアレクサニアンが置かれている地獄をどのようにとらえているかを反映している(していないかもしれないが)。

朝、一人の電気技師がやってきた。彼は随分前からの知り合いで、信頼できる男だ。なんといっても、うちの家政婦の夫だ。この家政婦は、どこか遠くに住む年老いた母親の面倒を見ていて、一時的に、我が家に来れなくなっている。しかし彼女の夫はいまだにモスクワにいる。彼は新しいソケットの設置に来るついでに、代わりに掃除をしてくれる女性を連れてきた。

ミーシャは非常に単純なロシアの男だ。非常に人当たりがよく、暖かみがあって、親切だし、まじめだ。そう、こういうタイプの人間にうちで働いてもらうために、引き止めておこうとがんばっているわけだ。彼にアレクサニアンのことを聞いてみた。彼の答えは、何も知らない、だった。

-ミーシュ、新聞は読む?

-いや、読まないね。

-どうして?

-うーん-と、少し口ごもって-おもしろくないからね。君の書いたものは読んでるけど。(これは、お世辞だね)

[…]

-テレビは見るの?

-(トークショウを)時々。妻と見るんだ。・・・あぁ、ニュースね・・・ そうそう、それよりもDVDをよく見るな。昔の映画が好きなんでね。

-ミーシュ、コドロフスキーについてはどう思う?

-当然だけど、頭がいいよ。なんで彼だけが投獄されているんだろう? どうして、(ロマン・アブラモヴィッチ [13]も)同じように放り込まないんだ? 全員を入れるか、誰も入れないかのどっちかだろ?

-ところで、私の(87になる)祖母も、同じことを思っているよ。

「いいかい? こいつ、コドロフスキーは確かに悪党さ。でも、何でやつだけ(刑務所に入れられている)? プーチンは間違ってると思うね」

これが、圧倒的多数の一般人が口にする、ごくわずかな抗議だ。なんで、やつだけなんだ?

そう、それと「みんな、Shcherbinskyの味方になった(*)のに、誰もアレクサニアンの味方にならないのはなぜだ?」それは、誰もアレクサニアンのことを耳にしたことがないからだ。テレビはShcherbinskyを追っかけている。アレクサニアンは、もみ消されている。さ、続きをどうぞ。

(*)アルタイ地方の知事ミハイル・エヴドキモフ [14]が死亡した自動車事故で有罪となり、4年の実刑判決を下されていたが、ロシア中のドライバーが抗議して、有罪が覆された。

ミーシャは、善人で親切な技師だ。信心深くもある。誰かが危険な目にあっていたら、ミーシャは真っ先にその気の毒な相手に同情するだろう。その彼にアレクサニアンについての記事を読んでもらった。「こんなの信じられないよ」。読み終わったミーシャはそう言った。「まったくひどい話だ・・・ 神を恐れてすらいないんだ・・・」

-ミーシャ、もしこのことを知っていたら、デモに出かけた?

-そうだな、もし他の人が行くのだったら、私も行っていただろうね。でも、その政治的なもののためじゃないよ。政治家なんて信用してないし。病人を支援するために行くのさ-それは神の命じたことさ。行かなくちゃ。私が知る限り、神ってのは、いろんな(ろくでなし)にもう片方の頬を差し出せって命じている。もし、やつらのせいで結核に感染したら、赤痢にも感染させられるのを待ってろってことだ。が、ミーシャの神様はまともな人の神様だ-ミーシャは、聖書にはこれ以外のことは書いてあるはずがないと信じている-病人がいたら、行ってやりなさい。