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日本:建築家ブロガー、再開発計画に立ち上がる

カテゴリー: 東アジア, 日本, 写真, 抗議, 芸術・文化, 開発

最も有名な日本近代建築作品のひとつが、解体の可能性に直面している。昨年10月に民営化された日本郵政 [1]は、昨年、現在の建物の位置に200メートルのビルを建設するという計画を発表 [2][en]した。この計画の一部は早ければ5月にも着手される。

東京中央郵便局の庁舎は、旧逓信省の他の庁舎も手がけた日本近代建築家の吉田鉄郎 [3]により設計され、1931年に完成した。ドコモモ [4]はこの建物を日本の近代建築20選の一つに挙げている。東京駅周辺でも旧丸ビル(ブログ・すばらしき新世界 [5]写真あり [6])や三信ビルディング(Tokyo Lost Architecture写真あり [7])などが大型再開発の波に消えていく中、中央郵便局庁舎は現在も残る残り数少ない歴史的建築物のひとつとなった。(Tokyo Lost Architecture [8]は、解体された建物の写真を記録している。

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東京中央郵便局の建物(写真:Flickrユーザーosmatsuda [9] クリエイティブ・コモンズ・ライセンス ライセンス条件を見る [10])

この再開発計画には、建物の重要文化財指定を求める建築家のみならず国会議員や市民グループなどから反対の声が上がっている。懸念するブロガーたちは、この歴史的建物の保存を呼びかけている。

ブロガーschinkel [11]は、中央郵便局の写真を掲載し、日本人は将来文化的遺産を失してしまったことを後悔するだろうと書いている。

言わずと知れた近代モダニズム建築を代表する作品。
しかしネットが張られており解体待ちといった風情だ。この国の文化的精神的貧困と洞察力の無さを象徴する光景と言える。
現代の東京の超高層ビルは1930年代における東京中央郵便局程には東アジア地域で傑出した建築ではない。いつの日か政治的にも経済的にも完全に周辺諸国の後塵を拝したときに初めて、語るべきかつての栄光ある歴史の残滓はほとんど何も残っていないことの悲哀が身にしみるのだろう。

ブロガーでグラフィックデザイナーのsolidThinking [12]は、郵便局庁舎の建築的価値について言及し、自身がアムステルダムへ旅行した時の経験を振り返っている:

日本人は、どうもこうして文化遺産をいとも簡単に壊してしまうのでしょうかか? 一度壊された物は元に戻りません。
これら二つの郵便局は、日本の伝統の柱と梁というシンプルな形状を近代建築=モダンスタイル に応用したもので、西洋建築を模倣した、建築物と一線を画します。  これらの設計は、日本と深い関係がある、アントニン レイモンドや、ブルーノ タウトが賞賛したデザインです。

アムステルダムでは、ファサードを残し、中身を改造する建築方法と採用しています。 私が訪れた時にも、運河沿いに銀行が作られていましたが、本当に皮一つ(ファサード)のみを残して後は、全部新築です。 昔の町並みを残そうとするその試みは、民族性=オリジナリティを残す事です。 

建築家ブロガーkurarc archiscape [13]は、さらにこの建物の歴史的背景について説明している:

東京中央郵便局は建築家吉田鉄郎の設計による。郵政事業が民営化されたこともありこの建築物のある部分(またはすべて)を壊し、高層化しようという方向性が打ち出されている。その方向に異議をとなえようという会である。

この建築が建設された当時、ブルーノ・タウトがこの建築物を見学している。残されたタウトの日記によると、1933年の5月28日にタウトは建築家吉田鉄郎、山田守、谷口吉郎とこの建築を見学している。タウトはこの建築を「非常にすぐれている・・・・同氏(吉田)の建築は極めて即物的だ」として、吉田鉄郎を「最高の力量を具えた建築家」として絶賛している。

アドボカシーグループの呼びかけ人の一人である日々 from an architect [14]の建築家Koichiro Kanematsu氏は、読者に協力を呼びかけている。

そして、東京中央郵便局。
郵政の中に昨年来「歴史検討委員会」(非公開)が設置されて審議されてきたが、このままだとほんの一部を貼り付けて高層化し、民意を受けて保存したのだといわれかねない。思い余って、危機感を持つ多くの人と共に「東京中央郵便局を重要文化財にする会」を設立することになった。
時間がない。[…]

このブログを読んでくださる方々にお願いしたい。ぜひ発起人に名前を連ねていただきたいのです。恐縮ですが、ブログにリンクさせている僕のHPの「イベント情報」欄を、ぜひ開いてください。たってのお願いです。

建築家ブロガー野沢正光氏 [15]は、「中央郵便局を重文にする会」の結成は前例にない動きだと書いている:

「中央郵便局を重文にする会」は事態の急な動きを受け、100人を超える発起人を集めて動きがしたという形のようだ。市民の参加が力強い。国会議員による動きもあり、党派を超えた20人を超える議員による「会」できているとのことであった。今までに無い動きではないか。
吉田鉄郎という稀有な建築家について考える機会ともなろう。原状を極力回復し保存活用を望む。私は先日ウイーンでワグナーの郵便貯金局が活用されながらミュージアムとなっているのを見てきたばかりだ。彼此の差を考えざるを得ない。