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ハイテクの日本がエンジニアを枯渇させている

数週間前、ニューヨーク・タイムズ紙の「ハイテクの日本がエンジニアを枯渇させている」という記事を翻訳し紹介しているブロガーgothedistance氏によるエントリが、日本で広く使われているソーシャルブックマークサービスの一つである、はてなブックマークの 人気エントリになりました。この記事は、日本のいわゆる「理系離れ」と呼ばれる、深刻さを増しつつあるエンジニアの人材不足について書いているものです。同紙によると、日本の若者たちは、最近、エンジニアリング分野より、金融、医学、あるいはアートのようなクリエイティブな職業に興味を持つようになっているそうです。この問題は10年以上前から認識されているものですが、最近になってようやく、企業がそれがそれを実感するようになっています。エンジニアの不足は50万人に達するとする予測もあります。

この記事を書いた gothedistance氏は、ニューヨーク・タイムズ紙の指摘内容はおおむね正しいと見ています。この現状認識は、ほぼ、はてなユーザ(プログラマ、IT系が多いと言われている)の間での共通認識となっているらしく、同意、共感するコメントが多く寄せられています。

「雑種路線でいこう」のブロガー楠正憲氏は、mkusunokというハンドルネームで次のようにコメントしています。

NYT侮り難し。書いてあること全部正しいし、ヤバ過ぎて日経には書けないよねー

goyoki氏のコメント

高齢技術者の高待遇ポストが少ないのは問題だと思う。技監やフェロー、CTOなんかは普通は管理職扱いだし、例えば50代上級プログラマなんてのは日本では半端な待遇で激務、なんてイメージしかわかない

さらには、elm200氏のこんな意見まで。

このエントリと直接関係無いけど、まだこうやって日本の記事を書いてくれる New York Times はありがたい。BBC News なんてほぼシカト状態からね。”China” の五文字を見ない日はないのに

ブロガーの池田信夫氏は、以前、著書(「過剰と破壊の経済学」)の中で日本のIT産業独特の「ゼネコン型の多重下請け構造」について、次のように書いていました。

(親会社が開発・設計を行い入札で安く請け負う企業に発注するアメリカの企業に対して)トヨタは開発段階から「デザイン・イン」などによって下請けと情報を共有する(中略)。トヨタと下請けを結びつけているのは、アメリカ的な契約でも資本関係でもなく、属人的な長期的関係である。(同書 P128)

そして、池田氏はブログの中で、ニューヨーク・タイムズ紙の記事が示す問題の根本的原因はここにあると主張しています。

この閉鎖的な産業構造は、長期雇用や企業別組合など戦後にできた制度によってつくられたもので、ある種の製造業には適していたが、オープン・プラットフォームのもとでモジュール化された技術を組み合わせるには適していない。

正社員だけを過剰保護する雇用慣行のおかげでSI業者が人材派遣業になってしまったため、企業のコア部門にITのわかる人材が育たず、情報システムでイノベーションが生まれないから若者のIT離れが進む・・・という悪循環が急速に進行している。

gothedistance氏もまた、元記事を紹介するエントリの中で、自らの日頃の問題意識と合わせて、「いわゆるSIer(System Integrater)と呼ばれている業種がITサービスではなくて人材サービス業の色が強い」という日本のIT産業の構造的な問題を指摘しています。

これは彼が以前から取り上げていた問題で、 以前の記事の中で彼は次のように言っていました。

日本のITビジネスは脆弱なビジネスモデルです。最も品質を問われるべきソフトウェアにおいて派遣による偽装請負なんかがまかり通っているのは、日本だけです。70〜80年代にプログラマの絶対数が足りなくてとにかく人をかき集めて現場に派遣するようなスキームが横行したのと、時間がかかればかかるほどコストがかかり結局その分売上が立つという人月商売モデルの2つの悪因が両輪となって、今のような奇形児になりました。簡単に言うと、腐れエンジニアをかき集めて仕事を進めるスキームになり、腐れエンジニアもできるエンジニアも同じ「1人月」だということですね。

そして、彼はcodemaniax氏というブロガーが紹介している松原友夫氏の論文にリンクしています。

ソフトウェア開発ビジネスで、成果責任を負わない派遣形態がかくも横行しているのは日本だけである。

派遣ビジネスはソフトウェア開発作業を成果で請け負うのではなく、一ヵ月いくらというように、技術者の時間を売る。派遣指向のソフトウェア会社にとって最大の関心事は、人月単価と、人の稼働率であって、稼ぎが減る開発プロセスの改善や、余計な金を使う技術教育は、できればやりたくない。特に品質は、技術者だけの問題とみなされ、経営者は関心を持たない。極端な話、派遣プログラマーが自分で埋め込んだバグの摘出に時間を掛ければ、会社の実入りは増える。

他に、スラッシュドットジャパンにもニューヨーク・タイムズ紙の記事についてのスレッドが立ち、次の意見がモデレーション5となっています。

まずは、技術職の給与を見直し、生涯賃金が一般職と同等、もしくは上に設定し一般職に振り回されない体制を作ることができれば改善できるのではないでしょうか?

この意見も同じく高いモデレーションを受けています。

今の政治の流れでは海外の労働者に今後ゆだねていくことになるのでしょうが、技術蓄積を行わないままでは、賃金も技術も海外に流出。と思うのですが、この想いをどうやれば現実に反映できるんだろう。

若い世代では共有されている危機感が、社会の中になかなか反映されていかないという苛立ちがあるように思います。

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