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日本:東方力丸、初の漫読屋

カテゴリー: Popular Post, 東アジア, 日本, 意見, 芸術・文化

芸名は東方力丸 [1]。彼は「漫読屋」と名乗り、5年間で東京西部の郊外を行き交う何百人もの通行人をその腕前で魅了してきた。

伝説的漫読屋として東方力丸が誇る人気は、(最近いくつかの小さな番組に出演したが)テレビやラジオ番組のおかげではなく、物語に登場する(男や女、子どもなどの)キャラクターを自身の声で再現し演じる彼の能力と漫読に注ぎこむ彼の熱意、そして聴衆と触れ合う時の暖かく丁寧な彼の姿勢にある。彼が特にユニークなのは、多くの文化の中で現代においても引き継がれている手法を現代風にアレンジできることである。つまり、伝統的な物語の朗読で引き継がれてきた手法である。しかし、彼が朗読する物語は、現代の日本における人気文化の産物、すなわち漫画である。

女性上位時代 [2]では、ブロガーが妹と一緒に東方力丸の漫画を聞きに行った時のことを書いている。

梅雨の中休みで好天に恵まれた日曜日。買い物ついでにふらふらと立ち寄った井の頭公園は、ギターを奏でて歌う人あり、刀剣でジャグリングする人ありと休日っぽい雰囲気。その一角でビニールシートにマンガを並べ、傍らに佇むアヤシイ人発見。

イタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

長髪にハチマキ(タオル?)、ヒゲ面・メガネのこの方こそ東方力丸さん。好きな漫画をリクエストすると、セリフから効果音まで力を込めて読み聞かせてくれる「漫読家」です。深夜番組「あらびき団」で見て以来、非常に気になってました!ちょうどカップルが「NANA」を読んでもらっているところで、その後私が目を離した隙に、妹が力丸さんと交渉を成立させ、私も一緒に風呂用のイスに着席。漫画は彼の十八番であろう「北斗の拳」。

「最近浮かれているわたくしですが、力を入れてやらせて頂きます」と丁重な挨拶を述べ、きっちり正座をして漫読スタート。ケンシロウとラオウの死闘、それを見守るリンやバットにユリア。キャラを見事に演じわけ、技が繰り出されると私たちに誌面を近づけたり離したりという演出も。腹の底から出す声が周囲に響き渡り、その迫力にどんどん人が集まってきます。す、すごい!!「北斗の拳」はちゃんと読んだことがないけれど、全巻読破したような満足感があるとかないとか。(´∀`)

おひねりで妹と一緒に千円を出したら(計二千円)、「いやいや、こんなにもらえません。この千円でお二人でマックでも…」と返されました。なんて律儀なお方でしょう。ますます高感度アップです。最後にはチョコ菓子までくれました。

情熱の重さは夜のうなぎ [3]では、3年前の日記で、ブロガーが始めて東方力丸と出会った時のことを書いている。

もう何度も見かけていましたが、ちゃんとお金を払って読んでもらった事がなかったので友人Iさんと勇気を出してお願いしました。
「特攻の拓 第一巻」です。[…]
効果音はもちろん凄かったのですが、女の人の声もちゃんとしてくれるのが超面白かったです。
はじめは誰も居なかったのですが。私たちが聞いていると20人くらい集まってきてました。

週末吉祥寺探索 [4]のブロガーは、力丸の漫読に夢中になっている。

頂いた名刺には「漫読家」と書いてありました。
その名の通り、ずらりと並んで置いてある漫画の
中からリクエストで力丸さんが読んでくれます。
少年、少女漫画など幅広いジャンルがあります。
私がその中でも特に好きなのは北斗の拳です。
「あたたたたたたたたったたたたたあああああああ!!!!!」
と血管が切れそうな勢いで漫画を読んでくれます。
3人ともそれぞれ表現方法に違いはありますが、
人を立ち止まらせ、引き付ける魅力があります。

昨年、力丸は自身のブログを立ち上げた。最初は日記の更新など続かないだろうと思われていたが、ブログを始めた時から、彼は自身の生活や活動に関する写真や情報とともに継続的に日記を更新している。

自己紹介に関する最初の日記には次のような2つがある。最初の日記で彼は下記のように綴っている。

ちなみにオイラの活動です。

仕事は事務所からのお仕事や、御依頼頂いた番組、イベントなどにも出演させて頂く他、普段は下北沢や井の頭公園で漫画を読ませて頂いております。

毎週土曜日・・・下北沢駅南口ガード下 20時頃~25時くらいまで
毎週日曜日・・・井の頭公園 野外ステージ前付近 12時頃~夕方暗くなる前まで

そのほか平日の夜も下北沢では出没するときもございます。
天気によっては井の頭公園の方は遠慮させて頂いている場合もありますが、
下北沢に関しては雨が降ろうと、
雷が脳天に落ちようと(それはそれで面白い光景かもしれないなぁ)やらせて頂いております。

別の日記では、下記のように綴っている。

オイラの普通の日常。

朝起きて99ショップで自炊の食材を買い、
コンビニエンスストアーで立ち読みをし、
古本屋で漫画を買う。

古本屋で漫画を買うと作者さんに印税が入らないだろうから悪い気がするが、
100円で買えるのは安くて得をした気分になる。

四畳半に帰って、サイモン&ガーファンクルと、
タイマーズを聞きながら買って来た漫画を読む。

良い作品だ。
是非普段のレパートリーに加えさせていただきたい作品だ。

四畳半で稽古をする。
飯を食う。
丼に白米をよそい
萌やしをさっと煮て
白米の上にたっぷり盛ってやってポン酢を掛けて食う。

原価はバカみたいに安い即席料理だが実にうまい。

TVの国会中継を見ながら稽古をする。
喉の炎症を抑えるステロイドを飲む。
声の出はだいぶ良い。
おじゃる丸を見る。
忍たま乱太郎を見る。
体を洗って歯を磨いて下北沢で漫画を読ませてもらう。

こういった日が一番幸せだ。

忙しくて長く詳細な日記を書けない時でさえ、東方力丸は決して彼の漫読を聞くために立ち止まってくれた人びとに感謝することを忘れない。

どようび、にちようびにマンガよみをみていただいた
“おきゃくさま”“まちのみなさま”
 ありがとうございます。
 たいへんこうひょうでした。
 ありがとうございます。