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マレーシア: デング熱とチクングンヤ熱との戦い

カテゴリー: 東アジア, マレーシア, 健康, 災害, 環境, 科学, 行政

マレーシア政府はデング熱の患者数の増加に対応して、啓発活動 [1]に着手した。先月、デング熱の感染例が 521件、デング熱に関連した死が13件報告されている。デング熱の感染例の多さはただごとではない。昨年、マレーシアでは 49335 件のデング熱の感染例とデング熱による死が 112 件報告されているが、これはこの国の歴史においてもっとも深刻なものである。

デング熱に加えて、マレーシアの複数の州で広がっているウイルスがもう一種類存在する。そのウイルスとは、チクングンヤ [2]と呼ばれるものである。Doctor2008's Blog は、このほとんど知られていないウイルスについてこう書いている [3]

「(チクングンヤ熱は)ウイルスにより引き起こされ蚊によって広がる一連の病気の中でもっとも新しい。私たちのほとんどが世界で起こっている出来事に気をとられている間に、この病気は熱帯地域だけでなくイタリアのような遠方の国にまで着実に影響を及ぼしている。マレーシアに限っても、2008年中に 3700 人もの患者が発生した。いままでは感染数は一年あたり100件程度だったが、今では一週間あたり 100 件に増加した。おかしなことに、主流派のメディアはこの問題について押し黙っている。また、この症状はあまり知られていないので一般人に広める必要があるが、健康問題の専門家もそのための努力を十分に行っていない。

チクングンヤ熱は蚊により媒介される病気の長い歴史の中でもっとも新しいものでしかない。マラリアやデング熱、黄熱病、日本脳炎、西ナイル脳炎もこの歴史に含まれ、全体では世界中で一億もの死をもたらしている。」

Elizabeth Wongはデング熱が流行しているマレーシアの地域を列挙している [4]Daddy-O's はさまざまな情報源からデング熱とチクングンヤ熱に関する情報を収集し蓄積している [5]

Lim Kit Siang は厚生省の「昨年のデング熱の蔓延に対する長期の沈黙 [6]」を非難している。Environeはこの流行の原因は公衆衛生の軽視 [7]にあるとする。

「公衆衛生に対するマレーシアの人々の意識が足りないため状況は悪化した。ごみは下水管や河川を汚染するだけではなく、詰まらせることもある。水の流れが妨げられるとネッタイシマカの恰好な繁殖地となる。」

「環境を清潔に保つことに人々が無関心であり続ける限り、デング熱の症例が増加し続け、マレーシア政府の悩みの種となるはずだ。」

Palmdocは、現在のデング熱撲滅運動は「模擬戦争 [8]」であるという見方に同意する。

「デング熱はわれわれの国に風土病として何年も前から存在する。今ではわれわれはチクングンヤ熱にも苦しめられているが、これもネッタイシマカにより伝わったものである。前にも似たようなことで騒いでいるのを見聞きしたので、厚生省が「デング熱との戦い」を宣言したと聞いてもまったく意外ではない。フォギング(訳注:蚊を駆除するための殺虫剤の噴霧)は蚊の成虫しか殺さないので抜本的な解決ではない。実際に専門家はネッタイシマカの繁殖場所が多すぎることが問題であると指摘している。」

「全員が真剣にならない限り、LKS(訳注:Lim Kit Siang [9] ) は正しく、今回の試みはリップサービスであり確かに擬似戦争だと思わざるをえない。」

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As normal as I can be [10].によるマレーシアの村でのフォギングの様子

M. Bakri Musaは、土木エンジニアが反デング熱キャンペーンに貢献するべきであると考えている [11]

「われわれは地方の病院の医師と厚生省に対してではなく、地方自治体の土木エンジニアと労働省に対して働きかけなければならない。このエンジニアたちがエアコンのきいたオフィスから離れれば、よどんだ下水道や泥でうまった池、雑草が伸び放題の水路に気がつくはずだ。彼らが悪臭に立ち向かい綿密に調査すれば、蚊の幼虫が汚水の中ではびこっているのを目にするだろう。」

Ji Keon's Blogは、市民にデング熱の蔓延の予防を助ける責任があることを念頭においてほしいと呼びかけている [12]

「住民が当局に住居の中でフォギングを行うことを許可していないと報道されている。しかし、私の住んでいる地域では今のところフォギングは行われていない。対して、昨年は関連当局はフォギングを行い、たっぷり血を吸った蚊を撲滅するために人々を派遣していた。」

「デング熱とチクングンヤ熱の症例が長期に渡り増加し続けるというのは看過できない。この問題のさらなる悪化を食い止めるには迅速に対応しなければならない。」

「予防は治療に勝る。マレーシアの市民はこの爆発を抑制する責任を思い出すべきだ。この国が経済不調から回復するためには全員の努力が必要である。この重要な時期に、生産性と競争力を削ぐのを許すべきではない。

ネッタイシマカを殲滅せよ!」

トップページの 写真は、Pedro Trindade [13] の Flickrページから