オドレイ・ランベール(Audrey Lambert)はフランス南西部の中心都市トゥールーズにある公立高校リセ・オゼンヌ(Lycee Ozenne)の受験準備学級で英語を教えている。 2008年からフランス語版グローバル・ボイスの忠実な翻訳ボランティアとして活動する一方、いち早く授業の中にグローバル・ボイスを取り入れ、今ではそれが2年間に及ぶ受験準備のための英語教育課程の一部となっているのだ。
まずは定番の質問:どうやってグローバル・ボイスを発見しましたか?
たまたま、フランス語版グローバル・ボイスを見つけたんです。 そして、その活動にあらゆる人が貢献できることを発見してうれしくなりました。翻訳という作業はとても良い刺激となる英語の学習方法なんです。時々、非常に難しい文章に出くわすこともあります。でも、やっとの事で良い答えを見つけた時には大きな満足を感じることができます。さらに、私はとてもあたたかいコミュニティに歓迎されたんです。(原注:どうして我々がこれを編集できるだろうか?オドレイは我々に好意を抱いてくれているのだから!)そして、2008年に私はさらなる一歩を踏み出しました。自分の生徒達に、翻訳の練習の一部としてブログの記事をフランス語へと訳すという課題を与えたのです。
なぜ生徒達は翻訳の勉強をしなくてはいけないのですか?
私の生徒達は高等課程を修了しており、 “グランゼコール(Les grandes ecoles)“(フランス独自の高等教育機関)に入るために、競争率が高く難しい試験のために勉強しています。 高度な英語力とニュースを理解できるだけの教養が求められ、生徒達はその両方によって評価されるのです。たとえば、私たちは授業中にラジオの英語ニュースを聴きます。生徒達のレベルでは、原文の語彙に関する問題がありません。生徒達の課題である他の主流メディアの記事を訳すのと比べて、グローバル・ボイスを訳す時に難しいのは、ブログ独特の比較的自由なスタイルや書き手の調子、個性、冗談や俗語をうまくフランス語に置き換えなくてはならない事なんです。
どのような作業手順を定めたのですか?生徒達はそれを楽しんでいますか?
堅苦しくて、試験に的をしぼった正規の英語教育課程に確かな変化が起きます。まず、私は様々な方法を試してみました。生徒1人につき1つの記事、もしくは1つの記事をたくさんの生徒に翻訳させるといった方法です。そして今年は、それをペアでやったのです。生徒達は自分で翻訳したい記事を選び、学校が休みの日もしくは長い週末の後を締め切りとして提出することにしました。翻訳文はEメールで提出すること。生徒達の成果を発表するために、私たちはフランス語版グローバル・ボイスの特別なアカウントをとりました。 ( 昨年のアカウントおよび 今年のアカウント を参照)ある意味で生徒達は独自の物を創り出したのですから、生徒達の名前がクレジットとして表示されます。ウェブ上で自分たちの成果が見える、そして自分たちの名前が掲載されていることは生徒達にとって本当の動機付けとなっています。彼らのうちの幾人かはそれを自分の目で見ることが待ちきれないようです。
この新しい学習方法を他の教師にも勧めたい、と思われますか?
正直に言って、準備に相当な負担がかかります!時にはうんざりすることもあります。何より、Eメールで翻訳文の原稿が15本も送られてくるんですから。それをひとつひとつ読んで、コメントをつけ、添削しなくてはならないんです。しかしこれは本当に得る物の多い学習方法です。私は他の教師にもこれを勧めたいと思います。生徒達一人ひとりとの関係が強化されます。私は生徒達の選んだ記事から、彼ら自身のことをより良く知ることができるようになりました。翻訳には点数をつけないようにしていますので、これも生徒と教師間のもっとリラックスした関係を築くことに役立っています。
フランスの学校教育をとりまく環境において、市民メディアはどのように受け止められているのでしょうか?
受験準備学級の教師達は扱う教材をかなり自由に選ぶことができます。私はこの新しい学習方法を始める際に学校の監察官へその内容を伝えたのですが、彼らには好評でした。私自身に関していえば、 グローバル・ボイスの翻訳に携わることにより文化だけではなく言語についてもたくさん学ぶことができました。また、伝統的なメディアが決して(あるいは滅多に)扱うことのないニュースを知りました。市民メディアは民主主義の注目すべき進歩である、と思います。ブログは広範囲にわたる様々なテーマについての個人的な考え方や意見を、新しい視点から伝えています。
あなたの天職は、言語と教育のどちらだとお考えですか?
私はいつも教えたい、と思っています。子供の頃には、人形やテディベアを相手に教えていました。8年間南アフリカに住んだ経験を持つ母が英語の歌を教えてくれた時、私は英語が好きになりました。後に、スペイン語か英語のどちらかを選ばなくてはならなくなりました。両方とも好きだったのですが。それから、大学では英文学を専攻しました。卒論のテーマはエリザベス朝文学におけるアマゾンの伝説についてだったんですよ!私は今でも英語で書かれた現代文学を読むのが好きですし、いつか好きな小説をフランス語に訳したいと思っています。しかしそれには時間が足りないですし、当面は動物愛護運動に情熱を注いでいるんです。霊長類と一緒に生活する機会を持つことが私の夢なんですよ。