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日本:雇用システムの崩壊

カテゴリー: 東アジア, 日本, 労働, 経済・ビジネス

日本内閣のシンクタンク、内閣府経済社会総合研究所 [1]は、終身雇用制と年齢に基づく賃金制(日本型雇用制 [2])の現在の形態を数量化した。これは、1989年から2008年の厚生労働省の賃金構造基本統計調査 [3]のデータに基づいたものである。この経験上の結果と解説は、政府による伝統的な雇用形態に対する稀に見る非難をさし示している。

その研究はこちらで公表されている。 [4]

数量化された結果のひとつが、『賃金カーブ』である。これは基本的に、労働者の年齢ごとの賃金を標準化した中央値である。内閣府経済社会総合研究所は、この賃金カーブが年を追うごとに徐々に平らになっていったことを示した。これは、若者たちが将来の安定した生活のために犠牲になり、現在の業務の価値に見合った賃金をもらっていない事を示している。下にあるのがそのグラフである(クリックで拡大)。

medianmonthlywageJapAge [5]

そして、二つ目の結果は、ある会社の終身雇用労働者の割合である。このデータから、若い終身雇用労働者の中で、著しい衰えの傾向があることがわかる。若い労働者と年配の労働者にとって転職はリスクが高すぎるため、同じ職に留まる傾向が低いことを示す。特に、2004年には大企業に大きな沈みがあることがうかがえる。政府が製造業において契約社員を採用する事を可能にした [6]のがこの年であるからだ。それは、現状を持続するのは不可能かもしれないという事を示している。
そのグラフは下のようになっている(クリックで拡大)

shareLifetimeEmployees [7]

ブロガー兼作家でもある、ビジネスコンサルタントのジョー・シゲユキは、日本の雇用形態が崩壊した事をついに政府が認めたのは、意味深いことであると考える。 [8]しかし彼はまた、雇用形態を修復するための試みに見られる、政府の無関心さと寄せ集めの解決策(例えばcap on temp労働者)にうんざりするのである。彼は、内閣府経済社会総合研究所のデータから、誤った見解が生まれうることを次のように危惧している。

『賃金カーブの低下を指して「中高年も賃下げされている」と屁理屈を述べる労働組合関係者がたまにいるが、中高年は賃下げされたのではなく逃げ切ったというのが正しい。90年頃、「若い間は辛抱辛抱」と言い聞かせて頑張った元若者は、20年近く経って、かつての上司・先輩より3割以上も給料が安い結果に終わったということだ。
 
バブル崩壊後に、年功ではなく働きに応じて支給する仕組みにシフトしておけば、彼の生涯賃金はもう少し多かったろうが、そういう努力を怠ったということで自己責任というしかない。

さて、このように身をもって日本型雇用の破綻ぶりを演じてくれいる世代がいるのだから、20代は同じ轍を踏まないように気をつけないといけない。というわけで、働きを基準としている組織に自分で移るか、それが出来るように準備しておくことをおススメする。』

ブロガー兼経済学者の池田信夫は、日本人は普通、リスクを防止するのではなく避けようとする傾向がある理由を仮説立てる [9]。それは、日本型雇用は、安定に重きを置く有限会社の産物に過ぎないというものだ。

『[…]私の仮説は17世紀以降の株式会社のような有限責任の制度が日本になkったことが一つの原因ではないか、というものです。近代資本主義の成功をもたらした最大の要因が株式会社制度だったのではないか[…]

西欧県でも株式は同期の手段として批判され、また現実にバブルや恐慌の原因となってきました。しかし資本主義を批判したマルクスは、株式会社制度を「生産の社会化」を進める制度として高く評価しました。これによってリスクが社会全体に分散されたことが、西欧県の昼以内成長をもたらしたのです。

ところが日本では、株式を「銘柄」と呼ぶことでもわかるように、商品相場のような投機の対象として扱われ、戦前にはその9割が先物で、リスクは非常に高かった。株式が企業のリスクを分散する有限責任制度として活用されず、経営者は会社に無限責任を負い、会社がつぶれたらしばしば自殺します、他方、家計にとっては超ハイリスクの株式とリスクゼロの預金しかないため、ほとんどの人は危ない株には手を出さず、リスクを分散するという考え方も知らない。』

ブロガー兼マサチューセッツ工科大学経済学修士生(MIT MBA STUDENT)のLilacは、数十年前の、特定の企業(Kodak、 MotorolaやRCA)の競争率の低迷という似たような問題に直面していたアメリカを思い出させる [10]。彼女は、大企業は組織を改編すべきか、それとも一旦崩してまた一から始める方がいいのか思いを巡らせる。

『決して経営陣が技術を知らないバカなわけでも、技術者がツカえないわけでもないのだ。経営の舵取りを間違えただけで、これだけの技術と、研究者の努力が無駄になってしまう。大企業の組織を改編し、新しい技術に対応するよう全体を変えていくのは、かくも難しいことなのだ。

「技術がすぐれてるから勝てる」わけではない、ということは、こうしてアメリカの企業たちは、日本企業やヨーロッパの企業に追いやられながら学んできているのだ。
 
日本企業が、これらのアメリカ企業のように崩壊の一途をたどるか。IBMやGEがそうであったように再生するかは、今の経営の舵取りにかかっている。』

ブロガー兼IT会社勤務のelm200は、日本の現状維持のために所有する金利を崩壊することのない解決策を(冗談まじりに)提案する [11]。日本の労働条件とは対照を成す独立した都市を作るということだ。

『結局のところ、この国は現状維持を望む人が多いのだ。現状維持を望んでいる人々が多数派であるなら、どうして制度をいじる必要があるだろうか。一部の若者が騒いだところで、それより数が多い中高年や老人は現状に満足しているのだから、ガラパゴスだろうが鎖国だろうが、好きにさせてあげるのが一番だ。

好きにさせてあげるのだから、こちらにも一つくらいわがままを許してくれてもいいだろう。既得権益には何一つ接触しないので、疑り深い老人たちも何もいわないだろうし。

日本にシンガポールを作るのだ。』

日本は身動きの取れない状態にある。雇用過程を改変するため、多くの人が高い職業の流動性を提案し、それが起業論を育てるのである。最近、日本の起業家の割合について記事を書いた [12]が、他国と比べ大変が低いことを発見した。

[13]

最近メディアで取り上げられている、雇用危機についての大変興味深いシリーズを2つここに紹介する。
1. 日経ビジネス『「内定取消」-だから私は騙された [14]』 
2. J-cast『29歳の働く君へ〜いまからでも遅くない! [15]