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セルビア: デジタル・スクール・プロジェクト

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, セルビア, テクノロジー, デジタル・アクティビズム, 政治, 教育, 経済・ビジネス, 若者

情報通信技術の成果を教育に取り入れようという取り組みは、セルビアでも今に始まったことではない。2000年代初頭からそういう活動がいくつか行われてきたが、ほとんどが国際機関や財団に支えられてきたものであった。教育向上のための補助金であったり、オープンソースソフトウェアを学校で利用するといったプロジェクトは、セルビアの都市部でも農村部でも同様にみられた。
最近になり、通信・情報社会省は小学校向けの「デジタル・スクール [1]」(セルビア語)プロジェクトを立ち上げた。これは「デジタル・セルビア」という大きなプロジェクトの一環で、情報社会がもつ機能を育成・向上させるのが目的である。当初の「声明と参加への呼びかけ [2]」(セルビア語)の中で、同省は来年度末までに、小学校のデジタル実験室と教室の整備をするための資金6億5000万セルビア・ディナール(約62万(※2010年10月27日修正)620万ユーロ)を割り当てると表明した。

このプログラムで、セルビア全土で1100の小学校にコンピュータを導入することが可能になり、デジタル実験室は一部屋あたり30人の児童が入るだけの広さを持つものとなる。声明によれば、児童のためのコンピュータだけではなく、教師のための適切な設備、ソフトウェア、情報以外の授業が行われる教室間の接続についても含まれるとのことである。
同省は、インフラの整っていない下位40の市町村に対して、電気からインターネット接続に至るまで適切な学習環境構築を手伝うという。教師はデジタル実験室の技術面で責任をもつことになるが、プログラムの実施に先立ちコンピュータの操作についてトレーニングを受ける必要がある。ベオグラード [3]地方を例に取ると、セルビア南部に比べ7倍も開発が進んでいるものの、このプロジェクトでは開発の進んでいるところとそうでないところ、都市部と農村部とが同様にメリットを享受することが期待されている。
日刊紙のBlicOnlineでは、下記のような記事 [4](セルビア語)があった。

[…] このプログラムの実施によって、セルビア中の参加校すべての児童に、EU諸国でインタラクティブ教育を楽しむ児童たちと同じ条件が与えられ
る。[…]

セルビアの市民たちの多くは苦しい生活環境に不満を募らせており、こういった教育改革プランにはとりたてて興味を示していないようだ。このプログラムが最終的にはどれだけの小学校に適用されるのか現状ではまだわからない。コンピュータの授業は高校の方が役に立つと考える人もいる。ある生徒は上記の記事に対してこんな辛辣なコメント [5](セルビア語)を残している。

以前からマルチメディア教室はあったけれど役に立っていなかった。今度はデジタルのプロジェクトを実施するというわけだが(…)結局また使われずに空室となるだけだ。(…)教科書はますます薄くなるばかり。(…)私は情報の授業を、20年前にコンピュータを勉強したという先生に教えられた。コンピュータについて分かっている人なら、ふつうは(こんな先生よりも)詳しく知っている。いま使っている古いコンピュータは紀元前のものだ。学校に新しいコンピュータもあるけれど、生徒は触らせてもらえない。ただ見せびらかすために置いてあるだけ。プロジェクトのメンバーをいくつかの学校に行かせて、誰が、どうやって、どこで情報の授業を教えているのか見せればいい。

セルビアでは730万人の人口のうち、55.9%がインターネットを使っている。この数字はバルカン諸国では最高だ。ユーザの39.5%はDSL接続、29.3%がまだアナログモデムを使っている。23.4%はケーブルテレビ回線である(数字はセルビア共和国統計局による最新のデータ [6](英語))。しかしUNDP(国連開発計画)の人間開発報告書2009 [7](.pdfファイル、英語)によれば、セルビアの大人の識字率は他のバルカン諸国に後れを取っている。
「デジタル・スクール」プロジェクトが成功するためには、以下に挙げる課題が解決される必要があるだろう。

しかし今回のプロジェクトや、セルビアその他の国で進行中の同様のプロジェクトは、情報社会の発展と深く関連していくというだけではなく、ハードウェアの有効利用のため当局と教育機関が協力して教育プログラムを開発していくことも非常に重要である。