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タイ、カンボジア:国境争いが激化

カテゴリー: 東アジア, カンボジア, タイ, 国際関係, 市民メディア, 戦争・紛争, 政治, 歴史

タイとカンボジアの国境争いが、ここ数週間のうちに 激化している [1]。両国間では銃撃 [2]が交わされ、前線にいる兵士たち数名が死亡、国境近くの村落は避難を強いられている。この東南アジアの2国は世界文化遺産であるプレアヴィヒア寺院 [3]の所有権を主張している。

[4]

タイの地図 ブログ「タイ、地方での暮らし」より

thaicam [5] は「現状の愚かさ」をつぶやいている。

RT @thaitvnews:二つの仏教国が荒廃したヒンズー教寺院をめぐって争っている。←状況の愚かさが際立つな。

Michael [6] は国境争いの焦点は寺院ではないと強調している。

もちろん、本当はプレアヴィヒア寺院が問題なわけじゃない。この件以前に気にかけるべき寺院はたくさんあるからね。

皆の考えをまとめるには格好の題材なんだろう。もちろん、装備の整った強靭な軍隊への支持を集めるのにもぴったりだ。戦争の脅威にさらされた時、国を守る側には得られるだけのサポートが必要なんだから。

Tharum Bun [7] はカンボジアのブログやツイッターの反応をまとめている。以下はAlbeiro Rodas [8] に載せられた記事のひとつである。

クメールはタイというよりインドシナ半島において最も長く歴史を刻んできた。とにかく政治面にしても、カンボジアはギリシャのようなもので、タイはイタリアのようなものだ。カンボジアのほうが先だということに反論の余地はない。タイはカンボジアの領域内に建てられて、歴史でも文化でもカンボジアを踏襲している。タイが偽物だとか侵略者だとかいうわけではないけれど、タイの人たちはそのことに気付くべきだ。恥ではなく、兄弟のような愛情を持って。

カンボジアは苦しみから生まれ、強い魂を手にした。タイの指導者は理性に目覚め、いかなる武力侵略も中止し、これまでのようにクメールの兄弟たちとともに腰を下ろすべきだ。平和を作り上げ、お互いの国が共に発展していくためにも。

Life in Rural Thailand [4] は、この争いがすぐに終息することを願っている。

偉大な場所ゆえに、とても残念だ。私は寺院巡りの観光客ではないけれど、この寺院はカンボジアの平原が一望できる高さ525メートルの断崖に建っているから、なにかしらすごい場所なんだと思う。

寺院は私の村から45キロ行った先にあり、この騒乱が心配の種になることはなかった。しかし今回は寺院から遠く離れたところに炸裂弾が落とされ始めたので、とても心配している。

Khon Kaen は、国境争いが観光産業に及ぼす影響を少しも気にかける様子のないタイの観光局 [9]を批判している。

この国境争いは、地元新聞の32ページに埋もれているような小さな話ではなかった。この話は昨日のフォックスニュースの第1面に載ったのだ。こんなニュースは誰も見もしないしネガティブに反応することもないだろうとTAT(タイ観光局)が思っているのなら、一度頭を診てもらう必要がある。

指導者たちの多くは、ASEAN(東南アジア諸国連合)がこの問題を調停し解決するために何らかの手段を取るべきだと考えている。このことは、Sacravaが自身のホームページに掲載したマンガ [10] に描かれている。

[10]

ASEANの原則:「内政に干渉しないこと」

タイのツイッターユーザーたちはハッシュタグ#thaiborder [11]#thaikhmer [12]を使い、国境付近の状況を注視している。戦争反対派の人たちにより、フェイスブックのページ [13]”Thai & Khmer People who Want Peace(平和を望むタイとクメールの人々)” も作られた。以下はTopza Aung [14] からのメッセージである。

強欲と金と権力で堕落し、また戦争を始めようとしているカンボジアとタイの政府、恥を知れ。

我々両国民はなんの考えも持ってはいない。私たちはとても純粋だが、無自覚なことはお互いへの憎しみを生む道具にもなる。というのも、政府はそんな私たちをだまし、嘘とでっちあげたニュースやメディアを使って私たちをいいように操るからだ。

皆、覚えておくんだ。これはカンボジアの政治とタイの政治との争いで、両国民の争いではないのだということを。

[13]

The Son of the Khmer Empireは、政治的イメージを良くするためにこの問題を利用しているとして、タイのアピシット・ウェチャチワ首相 [15]を非難した。

カンボジアとタイとの国境争いとタイの主権を守ることとは何の関係もない。この件には自己・自国中心的のエリート、特に民主党とその連合への政治的利益がからんでいる。アピシット首相の以下のような望みが、戦争の動機となっているのだ:

- カンボジアと戦うことによって首相自身を強い人物だと見せ、国民の人気を集める。

- タイ国民をまとめ、自身の脆弱な政府を支え続けるようにしむけ、次の4月の選挙に勝てるようにする。既に彼はカンボジアとの国境をめぐる戦争にむけて団結するよう、国民に訴えかけている。

同ブロガーはリーダーシップ強化のためにこの国境争いを利用しているカンボジアのフン・セン首相 [16]も批判している。

-首相の人気は高まるだろう。

- 人々は首相の頼りないリーダーシップのせいで経済的な苦境を味わったことを忘れてしまうだろう。

- 首相は武器の購入と私設軍増強のための資金を要求するいい口実を得るだろう。

- 首相はより多くの票を集め、これから先何年も権力の座にしがみついていけることを願っているのだ。