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中国: セックスと検閲と『人民ポルノ』の台頭

これまでの中国のネット文化を取り巻く議論は、オンライン人権運動の盛り上がりを中心として繰り広げられて来た。しかしながらここ数年、個人の性行動を公然と表現するネットエロティシズム文化も目立つようになってきている。

香港中文大学Katrien Jacobs准教授は「人民ポルノ」に関する研究として、中国のネットにおける「自作の(Do It Yourself = DIY)」アマチュアポルノ文化、そして中国のネット検閲の枠組み内におけるポルノ作成者と消費者の相互作用について調査を行ってきた。

 

以下は、Jacobs准教授の近刊「People's Pornography: Sex and Surveillance on the Chinese Internet (人民ポルノ:中国のインターネット上でのセックスと監視)」についてRonald Yick Oiwan Lamが行ったインタビューの内容である。

Jacobs准教授の新刊「人民ポルノ:中国のインターネット上でのセックスと監視」'

Jacobs准教授の新刊、「人民ポルノ:中国のインターネット上でのセックスと監視」

Global Voices (GV): 著書で使用している「人民ポルノ」という言葉はどういう意味なんでしょうか?

Katrien Jacobs (KJ): まず、「人民ポルノ」という用語はDIYポルノ(アマチュアによるポルノ)だという意味です。でもそれだけでなく、中国製のポルノだということも言っているんです。ちょっと皮肉っぽく聞こえるでしょうけど。公式には中国にポルノは存在しないことになっているんですから。ポルノは正式に禁止されているんです。中国にはアマチュアポルノサイトを含む無数のポルノサイトが存在していることを誰もが知っているにも関わらずね。

 

GV: 先生は欧米社会のDIYポルノ研究の専門家だということですが、中国でのポルノ文化は欧米と比較するとどうでしょうか?

 

KJ: 欧米の先進国では、オルタナティブカルチャーが色濃いんです。アンダーグラウンドコミュニティーのアーティストやメンバーがウェブサイトを作って、彼ら独自のポルノをそれぞれの方法で発信しているんです。オーガズムを表情のみから描写しているBeautiful agonyのようなサイトは、性器にばかり固執してきた商業的ポルノに対する一種の批判でしょう。このような社会で私は研究をしてきたんです。実際に私は、そういったサイトに興味を持っている人やサイトを作っている人に会ってきました。もちろんこのような文化はすぐに商業化されました。つまり、DIYポルノムーブメントには人々のためのムーブメントというよりは、人々によって起こされたムーブメントという別の流れもあるんです。だから、本当に人々による人々のためのポルノではなくて、ただどこにでもいるような女の子に見える素人ルックを売りにしているだけのDIYポルノという流れもあるんです。だから欧米には本当の素人と商業勢の2つの対立する勢力があるんです。

その一方で、中国と香港では、自分自身のビデオや写真をネット上にアップロードしている人が実際に居るんです。たまにポルノ用のYouTubeであるPornotubeのようなポルノ専用サイトでも、こういったビデオを見かけます。こういうポルノサイトは世界中の全ての人に開かれているんです。もちろん、中国大陸の住民はこういったサイトにはアクセスできなくて、DIYポルノの流れに参加するような人はまだまだ少ないのですが。でも、若者たちは誰もいない教室、病室、エレベーター、ただの廊下といった隠れた場所でポルノを作り始めているんです。こういったポルノは確実に今中国で作られていて、アップロードされているんです。私自身が、多数のウェブサイトに集められたそういうポルノビデオを数えきれない程見つけてきているんですから。もちろんこのムーブメントはとても散発的で、未熟な段階だと言う人も多いんです。でも、これは変化の兆しだと私は見ています。

GV: 著書で「エロティクリベレーション」という用語を使われていますが、これはどういった意味でしょうか?

KJ: まず、ポルノにアクセス出来ているという事実がリベレーション(解放)の証であるといえます。第二に、ポルノを通して、人は自分の文化や性的アイデンティティーを表現できるんです。だから、中国では全面的に禁止されているにも関わらず、若者たちがセックスして、それを録画して、アップロードしているということは、とても力強いことなんです。でもこれは、実際に起こっているんです。とはいうものの、政治的解放という意味では、そんなに真剣に考えるべきではないでしょう。結局のところ彼らはただ遊んでいるだけなんですから。でも彼らは、好き勝手に性行為をしていること、そしてそれをアップロードしていること、という2つのことで法律を犯しているんです。規則を二重に破る事がとても刺激的なんでしょう。

GV: 彼らはポルノを広める事が反体制的だということに気がついているんでしょうか?

KJ: 必ずしもそういったビデオをアップロードしているようなネチズンではありませんでしたが、中国大陸でネチズンにインタビューをしました。また、大学でもインタビューしました。そこから分かったのですが、彼らは中国のポルノ戦争にちゃんと気がついているんですよ。これはとても興味深い事です。中国政府がポルノを禁止し、規制していること、そしてポルノを使ってインターネットを制御していることをきちんと分かっているんです。でも彼らは、そういった巨大なファイアーウォールを乗り越えて、求めている物を見つけ出して、隠れたサイト内でお互いに共有することが出来るんです。

でも、中国でまだ地位が完全には確立されていないセクシャルマイノリティーは余計に弱い立ち場にあるんです。彼らがポルノムーブメントを巻き起こすことは恐らく不可能でしょう。

GV: 近年、アマチュアポルノがオンライン上にどんどんアップロードされるようになりましたね。中国のネチズンはビデオの出演者が誰であるかを探り当てるのが好きですよね。特に政府関係者が不正に出演しているときには余計にそうですよね。これに関しては、どうお考えですか? 中国におけるジェンダーと権力構造に関係があると思いますか?

KJ: はい、もちろんそう思います。もし政府職員の不正を発見出来たならば、実際に権力構造に対して挑戦し、力を誇示することができていたのかもしれません。これは難しい問題ではあるのですが。セックスへの興味という点から、こういった人たちは、他人の隠された性生活まで暴こう、という方向へ行きがちなので。個人の性生活を非難したりすることは誰にも出来ないと思うんです。それがたとえ、巨大な権力を握った政党の重役の性生活であったとしても。私は他人の性生活を暴こうとするような人たちより、自分の生活にセックスが足りないと不満をたれているような人たちの方が個人的には好きです。

私は、Han Hanのインポテンツプロパガンダに関するコメントがおもしろいと思っています。主流社会で推進されているのは、ポルノを所持してはいけないっていうことなんですよね。セックスはしてもいいかもしれないけど、ポルノは所持してはいけないんです。私たちは喜びを、オーガズムを表現してはいけないんです。彼の考えは中国のアセクシュアルな歴史への反論なんです。でも、政府関係者の不法な情事を告発する事が、腐敗したシステムを変えるなんてことは、まずあり得ないでしょう。

GV: 中国における反検閲戦争と性的アクティビズムの関係はどういったものなのでしょう?

KJ: 中国のネチズンはポルノとフィルタリングソフトウェアにおけるポルノ戦争に気がついているようです。実際に2009年のフィルタリングソフトウェアへの対抗を象徴する草泥馬(ツァオニーマー)は中国語の性的表現をもじったものです。草泥馬がネットコミュニティーへ瞬く間に浸透したことは、ネチズンの市民的自由、または表現の自由への戦いにおいての重要な出来事でした。中国では他の国以上に、性的描写のある媒体がネチズンの中心問題となっているんです。

もちろん、政治問題に注力している人はポルノに関する問題を扱ったりはしないんです。性に関する問題でさえも。なので、ある意味この議論は主流の議論から外れていると言えるでしょう。でも、よく見てみると実は全ての議論の中にきちんと位置していることが分かるはずです。女性ブロガーがその中心的存在です。例えば、Muzi MeiLiumangyan(セックスワーカーの権利運動家)は女性やフェミニストブロガーが性行為に関してどう言っているかが分かる、いい例でしょう。彼女たちは、政治的アクティビズムを性的アクティビズムと切り分けたりはしないでしょう。

性の問題を政治的アクティビズムから切り離して考える事は、男性の文化なのだと思います。女性ブロガーはもっと率直で現実的なんですよね。だから、男性と女性は別の視点から見ていると思うんです。ブロガーについての章を書いている時に、この女性と男性の文化の違いに気づいたんですよ。そして、この違いが存在していることをどうしても否定できなかったんです。

GV: 別のインタビューの際に、中国人男性の未成年の少女に対する幻想に驚いたと仰っていましたよね。この種の願望はどこから生まれたのでしょうか?

KJ: これは日本から来ていると思います。若くて、純粋で、従順な女の子というイメージを全面的に掲げている日本製ポルノが、中国には溢れているんです。それだけではなく、そういった女の子は未成年のように見えるんですよ。そういった女の子が最も理想的で、こういう従順な女の子に会ってみたい、とインタビュー時に答えた男性が沢山居たんです。一体どういうことだと思いますか? 私は、男性に征服感を与えることが出来る、ということなんだと思います。従順な女の子なら思うようにできますから。つまり想像の世界では、こういったタイプの女の子とうまくやっていけるんです。でも、現実世界で実際にこのような女の子が居る訳ではないんです。現実では、周りの強力な女性たちと一緒にやっていかないといけないんですから。日本での研究においては、こういった少女への幻想は、母親に甘やかされて育った日本人男性の弱々しさと無力感の裏返しである、という説明が頻繁にされています。中国も少し似た様な状況でしょう。

GV: 中国のインターネットにおいての人種と性関係に関しても、著書でふれていますか?

KJ: はい。実際1つの章では、どんな人と交際したいかという観点から、アダルトサイトで性的幻想についてインタビューした事について書いています。白人男性と中国人女性のカップルはとても人気のあるカップリングでした。外国人女性に興味を持っている中国人男性も増えてはいるのですが。私とデートしてもいいかなと思ってくれた中国人男性にインタビューをしたところ、地元の中国人女性とデートするどころかその気にさせることすら出来ないことへの鬱憤をぶちまけてくれました。香港での異性愛者の交際メカニズムの研究から、男女の間に頑とした距離が存在していることが分かりました。多くの場合、中国人男性と中国人女性は求めている物が違うんです。このことが、従順な女の子への幻想と関係があるのか、というと、恐らく関係があるんだと思います。中国人男性は、従順な女の子を夢見ている一方で、出会い系サイトのような現実社会では中国人女性に手厳しく拒絶されているんです。中国人女性はとても多くを求めていて、条件をはっきりと示しているんですよね。そして中国人男性は、それをある意味とても不快に思っているんです。だから香港と中国は、家父長制だということが分かるんですね。そして、実際に、職場で、そして家庭での男性の力はとても強いんです。でもそれは、1つの見方でしかなくて、女性が強い力を持っているような場面もあるんです。

中国人アーティスト、 Ai Weiwei

中国人アーティスト、Ai Weiwei


 
GV: 最後の質問です。アーティストで活動家でもあるAi Weiwei(艾未未)を中国当局が勾留した際の口実の1つは、ヌード写真でした。どうして、Aiのヌード写真が中国政府への脅威となったんだと思いますか?

KJ: 私は彼が捕まった時のことを知っていますが、沢山あった罪状の1つは、ポルノを広めていたということでした。彼は影響力があるので、当局にとって脅威なのだと思います。彼はとってもユーモアのセンスがあって、草泥馬をつけて裸で飛び回っている写真を撮ったりしているんですから。彼は、セクシュアリティーを含めた言論の自由の象徴的な存在なんです。もしあなたが、自由な人間であるとしたら、アーティスティクで自由な人間で変わった性格の持ち主だとしたらです、たまにはこうやって裸で飛び回ることだって出来るはずなんです。中国では大変危険であるこういったユーモアと自由を彼は象徴しているんです。

翻訳の校正はTakashi Otaが担当しました。

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