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ポーランド:選挙結果は切迫した世代交代を露呈

カテゴリー: ポーランド, 政治, 若者, 行政, 選挙

ワルシャワはブダペストにはならなかった

2011年10月9日のポーランドの国会議員選挙 [1]の結果に対し多くの者が安堵の念を抱いたが,驚かなかったものはいなかった。現職の首相ドナルド・トゥスク [2]は1989年以降初めて2期連続で首相に選出されたが,今回の選挙での真の大穴候補は,自身が主導する政党が今回の選挙で10%の得票率を収めた,反教 権主義者であり小政府主義者のヤヌシュ・パリコト [3]であろう。

中道右派の「市民プラットフォーム [4]」(党)は39%の票 [5]を獲得し,30%の得票率を誇る最大野党の国家保守派の「法と正義」 [6](党)を打破した。「市民プラットフォー ム」のリーダーのヤロスワフ・カチンスキ [7]氏は選挙結果に対し,同じく中道右派保守政治家でハンガリーの首相オルバーン・ヴィクトル [8]と自身を照らし合わせ [9], 「ワルシャワがブダペストのようになる日がくるだろう」とコメントした [10]

Donald Tusk is the first Polish leader to be re-elected in a consecutive term. Photo by Flickr user PlatformaRP (CC BY-ND 2.0) [11]

写真(ドナルド・トゥスク氏はポーランド初の2期連続首相となった。写真はFlickrユーザのPlatformaRPの提供 CC BY-ND 2.0)

1つの選挙、2人の勝者

しかしながら一番予期されていなかったことは,パリ コト運動党 [12]が国会で第三党となったことだろう。この党は哲学部卒業生であり実業家であるヤヌシュ・パリコト氏がわずか4ヶ月前に政党登録をしたばかりだ。市民プラットフォームの党員時,パリコト氏は政治的ピエロや党の工作員などと呼ばれた。彼は若い女性が警察署で性的暴行を受けた際の記者会見で,注目を集めよう とおもちゃの拳銃とバイブレーター [13]を振りかざしてみせるなどの奇行におよび,非難を浴びた。 また,他の時には「マフィアからの贈り物だ」と言いテレビ番組に血の滴る豚の頭を持って行った [14]りもした。

そんな奇行からほんの数ヶ月後,パトリコ氏は政教分離,ゲイやレズビアンたちの同性結婚,人工中絶の合法化,薬物のより寛容な政策等,世間が敏感な問題について躊躇することなく運動をしている。既存政党に自分たちの声が届いていないと感じている国中の若者がこのような政策 [15]を支持している。

ツイッターユーザーのszwalowskiは10月9日に次のようにツイート [16]した。

パリコト氏はマドリードやテルアビブで抗議活動に参加した人々の声を代表している。(ツイッターでのハッシュタグは#wyborczaである。#wyboryではない。)

同日,同じくツイッターユーザーのpawelbieleckはパリコト氏の成功を他に起因しようとしている [17]

パリコト運動がこんなに素晴らしい成果を出したのはPRが素晴らしかったか,ポーランドの政界に有権者がうんざりしているからかのどちらかだろう。

パリコト運動のフェイスブックページ [18]に,Mateusz Drulisは次のように書いている [19]

いつか政治家たちが,ヤヌシュ・パリコトだけでなく,彼を支持するポーランド人150万人をないがしろにしているんだと気づくことができるのなら,そんな素敵な時代をこの目でみたいものだ。

 

A billboard from the press kit on the movement [20]

写真:パリコト運動の宣伝用の広告掲示板

 

パリコトは若者たちの間では,他の政治家と比べてずっと正直ものだと謳われ,彼らはパリコトの勇気ある反教権主義に惹かれている。あるテレビジャーナリストが、JPLL世代,つまり、「ヨハネ・パウロ二世」世代がJP世代,いわゆる「ヤヌシュ・パリコト」世代に直面している,と言ったが、それは的を得ている [21]

また、パリコトの政党は,高校生が中心となって活動した予備選挙でも勝利を収めている [22]。36パーセントに近い未来の有権者がパリコトの政党を支持した。デーブ・シーマンは10月14日にパリコト運動のフェイスブックページに次のようにコメントした [23]

こうなることはわかっていた。人間というものはある年齢になると意見を持つものであって,一度意見を持つと変えたりはしない。若年の時に比べると それほど他の意見に対してもそう耳を傾けなくなる。とういうことは,パリコト運動は現在10%の支持だけれども将来につながる運動だ。まあ最低でも僕はそう 願っている。

ブロガーのNocriは,パリコトの成功が示すものはポーランド社会が必要とする,明確な変革だと考えている [24]

パリコトはポーランド政界の新しいアイコンとなった。前回の選挙は,私達がこの20年間うまく踊らされていたこの政治体系を変革しなくてはならない時期だと示した。パリコトは恥の象徴となったけれども,彼は勇気ある決断をも象徴した。全政党が勢力を上げて勝ち取ろうとしていた若者の票は彼に流れた。彼は若者の間でもシンボルとなっ た。

pawel_meteoは10月9日にツイッター上で,パリコト陣営は大麻の合法化を持ちだしたりするなど,今は亡き大衆主義者のアンドレイ・レッパー [25]のように大衆主義をテーマに掲げたことで成功したと述べている [26]

 

市民権運動者達が国会へ

パリコトの成功を受けて,トランスセクシャルのAnna Grodzka [27] や,同性愛者であると宣言しているRobert Biedron [28],フェミニスト活動家のWanda Nowicka [29]が国会議員となった。投票日前日に,のちに当選を果たし国会議員となるAnna Grodzkaは自身のブログでいかに選挙活動が自分の生活を変えたかと主張した [30]

この選挙活動中やここ2,3年,私はいろいろな人のお世話になった。今まで経験したことのないくらい沢山の友達から支援してもらった。皆が一緒になって近代的で公平なポーランドのために戦った。多種多様だけれども平等なポーランド人達がこの世界でいい国だと感じられる,そんな国にするために。

ポーランドの保守的ジャーナリストでカトリック系活動家のTomasz Terlikowski [31]は,自身のポータルサイトの「我々は戦争に突入した」と題したポスト [32]で,次のように述べている。

ポーランドの有権者は今回の選挙で,教会に対して恥知らずの攻撃をしたことでしか知られていない男が指導者で,自らを女と公言する男や,子供を殺 害することを唱えつづける女や,たった一つの取り柄が男が好きなことでしかない男に支持されている政党を第3政党にしてしまった。

人々がなんと言おうと,これだけは確かである。今回の選挙は,ポーランド社会がここ数年でいかに変わったかということを露呈した。その変化というのは,パリ コト運動党以外の全政党が無視続けたものである。パリコトは絶大なる支持を示した若者大衆のために戦うのか,それとも落胆させるのか,どちらであろうか。

Tomek Alfik Frontczakはパリコト運動のファイスブックページで10月10日に自身の希望を次のような明るいポストで表現した [33]

ジャナスありがとう! とっても最高だよ! 君のおかげでポーランドはやっと近代国家の仲間入りができるよ。運動を支持した仲間を落胆させないでくれよ。私達は今幸せすぎてどう表現していいかわからないくらいだ。体に気を付けて頑張ってくれよ!