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ペルー: 高まる遺伝子組み換え農業についての議論

カテゴリー: ラテンアメリカ, ペルー, ニュース速報, 健康, 先住民, 市民メディア, 環境, 科学, 行政

この記事はGlobal Voice 「Global Development 2011」 [1]の特集の一部です。

maiz transgenico gmo corn food [2]

トウモロコシは世界的に最も良く使われる遺伝子組換え種子の一つ (写真:ピーター・ブランチャード/Flickr, ライセンス CC BY-SA 2.0)

[注:リンク先は全てスペイン語]

4月15日、ペルーは遺伝子組換え(GM)種子の輸入を許可するDecree 003(訳注: GM生物の生産や取引に関連するペルー政府の法令)に公式に調印したが、広範囲なGM生物の使用を支持する側と、国内の生物多様性や国民の健康への害を懸念する側との間で、議論が巻き起こり続けている。

GM種子の抵抗力と特徴が農業廃棄物を削減する [3]という見解にもとづいて、複数の専門家が賛同を表明しているが、他方では、GM農作物由来の食品 [4]は有害ではないかという疑いを投げかけられている。また、自生の種子とGM種子との交配が起こる可能性が高いという警告も発している。
栽培物や地域の自然の富の一部である伝統的な植物や果実種が、交配によって後戻りできない変化 [5]を起こしてしまうことを危惧している。
著名なペルー人シェフ、ガストン・アクリオは、GM作物はペルーの生物多様性に対する脅威になると確信している。アクリオは、Decree 003が認可を受けるための活動を行ったいくつかの圧力団体の金銭的な利益 [6]に注目した。今彼は「ほんの一部の個人ではなく、ペルー人全体の利益 [7]が優先されるべきだ」と訴えている。

その問題はペルーの元農業省大臣、ラファエル・ケベドの辞任に追い込んだ [8]。ジャーナリスト、JackieFowksのブログ「Notas desde Lenovo」 [9]で強調されたように、彼はGM農産物を使用する企業の経営幹部 [9]であることを暴かれたのだ。

ケベドはその訴えを否定してはいるが、彼はペルーのGM作物栽培の筋金入りの支持者 [10]だ。その上、ケベドのアドバイザーの一人、アレクサンダー・グロブマンは、GM種子を扱う会社を所有していた。彼は現大臣のホルヘ・ビリャサンテに解任されている。

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Hanccoファミリーとポーズをとるシェフ、ガストン・アクリオ この農家は5000㎡の土地で200種類の芋類を育てている (写真:フェイスブックより、ガストン・アクリオのファンページ)

一方、環境大臣アントニオ・ブラック・エッグは、ペルーの農業の65%が、国産製品輸出と観光事業という形で生物多様性に依存 [12]しており、年間80億ドル以上にのぼる資産を生み出していることを国に対して指摘している。

ペルーでは、GMトウモロコシと大豆の輸入は、動物の飼料、または、食品に油脂、豆乳として加える用途に限り許可されている 。

ペルー人一人あたり年間63kgのGMトウモロコシ [13]を消費していると計算されている。ペルーの法律が、食品ラベルによる遺伝子組換え農産物の含有表示を未だ定めていない [14]という事実はあらたな問題点である。

いくつかの地域組織は、Decree 003の猶予期間を要求している。農業大臣によると、この問題への認識を一致させる事を目標に、公に議論を大きく発展させ、また、GM種子の育成にかかわるすべての国民に情報を伝えるために、施行までの猶予期間は5年間 [15]あるべきだと提案した。

ペルー農業のための全国会議、GMの専門家、食品の専門家、市民組織は、猶予ではなく即時無効 [16]を要求した。いくつかの地方自治体は(Cajamarca, Huánuco, Cusco, Ayacucho, San Martín, Lambayeque and Lima Metropolitana)、自らの「GMフリー」を標榜する条例 [17]をつくった。芋やその他の地元独自の天然品種を守りたいと望んでいる。

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国産の芋類。ペルーでは約3000種の芋類を育てている (写真: FoodCultura/Flickr, ライセンス CC BY-NC-ND 2.0)

同じ観点から、閣僚評議委員会議長は、バイオセーフティ規制を提案を策定するため、遅くとも2011年6月1日 [19]までに多部門からなる管理委員会を設置することを決定した。30日以内に報告書を提出する事を目指している。

公の場でのこの議論はさらに大きく重要になった。有名なシェフ、ガストン・アクリオは、この問題に関わり、フェイスブックのウォールで深く追求している [20]

No estamos en contra de los transgénicos. Estamos en contra de que las semillas transgénicas puedan contaminar nuestra agricultura y que sean los vendedores de estas semillas los que nos quieran imponer este camino a traves de normas que ellos mismos redactan. La agricultura peruana es y sera una potencia mundial.

私たちはGM製品に抵抗しているのではありません。GM種子が自分たちの農業を汚染する可能性があるということ、種子を販売する人々が、身勝手なルールを押し付けることに抵抗しているのです。ペルーの農業は今もこれからも世界から注目されるのです。

ペルーのネットユーザーは、別の視点からの組織運動により、活発な役割を演じている。Toustodo'sブログ [21]は、ペルーのGM農業 [21]が定着した結果がもたらすリスクを強調している。

Sabemos lo que está detrás de todo esto, como también sabemos las consecuencias ambientales que acarrearía; no solo son los inmensos intereses financieros y económicos que se solapan tras un manto de progreso, más aún sabiendo que de implementarse esta tecnología el Perú sería arrastrado a la inopia más brutal cuando solo cuenta con el 3.81 % de suelos aptos para cultivos en limpio y 37 % de suelo forestal.

私たちはこの問題の裏に何があるのかわかっている。知っての通り、結果として生態への影響が起こるだろう。発展というベールの裏に莫大な資産、財政的な利益が隠されている。特にこの技術の実現はペルーを無知ゆえの危険な状態に引きずり込むだろう。農地に適した土地はわずか3.81%しかなく、森林面積の37%に相当する。

Toustodoは続ける。

Por lo tanto, existen dos alternativas. La primera talar bosques y convertir el área en suelos cultivables, aún a costa de que sabe que son forestales; las consecuencias ecológicas, ambientales y económicas serán desastrosas. Segundo, comprar las tierras de los pobres, generando con esto caos social, desempleo, penurias…

そこで、ここに二つの選択肢があらわれる。まず一つは、森、生態、環境、進化、かつ財政の悲惨な結果を知るというさらなる代償を支払ってでも、森を伐採して農耕地に変えることだ。二つめの選択肢は、貧しい人々から土地を買うことだが、それは、社会の混乱、失業、困窮その他を生む。

フランシスコ・エストラーダ [22]は、GM種子を使うことに同調すれば、小規模農家を脅かすことになると力説している。

…pasemos al punto más maligno del asunto (…) Las semillas transgénicas tienen una patente. Es decir que los campesinos están obligados a pagar por esa semilla cada vez que quieran cultivar.

…この問題の最も悪い面を取り上げよう。GM種子は特許を持っているのだ。これは、農民が栽培したいと望むたびに、特許料支払いを強いられると言い換えることができる
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ケチュア族の文化は約150種のトウモロコシを定着させたと考えられている (写真:whl.travel/Flickr/Flickr, ライセンス CC BY-SA 2.0)

Ana María QuispeのブログKiwichita [24]は、村の伝統の食物や農法に脅威をもたらすことを強調した。GM農産物の広がりは、貧困、不健康、栄養不良、あるいは政府補助に強く依存する要因となる。

アルベルトとキャシーはブログCada Plato Es UnaFiesta [25]で、GM種子の最多生産企業、モンサントを直に告発し、GM種子の育成への関連から予想される、環境、衛生、経済の危険 [26]をリストアップした。

Antonio Velarde [27]はブログで、予想される危険に共通する事実、健康へのリスクがまだ研究されていない事実を強調する。

En lo personal no consumiría estos productos sobre todo por precaución debido a que no estoy informado referente a los posibles efectos en la salud de las personas que consumen estos productos (…) es una vergüenza que viviendo en un territorio rico en recursos naturales y marinos nuestros gobernantes y los peruanos que están ligados a la agricultura, agropecuaria, pesca no sepan administrar estos recursos y lleguemos al extremo de importar productos de laboratorio que no estamos seguros de su peligrosidad.

とりわけ、個人的にはそういう製品を消費するつもりはない。GM農産物を摂取した人々の健康にどう影響する可能性があるのかを、まったく知らされていないという事実を警戒している。自然資源と海洋に恵まれた地域の暮らしに対する侮辱であり、不名誉なことだ。閣僚や、農業、農家、漁師、漁業にかかわるペルー人が、自然資源をどう扱うのかを知らないために、その答えとして実験室で育てられた安全かどうかもわからない製品を輸入している。

ソーシャルネットワークもその問題に関わった。GM農産物 [28]に直に反対する意図で設けられたフェイスブックページ [29]が複数ある。

ツイッターで、María Jiménez (@antitaurinahej [30])はつぶやく。

No a los transgénicos en el Perú o sino que se los coma todos Alan Garcia [el Presidente] http://tinyurl.com/3ejf3t3 [31]

「ペルーのGM農産物に反対。でなければ大統領アラン・ガルシアはGM製品をすべて食べるべき。」all http://tinyurl.com/3ejf3t3 [31]

O.o recórcholis!! En Huaral (INIA) se estarían preparando parcelas para cultivo de transgénicos http://bit.ly/kmyVo1 [32] NO #transgénicos [33] #perú [34]

「おお!なんていいことだ!ワラル [the National Institute of Agricultural Innovations] はGM農産物を育てるために用意されている。 」http://bit.ly/kmyVo1 [32]NO #transgénicos [33] #perú [34]

Francisco Drakerm(@Drakerm [35])は、現在チリで起きている同じ問題を引用している。

PERU DILE NO A LOS TRANSGENICOS La guerra de las semillas transgénicas toma fuerza en Chile http://bbc.in/kdtqoL [36]
「ペルーは遺伝子組換えに反対。GM種子がチリの大地で育っていることに抗戦する。」http://bbc.in/kdtqoL [36]

この討論はペルーのソーシャルネットワークを焚きつけ続けている。6月にはより多くのニュースになっているのは確実だろう。政府の委員会がこの問題に責任を持ったとき、バイオセキュリティー規制の見直し、改訂がはじまる。

この記事はGlobal Voice 「Global Development 2011」 [1]の特集の一部です。

校正 : Ayumi Nakajima