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日本: 日本人がアップルに負け続けている理由

カテゴリー: 東アジア, 日本, テクノロジー, 市民メディア, 意見

ITコンサルタントかつ作家で開発者の永江一石は、おそらく多少の批判は覚悟して、2011年10月11日に2000個 [1]を超えるはてな [2]のブックマークが付いている。はてなを通してこの記事にたどり着いた人の多くは、アップル社前CEOが日本の家電産業の弱点に関してどのような見識を持っているか知りたいと思ったに違いない。iPhoneが遂に日本の携帯電話市場に大々的に参入 [3]し、Samsungが日本の伝説的なガジェット作りの技術から注目を奪いつつある中、このような洞察を人々はおおいに求めている。

しかし、この記事は必ずしもそのタイトルが示すような内容ではない。この話題に関するスティーブ・ジョブズの言葉の代わりに、永江は自身の意見を述べ、スティーブ・ジョブズが異なる文脈で述べた内容で一部を補強している。

iPhone in Japan (by Flickr user nobihaya) [4]

日本のiPhone Flickrユーザーnobihavaによる

永江は時代背景をこう位置付けている

トヨタ、ホンダなどの自動車メーカー以外の日本のメーカー、特に黒モノメーカーが海外メーカーに全く太刀打ちできなくなったと言われて5年くらいもたつが、ウォークマンで世界を凌駕したソニーをはじめ、IT関係、家電系は特にその兆候が痛々しい。ネット上でいろんな討論があるが、要は現在の日本の家電(特に黒モノ)メーカーはマーケティング力がめちゃくちゃ弱い、ということは間違いないように感じる。シャープのガラパゴスの惨敗なんてそのいい例だ。

理由として挙げられる最大のものは、「素人の顧客の意見を聞きすぎる」ということにあるのではないかと考える。いい方を変えるならば、素人のユーザーの意見に左右されるのはいい加減にした方がいいということでもある。まあ日本のメーカーの経営者自体が素人に近いので、こうした資料が無いと開発にゴーが出ないのかもしれない、というのが最大の問題ではあるのだが・・。本田宗一郎やソニーの盛田昭夫さんが懐かしい今日この頃 です。いまの日本のメーカー経営者ってみんなサラリーマンで、出世が上手くて上がってきた人ばっかりだもんね。

昔から大手広告代理店などでは「リサーチ」「顧客調査」「ヒヤリング」などのもとに多額の予算をとって調査をかける。実は自分もけっこう参加したことがあ る。大手代理店にはユーザー集めてミーティングさせて、メーカー担当がこっそりそれを見るマジックミラー張りの部屋まで用意されているし、世の中には女子 高生を集めて商品企画するような会社もあると聞くが、これで本当にヒット作を企画出来るのかと言えば、自分もジョブズも全く必要ないと思っている(神と自 分を同じ扱いですみません)。実際、ユーザー集めてのミーティングの場にいたことも何度かあるが、たいしたアイデアは出たことがない。

その時、永江はよく知られているスティーブ・ジョブズの2つの発言を引用した。 1つ目 [5]は、iPadの市場調査についての質問におけるジョブズの答えた。(アップル社は市場調査を行っていない)

自分が何を欲しているかを知ることは消費者の仕事ではないんだ。

2つ目はBusinessWeek [6]に掲載された1998年の記事の中の言葉で、同様の意見を述べている。ジョブズはこう説明する。

フォーカスグループ(訳注:市場調査のために抽出された消費者グループ)が製品をデザインするのは本当に難しい。多くの場合、人々は提示されるまで、自分のほしいものなんてわからないんだ。

永江は同意している。

まったくその通りだと思う。素人の消費者にリサーチして、彼らが欲しい(と思われる)ものを作っても、彼らは全く別のものを買う。それが今の日本の黒モノ家電だ。
試しに「どんな携帯電話が欲しいか」聞いてみたらいい。

絵文字が打てる、メールが片手で打てる、ワンセグは絶対欲しい、 防水がいい、おサイフ機能は必須、いろんな機能が付いていると楽しい・・・ETC・・・結果が世界に通用しないガラケー戦隊ですよ・・・

そう答えた消費者が、ワンセグもなくお財布もなく入力もしにくいiPhoneに殺到しているのである。これは何故か。つまり、素人の客に聞いて、彼らがど んなものが欲しいのか忠実に作っていく方法は、まったく無意味ということなのだ。素人が考えつかないようなものでないと売れない。

次に、彼は関連した出来事を挙げている。

つまり、本当の商品企画というものは、独善的に「ユーザーに思いつかないような斬新なコンセプト」が閃めくような人しかできないということです。ラーメン 屋でもケーキ屋でもパソコンメーカーでもこれは同じなんです。日産が復活したんだって、絶対売れないといわれて生産中止になっていたフェアレディZをカル ロス・ゴーンが再開発したからじゃないですか。Facebookだってザッカーバーグが独善的に機能を詰め込んでいまのかたちになったから世界を支配し た。極論をいえば顧客の意見なんて聞く必要は無いのだ。顧客にスゲエ、と言わせれば良いだけの話です。

この記事に関する反応はさまざまである。koshianX [7]はこう言う。

これはソフトウェア開発をするとすごくよくわかると思う。お客さんの要望をそのままきくとたいていダメなシステムになってしまう

munioka303 [8]はこう言う。

意味が分からないエントリ。素人顧客の意見が反映されてるの?誰かワンセグ欲しいって言ったか?Appleが勝ってる理由はそんな事じゃないよ。こういう嬉々として「ジョブズ語録」とかやっちゃう人を大量生産できたから

そして raitu [9]はこう言う。

だから日本メーカーっていうか世界中のメーカーがApple一社に負けっ放しなんだっつうの。自虐大好き日本人もそろそろ見飽きてきた。

その昔、ウォークマンの時代はウォークマンのステッカーを貼ってる車もいました。今でもAppleのステッカーを貼ってる車はけっこういますよね。でもい まやソニーや東芝のステッカーを貼ってる車なんて営業車以外いません。「自分はこれのファンである」とユーザーが堂々と公言できる作品を創っているかどう かで考えれば、間違いなくAppleにメタメタにやられていると思いますよ。

校正はIzumi Mihashi が担当しました。