他のロシアの人々同様に、ミュージシャンのジェーニャ・コーロカノフとセルゲイ・ヴァーシェンコは1990年代初期のソ連崩壊後、ロシアから移住した。それ以来、彼らはアメリカ合衆国のテキサス州で地位を築き、「フライング・バラライカ・ブラザーズ」と呼ばれるバンドと「ミュージカル・コネクションズ」という非営利団体の設立を通してテキサスの人々の関心を国際的な芸術に向けさせ、文化の差異を越えるかけ橋をつとめている。
フライング・バラライカ・ブラザーズの公式ウェブサイトでは日々の公演カレンダー、音楽映像、サウンドバイトを読者に提供するとともに、このバンドがどのような経緯でテキサス州オースティンに発足したのかを詳しく述べている。
もともとのフライング・バラライカ・ブラザーズはジェーニャ・コーロカノフ(別名Zロック)によって1995年にロサンゼルスで結成された。ジェーニャはロシアのサーフ/ロカビリーグループであるRed Elvisesの元リードギタリストであった。このバンドはストリートバンドとしてはじまり、後にRed
Elvisesへと形を変えたのである。Red Elvisesはカリフォルニアにおいて、クラブや映画、そしてテレビ番組で長い演奏歴を有してる。ジェーニャはテキサス州オースティンの店で商売をはじめた後、フライング・バラライカ・ブラザーズを改めて結成した。このバンドは伝統的なワールドミュージックとオリジナルの楽曲の融合を表現している。音楽的に恵まれた文化をもつテキサス州オースティンの中に、このグループは彼ら自身の居場所を見つけた。
Now Playing Austinは中央テキサスの芸術の推進に力を注いできた設立35年の非営利団体のサービスだが、そのウェブサイトではフライング・バラライカ・ブラザーズのスタイルを次世代の音楽という言葉で 評価している。
ロシア人、ジプシーのロマ、ウクライナの人々は足を鳴らす独創的な歌で、手拍子や足踏みをする。そこではロック、ブルーグラス、世界各地の伝統的な民謡が見事に融合する。現在フライング・バラライカ・ブラザーズのリーダーであるジェーニャ・ロックはRed Elvisesの結成メンバーの一人で、「Red Lips Red Eyes Red Stockings」を含む数々の大ヒット曲や「シックス・ストリング・サムライのためのフルサウンドトラック」、そしてフルアルバム「Bedroom Boogie」を書いた。ウィリアム・マイケル・スミス氏は最近のヒューストン・プレスの記事で次のように述べている。「オースティンのフライング・バラライカ・ブラザーズにとってのロシア民謡とは、ベラ・フレックにとってのブルーグラスと同じなのである。彼らは既存の枠をこえ、境界線をつくらない、徹底的な革新者たちだ。このバンドはロックからロシア民謡、ブルーグラスに及ぶまでのジャンルを混ぜあわせる優れた感覚と高度な演奏技術を併せもっている。仮にそれが奇妙に聞こえるならば、それもまた非常に面白い。」
2011年5月、フライング・バラライカ・ブラザーズはオースティンに拠点を置くラジオ局FM KUT(90.5MHz)に登場した。The Daily Grackleのウェブページでは彼らのライヴパフォーマンスの映像を投稿している。
Coastal Bend Collegeのウェブページでは、コーロカノフとヴァーシェンコの学歴や経歴背景を、ヴァーシェンコが2003年と2008年におけるグラミー賞にふさわしいかどうかを含めて論じている 。
コーロカノフは1984年にロシアのヴォログダにあるチャイコフスキー音楽大学を卒業。その後、彼は批評的思考や解釈、また美術をデラウェア大学で学ぶために渡米。バラライカに加え、ギターを演奏し、テレビ用の曲やコマーシャル用のイラストを書いている。
セルゲイ・ヴァーシェンコは、1980年にウクライナのポルタヴァにあるルイセンコ音楽学校にて指揮とバラライカの学士号を取得。次いで1985年にはロシアのスベルドロフスクにあるムソルグスキー・ウラル音楽院にてオーケストラ指揮、指導、バラライカの演奏で修士号を取得している。ヴァーシェンコには次のものも含まれる。ロシアのペルミにあるペルミ州立文化研究所の芸術学部学部長。1989年にはラトヴィア室内オーケストラでソリストとしてゲスト出演。またロシア、ラトヴィア、スペイン、ダラス、オースティンで音楽指導者として活躍。ヒューストン・バラライカ協会により指揮者として招致。スペインのセゴビア音楽祭では国際賞を受賞し、2003年と2008年にはグラミー賞世界音楽部門の候補者でもあった。
この投稿では、グループの地域学校におけるアウトリーチ活動に関しても詳しく述べている。
ツアーや演奏に加え、彼らは3つの言語(英語、スペイン語、ロシア語)における教育プログラムをテキサスの公立・私立学校の生徒たちにうまく行いはじめた。というのは歴史上の人々や世界中の人々の深遠な類似点も興味深い相違点も両方を学ぶ独創的な試みをすることで多種多様な芸術を讃えている。
コーロカノフとヴァーシェンコは資金供給や若者の教育機会を生む目的でミュージカル・コネクションズという非営利団体を組織している。バンドが非営利を象徴し、ミュージカル・コネクションズという非営利組織がバンドの芸術目的の経営を支える基金を提供している点で二つは共生関係をもっている。非営利団体の公式ウェブサイトはその使命を明示している。
ミュージカル・コネクションズはテキサス州内の非営利団体。演奏、文化交流、音楽史や伝統を通して、そして世界各地の文化により生み出された多様な音楽を人々に教育することによって世界の音楽への理解をより促進する目的で組織された。
創設者はこの国の多くの人が今日世界で生み出されているすばらしく多様な音楽の良さを認識することができていないと考えている。そしてその主な理由を、人々が音楽の教育を受けてきていないから、あるいは実際の演奏に触れる機会がなかったからとしている。
ロシアのピアニスト、ヴァレリ・グロホフスキー はミュージカル・コネクションのコンサートシリーズの一部として、1月20日にオースティンで演奏を行った。彼はそこでバッハとモーツァルトの作品をジャズアレンジで演奏している。