ロシア:人権活動家、精神病院収容を迫られ国外に逃亡

ブロガーで、ロシア北西部のカレリア共和国の青少年人権グループのリーダーであるマクシム・エフィーモフは、ネット上でロシア正教会を批判する発言をしたため、検察による数ヶ月間の尋問を受けた。検察は尋問の中で、エフィーモフを精神病院に拘禁すると脅し、これを恐れたエフィーモフはロシアからポーランドに逃亡した。エフィーモフの説明は以下のとおりだ[ru]。

Из-за произвола спецслужб, возбудивших незаконное уголовное дело в отношении меня, и желающих всеми правдами и неправдами поквитаться со мной за мою правозащитную деятельность, я был вынужден уехать из мафиозной Карелии за границу.

諜報機関の横暴のために、マフィア統治さながらのカレリア共和国から国外に去ることを余儀なくされた。彼らは違法に私に犯罪の容疑をかけ、私の人権活動に対し「仕返し」を しようとしており、そのためには手段を選ばないのだ。

エフィーモフは、彼を精神病院に収容するという趣旨の裁判所命令が発表されたのと同時期の5月下旬から姿を消し、それ以降1カ月以上逃亡を続けている。2011年12月、活動的なブロガーとしてエフィーモフは青年人権グループのために、「カレリア共和国は教皇にうんざり」[ru]という題の記事を書いた。この記事には次のような内容が含まれていた。

В столице Карелии наблюдается рост антицерковных настроений. Ничего удивительного в этом нет. Мыслящая часть общества понимает, что церковь – это тоже партия власти. РПЦ так же, как и ЕР дурачит народ сказками о том, как хорошо мы живём, при этом гребя под себя деньги. Тотальная коррупция, олигархия и всевластие спецслужб напрямую связаны с возрождением русской православной церкви (РПЦ). За бюджетные деньги, которых нет на самое необходимое, в Карелии строятся храмы, РПЦ получает в пользование помещения детских садов, которых катастрофически не хватает.

[…]

Всё это вызывает рвотный рефлекс у нормальных людей, которые, не будучи способны повлиять на это засилье «попографии», выражают своё отношение к провинциальным чиновникам РПЦ через надписи на стенах зданий, где кучкуется православное отродье. «Payandpray» (Плати и молись), «Christisdead» (Бог умер) – на стенах Православного центра в Петрозаводске.

「カレリア共和国の首都では、反教会感情が高まりつつある。といっても、これは特に驚くことでもない。考えることが出来る人ならだれでも、教会は統一ロシア党と同類であることをよく理解している。ちょうど統一ロシア党がそうするよう、ロシア正教会も、皆が豊かに暮らしているというおとぎ話で人々をだましながら、自らの懐に金を貯めこんできた。汚職、寡頭政治、すべての強力な諜報機関は、ロシア正教会の興隆と直接につながっているのだ。国家予算でロシア正教会の運営を支援する必要性はないにも かかわらず、これを使ってカレリアに教会が建設されている。さらに教会は、現在は保育園(目下危機的に不足している)に使われているいくつかの土地の使用権も付与されようとしている。

[…]

まともな人々でもこのような状況に対しては冗談でしかリアクション出来ない。教会の現状を変えることが出来ず無力に感じる人たちは、教会関係者が集まる建物の壁に、教会の地方官僚について思うことを書きつける。「払って祈れ(Pay-n-pray)」や「キリストは死んだ(Christ is dead)」などの落書きは、ペトロザヴォーツクの正教会集会所の壁に見つけることができる。

ロシア、キジ島、ペトロザヴォーツク、2006年10月13日、撮影クロード・スプリンガー。CC BY-NC-ND 2.0

2011年12月のこの記事の投稿後、エフィーモフは直ちに取り調べを受け、過激主義の罪で起訴された。エフィーモフの裁判は4月に開始され、5月には検察が彼を精神病院に収容するよう申し立てていた。地元当局がこのように主張する理由は不明だが、エフィーモフが過激主義のため取り調べを受け、これにストレスを感じていると4月にブログに何度か書いていたのは事実である。4月12日、彼はパニック発作と思われる症状がおこり救急車を呼んだ[ru]ことをブログに書いている(エフィーモフは、激しい頭痛と「眼に入った砂」に苦しんだとしている)。同日、彼は、警察の取り調べによる精神的圧迫に対処するため、精神科医[ru]に診てもらうつもりだとも報告している。また、4月16日、エフィーモフは彼のオンライン上の日記(Live Journal)で、捜査当局と検察に手紙を書くよう読者に呼びかけている。この投稿のコメント欄では、同サイトユーザーのミハイル・パクヌトフがエフィーモフの状況に驚き、彼に激励の言葉を残している[ru]。

Максим у меня есть совет – для начала станьте пофигистом и успокойтесь….ничего они Вам не сделают…а на все их вопросы посылайте их на хер…извините за грубость…Кто там может психологически воздействовать??? Эти щенки – ублюдки??? Вы же морально сильнее их….вот и чувствуйте себя соответственно. Не верьте не единому слову ….не верьте их страшилкам…все это блеф и бред!

マクシム、いくつか助言したい。まず、落ち着いて深呼吸することだ…彼らは君に何もしやしない…彼らが何を聞いても「地獄に堕ちろ」と言えばいい…口が悪くて申し訳ない…一体どこの誰が精神病院に入れると脅したりするだろうか。このパンク野郎ども?? 彼らなんかより君は道徳的に強い…君自身そういう風に感じるべきだ。彼らが言うことなんてひとつも信じちゃいけない…彼らの圧迫作戦も信じるな…それはすべてはったり、作り話だ!

パクヌトフの確信もむなしく、検察側の申立は5月に認められ、エフィーモフは5月23日に法廷出頭を求められた。翌24日にエフィーモフは消息をたち[ru]、その2日後、彼に対して逮捕令状が発行された。

モスクワヘルシンキグループ(the Moscow Helsinki Group)代表、リュドミラ・アレクセエバはエフィ-モフの件の当局の執り行いに抗議している。アレクセエバは「(精神病院に収容することは)旧ソ連時代の古いやり方、当局にとって望ましくない人物は精神異常と宣告されるが、これは明らかに法律違反」と主張している。

エフィーモフのブログ記事は5月20日に突然停止したが、5月25日に再開している。彼はカレリア共和国から姿を消した1日後、彼の正気を証明する精神科医からの手書きのメモを投稿している。

これに対しミハイル・パクヌトフは再度コメントをしているが、今度は彼もショック状態にいたようだ[ru]。

Да Максим….от такого количества экспертов сам с ума сойдешь…слов нет…цирк сгорел – клоуны остались…

そうだ、マクシム…人は多くの専門家によって分析されるだけでも十分に精神異常に陥ることがある…何もいえることがない…サーカスは焼け落ちて、ピエロたちだけが生き残る…

カレリア共和国最高裁判所の6月下旬の決定後、そして検察による7月中旬の見直しによって精神病院にエフィーモフを収容するという命令は取り消された[ru]。しかし、エフィーモフは依然として、宗教に対する憎悪の扇動に関する罪を規定するロシア刑法第282条違反で起訴されている。有罪判決を受けた場合、エフィーモフは懲役2年の刑に直面する可能性がある。このような理由から、彼はロシアに帰国する意思はなく、また、ポーランドで政治亡命を申請するという選択肢を除外していない[ru]と述べている。

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