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スリランカ:脅かされるインターネット上での表現の自由

カテゴリー: 南アジア, スリランカ, デジタル・アクティビズム, メディア/ジャーナリズム, 市民メディア, 抗議, 政治, 行政, 言論の自由

スリランカ政府は、インターネット上での表現の自由を標的にした新しい規則を発表した。これによると、あらゆる「ニュース」を扱うウェブサイトは、初期登録に25,000ルピー(193USドル)、年間の登録維持に10,000ルピーを支払わ [1]なければならなくなる。

この法律が個人のブログにまで適用されるのではないかと心配する声がある。その恐怖からブロガーたちは自己検閲を強めることにさえなるかもしれない。

登録費をめぐる動き

2012年5月、ジャーナリスト保護委員会(CPJ) [2] は次のような報告をしている。

スリランカの最高裁は、政府への登録を怠った4つのウェブサイトが閉鎖させられた事例について、異議を唱える訴えを棄却した。これは最高裁判所が、スリランカにおける表現の自由は完全に認められた権利ではなく、規制されうるものだという裁定を下したものだといえる。つまり表現の自由を規制するのに、新たな法案を通す必要はないというのだ。

この裁定が下される前、ウェブサイトのオーナー側は「ウェブサイトのオーナーに登録を命じる法律がないため、メディア情報省および電気通信規制委員会は任意にウェブサイトをブロックすることはできない」と主張していた。しかしこれに対して、当局は速やかに手段を講じた。

7月12日、メディア情報省の大臣であるKeheliya Rambukwella氏が、政府は報道評議会(プレス・カウンシル)法に基づき、ニュースサイトを管理するための新しい規則を定める計画があると発表した。大臣は「1つのサイトにつき、100,000ルピー(770USドル)の登録料と、その登録を維持するための費用として毎年50,000ルピーを課すことになるだろう」と語った [3]

また大臣は「いかなる個人や機関も、もし誤った記事や写真が報道されることにより、混乱させられたり中傷された場合は、スリランカ報道評議会に苦情を申し立てることができる」とも述べた。

もしその苦情が名誉毀損だと認められた場合、被告は5,000ルピー以下の罰金か2年の懲役、もしくはその両方により罰せられることがある。また閣議の議事録、公務上の秘密、政府の財務情報や防衛に関する事項について公開した場合も処罰されることがある。(World Socialist Web Site [3]より)

この動きに対して、インターネット内外で強い反応が見られた。コロンボでは野党のリーダーが活動家と共に抗議活動を行った [4]

Thoughtful Kani [5]は、こう書いている。

登録自体はたいしたことではないが、100,000ルピーの登録料は理不尽だ。

7月27日、メディア情報大臣秘書官のCharitha Herath氏はコロンボにて、議会で情報公開法がただちに議題に上ることはないだろうと語った。 [6]現政府はこの法律の制定について長く抵抗している。

8月9日、政府は内閣がニュースサイトの登録料を精査したとし、元の案から最大80%の料金引き下げを発表した。登録料と年間の更新費用は、それぞれ25,000ルピーと10,000ルピーに改訂された。

インターネット上での表現の自由が脅かされる

Indi.ca [7]は、この決定を厳しく非難する。

政府はMervyn Silva氏みたいな役立たずをたくさん公費で雇っている。もし言論の自由を許せば、自分たちに批判の矛先が向けられる。政府はそれを好まないだけなのだ。これはまったくの茶番だし、恥ずべきことだ。

Patta Pal Boru [8]は、こうコメントしている。

あらゆるものをコントロールしようとする欲望こそが、問題の根源だ。

ブロガーは、今回の裁定が混乱をもたらすだろうと懸念している。厳密に何をもって「ニュース」サイトとなるのかがはっきりしないからだ。それにより彼らは自己検閲を強めるかもしれない。このことはもちろん、検閲を強めようとする政府に有利に働く。

Sanjana Hattotuwa [9] は、この新しいルールの影響についてこう書いている。

当然ながら、主流メディアはこの新しい税金の対象となるだろう。しかしインターネットでは、誰もがいつでもどこからでも、ニュース価値のあることをリポートすることができる。だからこの新しい規則は、あっという間に個人メディアにも適用される可能性がある。たとえば個人ブログや、マイクロブログ(Twitterのアカウント)、Facebookのグループやファンページ、ニュースを長期間または話題やイベントに沿って収集したBundlrなどのコンテンツプラットフォーム、時事問題に関するFlickerのフォトストリーム、そしてYouTubeのビデオチャンネルなどである。[..]

これまでと違うのは、誰もがスリランカのどこにいても、政府の裁量ひとつで告発を免れられないということだ。

[10]

Groundviewsは「スリランカでのウェブ検閲:その動向の記録 [11]」と題したBundlr上でのキュレーションを開始した。そこには、スリランカでのウェブ検閲とインターネット上での表現の自由について、数ヶ月分の記述が残っている。

Patta Pal Boru [12]は、こう述べる。

このようなメディアの扱いかたに対抗するには、フォーラムを立ち上げ、ムーブメントを起こし、人々をアジテートすることが重要だ。批判を恐れない言論だけが、文明化された言論であることに値する。

この記事の校正は Yasuhiro Hagiwara [13] が担当しました。