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スペイン:ライアンエアー、またの名を「命がけのフライト」

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, 西ヨーロッパ, アイルランド, スペイン, 市民メディア, 旅行, 経済・ビジネス, 若者

(文中のリンク先について、断りのないものはすべてスペイン語のサイトです)

低コスト、低サービスで知られるアイルランドの航空会社ライアンエアーが、またやり玉に挙げられている。この数週間で数々のインシデントを引き起こしたことが問題になっているのだ。まずは2012年7月23日、3機のライアンエアー機がバレンシアにて緊急着陸した。いずれも燃料不足が原因である。

9月に入ると、さらに2機がマドリードで同じく緊急着陸。こちらは技術的なトラブルと圧力低下が原因だ。そしてバルセロナにて燃料不足でもう1機。こんな話題をネットユーザーが放っておくわけがない。彼らはさっそくこれをジョークにした。

@Joanavas [1]: Dentro de unas horas monto en #ryanair [2]. Encantada de haberos conocido.

@Joanavas [1]: あと数時間後にライアンエアー(#ryanair [2])に乗ります。みなさんと知り合えて光栄でした。

@mgarnedo [3]: Hoy vuelo con #ryanair [2], mañana actualizo la sección de hobbies de mi @linkedin [4] añadiendo deportes de riesgo #wishmeluck [5]

@mgarnedo [3]: 今日ライアンエアー(#ryanair [2])で飛んだら、明日にはLinkedInの趣味の欄に「エクストリームスポーツ」と付け加えるつもり。幸運を祈ってて(#wishmeluck [5])

@Lausfdez [6]: Hoy tenía dos opciones, quedarme plácidamente en mi cama o ir al aeropuerto. Elegí vivir al límite. #Ryanair [7]

@Lausfdez [6]: 今日は2つの選択肢があった。平和なベッドの中にとどまるか、空港に行くか。私は人生をできるだけ長く生きる方を選んだわ。#Ryanair [7]

@Txemitta [8]: #ryanair [2] les la nova loteria… Saps de quin aeroports despegues pero no on aterreras…

@Txemitta [8]: ライアンエアー(#ryanair [2])は新しい宝くじのようなものだね。どこの空港から飛び立つかはわかっている。でもどこに降り立つかは誰にもわからない……

Avión de Ryanair «decorado» por Navidad. Foto de la página de Ryanair en Facebook. [9]

休暇シーズン用にデコレートされたライアンエアー機。写真はライアンエアーのFacebookページから。

果たして、ライアンエアーは安全な航空会社なのか? アイルランド航空局(IAA)の報告 [10]によると、答えはイエス。しかしスペインのパイロット労働組合であるSeplaによると [11]「(ライアンエアーの)ローコスト戦略は行き過ぎだ。常に法律で定められた安全基準を逸脱している」とのことである。

(ライアンエアーはこのSeplaの声明は中傷であるとして、法的処置に乗り出すことを発表した。一方、仲裁者であるSoledad Becerril氏は、裁判所が指定したアクションを開始した。ライアンエアーが航空の安全規則に違反していないか、または乗客の権利を侵害していないかを確認するためのものだ。)

Casaitesはジローナからマドリードへのフライト中、以下のような機内アナウンスを耳にした。そのことを彼女は自身のブログ「3viajes al día」 [12]に書いている。もっともライアンエアーの乗務員はたいして気に留めてはいないようだが。

como ya sabemos que todos piensan que somos unos chorizos, agarren bien sus bolsos por si acaso les robamos, y si no se fían pueden encender las luces de lectura
(…)
si compran [su lotería], les puede sacar de sus miserables y ruinosas vidas. Hasta el piloto me acaba de llamar por el interfono para pedirme un cupón porque hoy no hemos vendido ni uno

みなさんが私たちのことを、泥棒の集まりだと思っていることはわかっています。私たちが盗みを働く場合に備えて、お荷物をしっかりとお抱えください。また、もしみなさんが私たちを信頼しないなら、読書灯を点灯したままにされても結構です。
(…)
ぜひ(もっとこの「宝くじ」チケットを)買ってもらえませんか? それはみなさんの惨めで破滅的な人生からの出口になるかもしれませんよ。当機のパイロットも、ついさっき1枚チケットを買うよと内線で私に言ってきました。ま、それは今日は1枚もチケットが売れてないからなんですけどね。

現実の話、ライアンエアーのフライトは決して安いとは言えないことがほとんどだ。例えば、ヨーロッパの2地点間の往復チケットをオンラインで買った場合、往復分の旅費に加えて、飛行機の遅延やキャンセルに対する負担金が4ユーロ、オンラインチェックイン費が12ユーロ、15キロの荷物を1つ預けるために50ユーロ(20キロなら60ユーロ)、そして管理費の12ユーロが追加される。つまり元のフライト料金にプラスして、少なくとも78ユーロ(片道39ユーロ)の費用が加算されるのだ。

もし空港で荷物の超過が発見された場合、ライアンエアーは1キロにつき20ユーロの費用を最大32キロまで徴収する。また、チェックインをオンラインで済ませなかった場合、およびボーディングパスを印刷してくるのを忘れた場合は、ペナルティとして60ユーロを徴収される。

このことも付け加えておくに値するだろう。ライアンエアー社は昨年1年間で、7億9300万ユーロを越える [13]欧州の公的助成金を受け取っている。このお金を得た上で、同社は同じ期間に5億300万ユーロの利益 [14]を生み出した。かの有名なローコスト戦略を用いてのことだ。

強烈な個性を持つ同社のマイケル・オリーリーCEO(最高経営責任者)は、コストをカットすることに何ら限度を設けていないように思われる。顧客へのサービスも例外ではない。彼の計画 [15]では、太り過ぎの乗客への追加料金をはじめ、トイレの使用に1ユーロを課す、1機当たり3つあるトイレのうち2つを撤去してより多くの座席を設ける、「立ち乗り」シートを導入する、預け荷物を自らの手で飛行機まで運んでもらう、などが検討されている。さらに副操縦士なしでのフライトも提案しており、どうしても副操縦士が必要というならば、客室乗務員に着陸操作を教えて兼務させる [16]という案もある。

Michael O'Leary vestido de torero. Foto del blog banbloodsports.com [17]

闘牛士に扮するマイケル・オリーリー。写真はbanbloodsports.comより

オリーリーはとどまるところを知らない。ベルギーのウェブサイトréférences [18][fr]で、その物議を醸すキャラクターを表す多くの発言が見られる。

あなたの感傷的なお話は聞きたくないね。いったいどうして「払い戻しなし」という言葉が理解できないんだ?
(…)
この国の12ヶ月から18ヶ月に及ぶすばらしくディープで血の滴るような不況を、我々は歓迎する。ナンセンスな環境問題を追っ払うのにちょうどいいからね。
(…)
我々には不況が必要だ。我々は10年間成長を続けてきた。不況はくだらない無駄ばかりの航空会社を退場させ、その結果、我々は機体をより安く買い上げることができるってわけだ。

2006年、BBC Channel 4のDispatches [19][En]というテレビ番組は、2人のジャーナリストを客室乗務員としてライアンエアーに潜入させた。彼らは5ヶ月間同社で働き、あらゆる不正行為を撮影した。

このビデオが明らかにしたのは、トレーニングの欠如、社員の適性確認の軽視、25分間の駐機では機体の適切な検査や十分な給油が不可能なこと、そして違法すれすれの労働環境。まったくもって顧客を尊重しないことは言うまでもなく、彼らは客に対して、こんな飛行機に乗るなんてバカじゃないかとさえ考えているようだ。判断は読者に任せる。当時より状況が改善されていることを願うばかりだ。

http://www.youtube.com/watch?v=S5BLkBeLj_o&feature=related [20]

例として、ライアンエアーのFacebookページ [21]を見てみよう。大部分のエントリーが乗客からの苦情で占められており、彼らは同社が返事をすることすら面倒がっていると言って怒っている。もちろんそれについてもコメントはなしだ。

校正:Takashi Ota [22]