(訳注:この記事は10月28日の選挙前に書かれたものです。なお記事中のリンク先について、断りのないものはすべて英語のサイトです)
10月28日、ウクライナでは議会選挙が行われる。現在の大統領[ja]に対する最大の対抗馬[ja]が獄中にいることもあり、今回の選挙は国際社会からの注目がますます高まっている。
与党が行政的立場を利用した選挙活動を行っているという疑惑が強まっている中、ウクライナ政府は、選挙を自由で公正なものにし、3700人を超える国際監視員を受け入れると約束した。
ウクライナ内務省は、クラウドマッピング技術を採用することを決めた。これはUshahidiが開発したシステムをベースとする違反行為の地図[uk]を作成するというものである。当局はこの取り組みの目的について、「2012年の選挙のプロセスにおいて、社会が客観的な意見を形成することを手助けするため」[uk]だとしている。
選挙の透明性を確かなものにするために、また政府の誓約を監視するために、地域の選挙監視団体も、こうした新しいテクノロジーを利用し始めている。
OPORA(オポラ)
市民ネットワークのOPORAは、インタラクティブマップ[en, uk]を使用している。これは地域の選挙監視委員の連絡先をはじめ、225の選挙区、3万3000の投票所すべての詳細な情報を含むものである。選挙監視は3800人の専門監視人によって行われる。監視人が違反行為を見つけた際には、証拠となる写真やビデオを添えて、監視人自らマップ上に記録する。また、このグループはクラウドソーシングも使用している。これは直通電話やオンラインの記入フォーム[uk, en]を使って、誰もが違反行為についての情報を提供できるというものである。報告された違反行為は、検証された後、マップ上に記載される。さらに選挙当日、OPORAはSMS(ショートメッセージサービス)やGSM(訳注:携帯電話の無線通信方式のひとつ)の技術を使って、統計ベースでいち早く票を集計し、選挙結果の妥当性を検証する予定だ。
Maidan.org.ua
オンラインの市民活動の拠点となっているMaidan.org.ua[uk]は、「Maidan-monitoring」というプロジェクトを立ち上げた。こちらもクラウドマッピング技術を利用し、Ushahidiのシステムによる違反行為の地図[en, uk]上で、確認された行為の可視化を行うものである。「Maidan-monitoring」と、従来のクラウドソーシングを使った取り組みとの一番の違いは、インターネット上に掲載する前に、集められてきた情報すべてを検証する努力をしている点である。さらにMaidan.org.uaは、補足的なプロジェクトとして「市民の中央選挙委員会(People’s CEC [Central Election Commission])[uk]」を立ち上げている。これは選挙委員会のメンバーと一般投票者に対し、最終的な投票内容のデジタル写真を提出するように依頼。それらを後にオンラインで公開することで、選挙結果の操作が行われることを防いでいる。
ElectUa.org
さらに、いかなる党派にも属さないクラウドソーシングを使った選挙監視プロジェクトとして、ElectUa [uk, en; GV roundup]もある。これはInternews-Ukraine(訳注:メディア支援を行うNGO)によるプロジェクトで、こちらも報告された違反行為を可視化するために地図を使っている。またすべての報告について、インターネット上に掲載する前に検証を行う「スマートクラウドソーシング」と呼ばれる仕組みも採用している。このプロジェクトは、2009年と2010年の選挙でツイッターによる実況中継を成功させ、それが成長のきっかけとなった。この選挙実況は、ウクライナにおけるクラウドソーシング技術とツイッターの浸透に大きく貢献した。「ElectUA 2012」へのメッセージは、電子メールやSMS、電話、プロジェクトのウェブサイトやフェイスブックページ、ツイッターを通して届けることができる。