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YouTubeの新しい顔ぼかし機能を使う市民ジャーナリストへのアドバイス

カテゴリー: 市民メディア, GV アドボカシー

この投稿は当初 WITNESSのブログ [1]に掲載されたものです。WITNESSのテクニカルマネージャー、Bryan Nunezが執筆しました。

先月(20127月)、YouTubeではアップロードした動画をぼかしにする機能を開始した [2]。これは民間動画共有プラットフォームやソーシャルネットワークなどに私たちがこれまで訴えてきたことへの、第一歩となる。それは、ネットでつながった視覚的な時代に、視覚的匿名性を可能にし維持するための、簡単で速くアクセスしやすいオプションを有効にするやり方だ。これまでのブログ [3]オンライン・ビデオチャット [4]で、なぜ私たちがこの機能を重要と考えているか分かるだろう。

今回は、この機能について私たちがこれまで見たまでの分析と、この機能を使う際のアドバイスをしたい。

技術的見解

YouTubeの顔面ぼかし機能は方向として間違ったものではなく、特にこれまでのやり方 [5]を考慮しいてるところがいい。使いやすくするという点では、かなり時間の節約になる。とはいうものの、制限はあるのだが。

動きが多く、たくさんの顔が写った複雑で容量の大きい動画ファイルを処理するには、ずいぶんと時間がかかる。数十人が歩いている姿が画面に映った昨年のエジプトの抗議運動では、後半の一部の人を除いてすべての人の顔がぼかされるよう処理されている。この動画(約1分)で顔にぼかしを入れる作業は、元の動画のアップロードが終わってから約30分かかった。

この2つめの例では、私たちは解像度が低くて、軽いファイルでも正確に顔にぼかしを入れられるかどうか試してみたかった。こちらも、覆面した顔はキャッチできなかったが、ほぼすべての顔を認識し、とてもうまくいった。この動画は16秒で、作業には5分かかった。

人物インタビューや私たちと協力関係にあるグループが編集した動画は、人権に関わる動画の大多数を占める(そしてこのたぐいが共有にもっとも危険を伴う)。そのため、私たちは一人ひとりのインタビューを質の高いHDビデオでテストしてみたかった。見てわかるように、細かいことを言わなければ、ぼかしを入れる機能は総じて正確だ。事実、動画の字幕を目立たなくなるので、もう一度 Amara [6] 、またはYouTubeのキャプション機能を使ってやり直す必要がある。この約1分間の動画では、編集に約5分かかった。

最後に、YouTubeの顔ぼかし機能とObscuraCam [7] とを、11で対決させてみたいと思う。これはWITNESSとザ・ガーディアン・プロジェクト [8]が共同開発したアンドロイド携帯のアプリである。

YouTube'の自動ぼかし機能を使った場合:

ObscuraCam [9] のフル自動顔面探知・ぼかし機能を使った場合:

大規模ではないものの、これらの最初のテストでわかることは、YouTubeの顔面ぼかし機能はアップロードされたどんなビデオでもアップロードした視覚で確認できる顔の大多数を素早く、正確に目立たなくすることができるということである。ファイルの容量や写真の複雑性、データレートに沿った編集スピードを確かにするため、さらにテストが必要となっている。またYouTubeは、この機能でつけたぼかしを画像から除去するのは「信じられないほど難しい」 [10]と断言している。とはいっても、私たちはまだそのことを独力では確認できないが。将来のリリースでは、音声錯乱化のような機能がついていたり、ぼかす範囲を手動設定できるようにしてほしいものである。

ObscuraCamと比べ、YouTubeのぼかし機能は直径が長く、ObscuraCamが時々動いている顔を探知できないのに対し、YouTubeは探知できる顔のほとんどすべてをカバーできる。将来的には、ObscuraCamにぼかしを入れる範囲を変更できる機能を追加する計画だ。

実用的なコツ

以下は、安全ではない内容の映像を記録する際や、どんな種類のものでもぼかし・不明確にする機能を用いたいときに役に立ついくつかのコツやアドバイス、警告などです。YouTube用の特別なポイントも合わせて紹介する。動画編集の手順にしたがって、大まかな順番、つまり記録する前からアップロード、保存(アーカイブ)までを記す。

記録をする前に

手引き:オンライン上で多くが紹介されている。以下はその中でも優れているもの:

リスクを常に考慮して始める: リスク評価からまず始めるのが動画作成のかぎ。携帯電話やカメラを取り出しもしないうちに考慮するために、WITNESSの動画 「撮影をする前に」で紹介しているコツをご覧いただきたい。

撮影の間

インフォームドコンセントを確実にする目的: 絶対に匿名を保てるという保証はできないので、WITNESSが市民活動家など人権擁護者に奨励していることは 、弱い立場にいる人を撮影またはインタビューするときはインフォームドコンセントがいかに重要であるかを考えることである。インフォームドコンセントは人がプライベートでインタビューに答えている姿を撮影するときに(通りでの抗議運動を撮影するよりも)特に重要となる。最悪のシナリオをいくつか(例えばだれかの証言を地元警察が見ていて暴力につながる可能性があるなど)想定させることで、意見を述べる人が、撮影されてもよいのかどうか、またどの程度まで匿名性を保つかなど、適切な判断をすることができる。

安全に関する別の側面も考える:あなたやあなたが撮影する人の安全に関する他の危険は、その撮影や映像配信の仕方に原因がある。たとえば、携帯デバイスで撮った場合だ。情報セキュリティーでいい情報源になるのは、MobileActive [11]のプロジェクトであるSaferMobile [12]Tactical Technology Collective [13]ONORobo [14]プロジェクト、Frontline Defendersのツールとマテリアル [15]がある。

個人デバイス上あるいはアップロード前にためになるソリューション: あなたの映像は作成から公開までの間、様々な時点で簡単に阻止されることを覚えておく必要がある。動画がアップロードする前に阻止されることが心配であれば、自分のデバイス(たとえば、アンドロイド用のWITNESSGuardian Project共同開発のアンドロイド用アプリObscuraCam [8])や、高度とはいえないぼかし技術を使うことを考えてみるのもいい。基本的なぼかし技術である人物を逆行にすることや顔を映さないことは可能だし、次の動画ではこの機能についてのアドバイスを紹介している。

YouTubeぼかし機能はぼかし範囲が大きい: インタビューを撮影する時は、アップではなく腰から上を撮影するのがベストだ。さもなければ、映像全体にぼかしがかかってしまう。この手法は動画に字幕を入れるときに特に重要になる。

流通

ぼかしにすることは保護を保証するものではない: 動画にある様々な要素から人は特定できることを覚えていてほしい。たとえば、分かりやすい場所にいたり、服に特徴的なものが付いていたりする場合は目で分かる例。一方で特徴的な声やアクセントなど耳で分かる例もある。動画の内容や一緒に見る人によって特定できることもある。さらに、アップロードした人のユーザーネーム、IPアドレスでも追跡されるかもしれないし、動画をアップロードした人から画面に映っているのが誰か特定されてしまうかもしれない。

技術的な解決は完璧ではない: いくつかのぼかし処理は元に戻すことができる。YouTubeは、ぼかしにした映像を第三者が元に戻すことは非常に難しいと発表しているが、これが覆されることがないという保証はない。

保存とアーカイブ

オリジナル動画を持ち続けることは危険につながる: : YouTubeのぼかし処理のデフォルトのオプションではオリジナル動画を消すことになる。そのようにしたいか考え、YouTubeは召喚を含む法執行からの合法的な要請には応じるので、法的に要求されれば彼らはオリジナル映像の提出が求められることを覚えておく必要がある。YouTubeの広報、ジェシカ・メイソンは、Slate上のあるブログへのリアクションでこう書いている: notes in a response to a blog on Slate [16]

With this tool we are giving users the option to delete the original “unblurred” version. In the case that they choose to delete it, the video would be permanently gone from our serves and we would be unable to hand it over. This was designed with the security of activists in mind. We also take down videos that do not comply with our Community Guidelines [17].

私たちは「ぼかしを入れていない」オリジナルバージョンを削除するオプション機能を提供している。削除を選んだ場合、映像はサーバーから永久に消え、私たちが保存し続けることもできなくなっている。これは活動家の安全を考慮してデザインされたもので、また私たちは、コミュニティ・ガイドライン [17]に準拠しない動画は降ろしている。ユーザーが動画を削除せず、ある国の政府当局がが有効な裁判所命令や召喚状がある場合、法規に従う会社として私たちはその命令に従う必要がある。

In the case that a user did not delete the video and the government of one of the countries where we are launched had a valid court order or subpoena, as a law-abiding company we would have to comply.

ユーザーが動画を削除せず、ある国の政府当局がが有効な裁判所命令や召喚状がある場合、法規に従う会社として私たちはその命令に従う必要がある。

今後も知り得た情報を紹介していくつもりだが、あなたがYouTubeツールを使った時にどこがうまくいくか、どこがうまくいかないか、覚えたことも紹介してほしい。

もし、YouTubeのぼかし機能や、映像に映る人物の安全を保つための他の技術を使ってみて、何か役立つコツを会得したら、ぜひここで紹介してほしい。

 

校正:Yuko Aoyagi [18]