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米大統領の「キス」に揺れるミャンマー

[記事中のリンク先について、記載のないものは英語のサイトです]

バラク・オバマ氏は、初めてミャンマーに足を踏み入れたアメリカ大統領として、新たな歴史を刻んだ。多くの人々が彼の訪問を歓迎した一方、アメリカ大統領が今ミャンマーを訪れるのは時期尚早だったと指摘する人たちもいた。ネチズンは#Oburma(訳注:オバマとビルマをかけた造語) というハッシュタグを使ってオバマ氏の訪問について記録を残し、その動向を注意深く観察した。そうして「ミャンマー」や「アウンサンスーチー」といったキーワードは世界中に広まっていった。

オバマ大統領が近々ミャンマーを訪問するというニュースが発表されたとき、多くの人々が興奮に包まれた。印刷屋はあわただしくアメリカ国旗をばらまき、オバマ大統領にちなんだグッズを販売した。

歴史学者であり、元国連事務総長ウ・タント氏[ja]の孫であるタン・ミン・ウ氏によると、オバマ大統領の祖父は第二次世界大戦中ミャンマーにいたことがあるという。

@thantmyintu Remembering that Pres Obama's grandfather served with King's African Rifles in Burma, was prob part of advance down Chindwin to Mandalay.

@thantmyintu:オバマ大統領の祖父は、ビルマにおける英国王立アフリカ・ライフル銃隊に従軍していたようだ。おそらくチンドウィン川を下ってマンダレーに到達した先遣部隊の一員だったのだろう。

オバマ大統領、ミャンマーへ歴史的な訪問。写真はCJMyanmarより

若きグラフィティアーティストAr Kar Kyawは、ヤンゴンで「Welcome Obama」というグラフィティアートを描き、メディアと大衆の注目を集めた。しかし、作品はライバルの画家たちによってほとんど壊されてしまった。

ヤンゴン大学はオバマ大統領が演説に来ると決まって以来、いくつかの修復を行った。そのことについてKo Htikeはこう述べている[my]。

It looks like Obama saved the Yangon University which was destroyed by Khin Nyunt. Now that they are renovating, treasuring the institution… it seems Myanmar military junta only appreciates the value of institutions only when others say so.

オバマ大統領は、キン・ニュン[ja]によってめちゃくちゃにされたヤンゴン大学を救ったようだ。今では建物は修復され、大学機関の存在も重要視され始めている。…どうやらミャンマーの軍事政権は、他人が評価したときだけ、その機関や組織に価値を見出すみたいだ。

一方で今回の米大統領の訪問は、今まで数十年間、中国としか関係を持たなかったこの国と、より近しい関係を築くためであるとみる者もいる。Myo Setはこの観点に立って以下のように論じている[my]。

Rather than emphasizing on Kachin [Civil War] issue, Obama is expected to talk more seriously about the Rohingya riots when he comes. In the name of promoting humanitarian aid, he will make effort to irritate China regarding the Kyaut Phyu Pipeline. […] I just want to suggest to Rakhine organisations to provide detailed historical facts and proofs (regarding the Rohingya issue). Furthermore, I wish they could discuss (with Obama) about the geographical situation of Myanmar and the reported overpopulation of Bangladesh together with Myanmar Human Rights Commission. […] Regardless of what Obama will be discussing, his aim is just to take Myanmar from China. I guess the main purpose of lifting the sanctions is also for this. […] I assume we have to face the unnecessary U.S-China rivalry too early than we expected.

オバマ大統領はミャンマーに着いたら、カチンの(内戦)問題よりも、ロヒンギャの暴動についてより真剣に話すはずだ。大統領は人道援助を進めるという名の下で、Kyaut Phyuのパイプライン(訳注:中国とミャンマーが開発を進めるパイプライン)について、中国を苛立たせるために手を尽くすだろう。[…] 私がラカインの組織に対して提案したいのは、(ロヒンギャ問題に関して)詳しい歴史的事実とその証拠を提供して欲しいということだけだ。さらに言えば、彼らがミャンマーの人権委員会とともに、ミャンマーの地理的状況や、報告されているバングラデシュの人口増大について(オバマ大統領と)議論できることを願っている。[…] オバマ大統領の話すことが何であれ、彼の真の狙いはミャンマーを中国から引き離すことだ。ミャンマーに対する制裁を解除した主な理由もここにあるだろう。[…] 我々は、予想していたのよりもかなり早い段階で、アメリカと中国が余計な対立をするという状況に向き合わなければならないのだ。

ちょうどオバマ大統領が着く前、ミャンマー政府は49人の政治犯[my]に恩赦を与えた

オバマ大統領はあちこちで車のパレードに参加し、大勢の群衆に迎え入れられた。数年前であれば、星条旗がミャンマーの街中で見られるとは誰も予想だにしなかっただろう。しかし、人々をもっとも感激させたのはオバマ大統領が野党のリーダー、アウンサンスーチー氏の頬にキスをしたことだった。ミャンマーはまだ保守的な国ではあるが、ネット上のほとんどの人は、これを不適切とは捉えずに、むしろ「ロイヤル・キス」だといって称賛した。Thin Thin Tunはこれを両国間の友情の印であると述べている[my]。

Although it's not quite comfortable to see it through “Myanmar's eyes”, (I believe) it is a reflection of the warm and lovely friendship (between U.S and Myanmar).

「ミャンマー人の目」からすると多少抵抗があるけれど、あれは(アメリカとミャンマーの間の)温かくラブリーな友情の表れだ(と私は思う)。

オバマ大統領を歓迎するためヤンゴン市内の通りに集まった数千人の人だかり。写真はCJMyanmarより

オバマ大統領の演説をヤンゴン大学で聴く機会のなかった者たちは、地元局が流す生中継を楽しみ、お茶屋に入って近所の人たちと一緒にその様子を観る人たちもいた。さて、オバマ大統領が講演をしている間、実はヤンゴン市内の各地で停電が起きていた。Nay Myo Zinはその時の様子をこう綴った[my]。

A while after the speech was broadcasted, the electricity went off in Yangon. Till now 5:15 pm, we have to stay in the dark. Day time is short as the cold season is approaching. I silently welcome the U.S. president from the dark land of Myanmar. I was thinking I could die happily if we have a chance to live with stable supply of water and electricity while I was listening President's speech. Now, it becomes dark as there is no light in South Dagon township. By flapping the fan, I am wishing no mosquitoes would bite Obama in the dark.

演説が放送されてからしばらくすると、ヤンゴン市内で停電が起きた。現在午後5時15分だが、私たちは依然として暗闇の中でじっとしていなければならない。寒い季節が近づき、日は短くなっている。私はこのミャンマーの暗い大地から静かにアメリカ大統領を歓迎する。大統領の演説を聴きながら、私は考えていた。もし私たちが安定した水や電気の供給の中で暮らすことができれば、もう思い残すことはないと。ここ南ダゴン地区では明かりもつかず、辺りは暗くなってきた。私はうちわをあおぎながら、暗闇の中で大統領が蚊に刺されませんようにと願っている。

オバマ大統領の演説内容は、結局ミャンマー国内で最もよく論じられる問題だった。ロヒンギャの支援者たちはオバマ大統領がミャンマー西部の暴動を強く非難しなかったとして批判したが、一方で彼の演説を高く評価する声も上がった。また、Tom Bergreenはミャンマーはアメリカが目論む変化に追従していくべきではないと主張している

For the most part I liked his speech, but there are two areas where our opinions diverge.

First, and this is a rather general thing and is a criticism of US and western foreign policy in general, I think that the worship of Daw Suu is understandable, but I think it creates a cult of personality around her as an individual rather than embracing her ideas and leadership.

Second, although there cannot be exceptions with respect to human rights and slowing ALL persons to live in dignity… (but) citizenship should be based on a set of laws that are applied equally to all within Myanmar borders. As long as the conflict there is viewed erroneously (IMHO) by foreign media and governments as a sectarian one, resolution is nearly impossible. This should be treated as a constitutional issue and must be decided by Rule of Law.

ほとんどの部分において彼のスピーチは気に入りました。しかし我々の考えとは異なる点が2つありました。

まず、これはどちらかというと一般的なことで、アメリカ及び西欧諸国の外交政策一般への批判ですが、スーチー氏に対する賛美は理解できるものの、それはスーチー氏の思想やリーダーシップというよりも、彼女個人の人柄が崇拝されているのだと思います。

次に、人権について、全ての人が威厳を持って生きることについて例外はあってはいけない…(しかし)市民権は、ミャンマー国境の内側にいるすべての者に等しく適用される法律に基づくべきです。私の意見では、この対立(訳注:ロヒンギャ族とラカイン族の対立)を、宗派間の争いだとする海外メディアや諸外国政府の見方は間違っていると思います。この見方がある限り、解決はおよそ不可能です。これは憲法の問題として扱うべきであり、法の支配によって判断されなければなりません。

もちろん、オバマ大統領の訪問についてユーモラスなコメントを残すネチズンたちもいた。また、伝統的な占星術を使って、大統領の誕生日を決めることに興味津々な人たちもいた。例えばWin Min Koは、シュエダゴン・パゴダ内の金曜日の一角(訳注:ミャンマーでは曜日別の神様に祈る風習がある)に水を注いでいるオバマ大統領の写真をシェアした。そこにはこんなキャプションが添えられている。

Friday born Obama.

オバマは金曜日生まれ

校正:Takuya Oshige