2012年チュニジア、言論の自由に関する情勢

2012年、チュニジアにおける表現の自由のための闘いは続いた。 インターネットは規制がないままだが、言論の自由の擁護者たちは、言論の自由を抑制する口実としての宗教利用に懸念の声を上げた。その一方、ジャーナリストを保護し、政府のメディアへの干渉を制限する新しい出版法を政府が無視しつづけているように、法律が整備されていないことが、チュニジアのメディアの状況を特徴づけている。

検閲なしのウェブアクセス:

最高控訴裁判所は2月、X指定(成人向け)のコンテンツにフィルターをかけることを命ずる評決を 棄却した 。 9月初めにチュニジアは、「インターネットの自由化に協力的に取り組む」各国政府のグループからなる 「フリーダムオンライン連合」に加入した[en] 。 このアフリカ最北の国はまた、来年にはその連合の第3回目の会議を主催する予定である。

かつては「インターネットの敵」だった国から、これらの前向きな進展があったにもかかわらず、活動家たちはいまだに、前政権の任期中のインターネットの監視や検閲についての調査がないことに、特に懸念を抱いている。グローバル・ボイスが行ったインタビューの中で、匿名の政治風刺漫画家「_Z_」は次のように述べた:

独裁政権は19カ月前に崩壊した。そして今までのところ(ベン・アリ政権時代の)ウェブの取り締まりについてのまともな調査は何一つ行われていない。チュニジアのネットに(検閲、逮捕、脅迫などの)恐怖心を蔓延させていた「Ammar404」と呼ばれるあの仕組みが、今日もなお存在していて、再び活躍する機会をうかがっているかもしれない。

8月には、ブロガーと活動家からなるグループが、フィルターをかける指示をした責任者を明らかにするために、チュニジアの内務省を 告訴することを明言した [en]。

チュニジアのネットユーザーはまた、司法上の告発を受けるというリスクを負ったままである。2012年の3月に、Ghazi BejiとJabeur Mejriは、イスラム教を攻撃する内容のコンテンツを公開したことで、懲役7年半の有罪判決を受けた[en]。敗訴 [en]後今も服役中のMejriは、Facebook上で預言者ムハンマドの風刺画を公開した。国外逃亡したBejiは、Scribd という文書ファイル共有サイトで、「イスラムの幻想(The Illusion of Islam)」という書籍を発表した。

NawaatとIFEX-TMGによって組織された言論の自由キャンペーンで使用されたポスター。2012年5月。

冒涜(ぼうとく) :

8月1日、昨年の議会選挙で勝利した政党「アンナハダ運動」は、国の刑法に盛り込む予定の冒涜禁止法案 [en]を提出した。これにさかのぼること2011年10月に、国の新しい憲法を起草するための憲法制定国民会議(NCA)のメンバーが選出されているが、この法案はNCAによってまだ討議されていない。1週間後、チュニジアの新憲法の最初の草案が公表された。その草案には、冒涜を犯罪とする条項が含まれていた。しかしながら、与党連合内の3つの政党間の交渉の後、その条項は削除された。

12月14日、NCAは、憲法草案の修正バージョンをウェブ上で公表した。新しい草案には、冒涜条項は含まれておらず、言論の自由を保障し、事前検閲を禁止している。

冒涜を犯罪化するというアンナハダの誓約が、あの 物議を醸した「芸術の春(Spring of Arts)」 [en]を引き起こした。これは6月1日から10日まで開催された現代芸術の展覧会である。 6月10日、超保守派の抵抗者たちが、展覧会の閉会式が行われていた会場Palais Abdeliaを襲撃し、展示されていた作品を破壊した。抵抗者たちはその会場で冒涜的な作品が展示されていたと非難したが、主催者はそれを否定した。この暴力的な抵抗活動は、ソーシャルネットワーキングサイトFacebookで広がっていたうわさが引き金となった。その展覧会が預言者ムハンマドを描いた絵を展示したといううわさである。

5月3日、チュニスに本拠地がある初級裁判所は、民営のNessmaTVのディレクターNabil Karouiに対し、アニメ映画「ペルセポリス」
を放映したとして、1200TND(チュニジアディナール)の罰金刑を科した

塀の中のメディア幹部たち:

2月15日、アラビア語の日刊紙Attounissiaの総合ディレクターNasreddine Ben Saidaが、サッカー選手Sami Khediraが裸の恋人と一緒に写っている写真を新聞の第1面に掲載したとして、2人の新聞記者とともに逮捕された。3人はその後釈放された

[右から左へ]操り人形番組「Logique Siyasi」で歌っているモンセフ・マルズーキ大統領、ハマディ・ジェバリ首相、イスラム政党アンナハダ党首ラシェッド・ガヌーシ。

8月後半、チュニスに本拠地がある裁判所は、Attounissia TV局のプロデューサーでありディレクターのSami Fehriを汚職の容疑で逮捕する命令を下した。Fehriは、親戚であるベン・アリとプロダクション会社を共同所有していた。

警察へ自首する前にFehriは、ハマディ・ジェバリ首相のあるメディア顧問が自分に電話をし、Logique Siyasi(政治の論理)という風刺的な操り人形番組の放送について不満を述べていたことを公表した。その番組は8月に放送停止になったが、テレビ局は最近放送を再開した。

彼への起訴と勾留命令を取り消す [en]という評決が11月28日に最高控訴裁判所で出たにもかかわらず、Fehriは釈放されなかった。

勾留が続いていることに抗議して、彼はハンガーストライキを続けた。 12月27日、健康悪化が報道された後、彼は病院へ移送された。

 

報道の自由:

政府が干渉しているとして抗議するジャーナリストたち。10月17日。撮影 Rabii Kalboussi

10月17日、チュニジアのジャーナリストたちは、政府が報道の自由を抑圧し、国営のメディアの報道をコントロールしようとしているとして、それに抗議するために、ストライキに入った。ジャーナリストたちはまた、2011年11月に前の暫定政府によって採用された2つの法律の施行を政府に要求した。その2つの法律[en] (法令115と116)は、報道の自由と国営メディアの独立性を保障している。

軍と検閲:

5月21日、陸軍大将は、集合ブログNawaatの記者であるRamzi Bettibiのカメラ2つを押収した 。Bettibiは、ベン・アリ政権を倒した反乱の際に抵抗者たちが死亡した事件における法廷審問を撮影していた。このいわゆる「殉死者の裁判」での審問の取材制限の撤廃を求めて、Bettibiは数日間、ハンガーストライキを行った。

モンセフ・マルズーキ現大統領の元顧問であるAyoub Massoudiは、旧カダフィ政権の首相のチュニジアからリビアへの引き渡しをテレビで公表した件で、軍事裁判に臨む。 Massoudiは、バグダディ・マハムーディ(訳注:旧カダフィ政権首相)の引き渡しを、「国家への反逆」と評し、Rachid Ammar(チュニジア軍参謀長)とAbdelkrim Zbidi(防衛大臣)に対し、6月14日に行われた引き渡し手続きをマルズーキ大統領に届け出なかったことを非難した。 9月21日、Massoudiは、4ヶ月の執行猶予付の有罪判決を言い渡された。次の法廷での審理は、1月3日に行われる。

グラフィティの裁判:

Crazy Boysによるグラフィティ「Zwewlaに自由を」

グラフィティアーティストであり、「Zwewla」(チュニジアの方言で貧しい人たち)というストリートアートコミュニティのメンバーであるOussama BouagilaとChahine Berricheは、貧しい人たちを擁護するグラフィティを描いたことへの法的措置に直面している。 彼らは、「公共物に許可なく文字を書いた」「非常事態宣言に違反した」「公の秩序を乱すような偽の情報を公表した」として告発された。12月5日、初級裁判所は彼らの裁判を2013年1月23日に延期した。

校正:Takuya Oshige

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