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15日の朝、チェリャビンスク地区上空で隕石が空中爆発、地面に衝突したと見られている。現時点(訳注:2月15日19:18(GMT)時点)では、まだロシア当局は隕石が落ちたと思われる場所を捜索している最中だが、隕石により衝撃波が発生し、窓が割れたり物が落ちたりしたのは確実だ。チェリャビンスク州の正式な発表によると、その日の夕方までに204名の子どもを含む千人近くの人が怪我をし、その原因の多くは割れたガラスということだ。
YouTubeにはアマチュアによる動画があふれた。映像の多くは爆発直後の様子、空にかかった太い煙の跡を載せていた。ロシアでは車のダッシュボードにカメラ[en]をつけている人が多いため(主に事故などの際、自分の立場を守る目的[ja])、隕石落下の生の瞬間をとらえたものも多くある。人気の写真ブロガー、Ilya Varlamovは、自身のLiveJournalブログでこのようなビデオをたくさん紹介している。
この災害によって建物の損傷やけが人が出ているが、RuNetのユーザーたちは、いつになくジョークを飛ばしたり、内輪ネタで盛り上がったりしたいようだ。笑いによる気晴らしは、どんな惨事の場合も人々の反応として自然なものだが、実のところロシア人にとって、チェリャビンスクに落ちた隕石というのは、ある種完成したネタなのだ。チェリャビンスク[ja]は国の中でも特に厳しく貧しい街であることで知られ、良くも悪くも評判だ。Chelyabinsk jokes(チェリャビンスク・ジョーク)というサイトは、ロシア人の笑いの世界では独立国家のような存在だ。その精神は、(現在も続くコント中心のバラエティー)番組Nasha Russia[en]のIvan Dulinのコーナーまで途切れることなく大切に守られている。こういったジョークの一例はこうだ。「チェリャビンスクの地下鉄はとても頑丈で、トンネルなしでも地下を通ります。」(*1)
この笑いの方程式は真新しいものではないが、隕石との組み合わせが意外に上手くいくので、RuNetのユーザーは互いを笑わせようと躍起だ。たとえば、ロシア外務省のふりをした偽アカウントはこのようなつぶやきをしている。
Челябинский цинковый завод настолько суров, что берёт руду прямо из космоса
チェリャビンスクの亜鉛工場はとても頑丈で、宇宙空間から直接鉱石を採掘しています。
話の内容とオチは見えているので、こんな含みのあるバージョンのつぶやきも広がっている。
Челябинский дождь настолько суров… #метеорит
チェリャビンスクの雨はとても頑丈で… #meteorite(隕石)
同じように馬鹿げた一投に挑戦する有名人もいる。政治腐敗問題に取り組むブロガー、アレクセイ・ナワルニーの広報官であるAnna Vedutaは、ナワルニーからのグリーティングカードを転載した。
Жители метеорита с ужасом наблюдали приближение Челябинска.
チェリャビンスクが近づいてきたから、隕石の中の人もおびえながら見てたよ。
ロシア連邦議会の「同性愛プロパガンダ」禁止法草案をもじり、国会がもうすぐ「隕石禁止」法を採択する予定という虚構ニュースを広めるTwitterユーザーもいる。ゲイに対する政府のキャンペーンは、自然災害を法律で禁止するように不合理なものだ、といったところか。
また、隕石の被災者に充てられる国家の補償を受けるために、チェリャビンスクの住民の中には、自分で窓を壊している人もいるとLenta.ruはレポートしている。それを受け、ジャーナリストのDmitri Olshanskyは国の状態を嘆き、Facebookにこう書いた。「貧しい、哀れなロシア。いつもと同じことだ。」
これらに加え、RuNetユーザーはAdobe Photoshopの(おそらく海賊版の)類似品を立ち上げて加工写真を作成したり、「fotozhaba」(文字通り訳すと「写真カエル」)でチェリャビンスクの空を横切る隕石の写真を真似して作ったりしている。政治には無関係のもの(アングリー・バードの丸い形を隕石に似せるようなベタなネタから、1998年の映画「アルマゲドン」のあらすじまで)もあれば、ウラジミール・プーチン(と彼の権力崇拝)や、バンド プッシー・ライオットのナジェージダ・トロコンニコワをネタにしたものもある。
チェリャビンスクの隕石に対する「fotozhaba」の反応の中でも、話題になっていておもしろいものを以下に紹介する。
(*1)チェリャビンスク地下鉄の建設が、予算の関係で遅々として進まないことを皮肉ったもの。当初は2000年に完成予定だった。
(*2)プッシー・ライオットのメンバーは、プーチンが再選した際、教会で「聖母様、プーチンを追い出してください」という詞の自分たちの曲を歌い、抗議活動を行っている[ja]。この抗議活動は、すぐに警備員によって中断された。本文中の「祈り」とは、この抗議活動のこと。
ロシアの笑いには、自分たちのおかれる状況を自虐的に皮肉ったものが多いようだ。「ロシアンジョーク」や「アネクドート」で検索すると、様々なジョークが日本語でも紹介されている。