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女たちよ、キルギス出国を禁ず

カテゴリー: 中央アジア・コーカサス, キルギス, 人権, 女性/ジェンダー, 市民メディア, 法律, 移住と移民

キルギス議会において、ひとりの議員が新しい法案を提出した。法案の内容は、23歳未満の女性に対し、親の同意なく出国することを禁じるもので、Yrgal Kadyralieva議員はこの法案をSapargul法案と呼んで、議会での成立を働きかけている。「Saparul」というのは、ロシアにおいて、同胞男性から「愛国」襲撃を受けた、若いキルギス人女性移住労働者の名前だ。昨年6月のグローバル・ボイスが報じた通り [1]、このショッキングな襲撃事件は一件にとどまらない。

そもそもこの法案は、若いキルギス人女性労働者が国外において「性的奴隷」の対象になることを阻止しようとするものだ。にもかかわらず、この法案は、激しい非難にさらされている。人権擁護団体もこの法案に対し、憲法で保障された移動の自由を制限するものだと告発する。

[2]

このパロディー写真で、ビシケク・フェミニスト・イニシアティブはKadyralieva議員(右)の法案を、父権主義的かつ抑圧的なものとして描いている。吹き出し「あんた、どこに行くのよ?」

「先の見えない境遇からの救い」

3月4日には、地元ニュースサイトkloop.kg [3][ru]がさっそく、この法案についてYrgal Kadyralieva議員にインタビューしている。このインタビューは、先月kloop.kgのサイト上で非常に大きな関心を呼び、一般市民によるビデオ討論 [4][ru]も行われたほどだ。このインタビューが、なぜこれほどまでに注目されたのか。ひとつには、Kadyralieva議員と若手女性ジャーナリストZarema Sultanbekovaとの間の率直なやりとりがある。問題の法案が通過すれば、Sutanbekovaもまたその保護対象となる。インタビューでは何度か、Kadyralieva議員がこみ上げる感情を抑えきれずにいる様子がうかがえた [3][ru]。

Я горю! Мне стыдно за этих девушек.

Зарема, мы хотим или нет — мы рожаем нацию! Богатырей или депутатов! Мужчины не рожают!

私は(怒りに)燃えているのよ。恥ずかしい話だわ。

好む好まざるにかかわらず、国を作るのは私たちよ! 英雄や国会議員(も私たちが生むの)! 男たちじゃないのよ!

Kadyralieva議員はまた、自ら若い女性議員として、この法案の提出がいかに難しかったかを語っている。彼女自身の年齢は、この法案が求める出国禁止年齢と8歳ほどしか違わない。男性優位の議会において、アクサカル(古参議員)からはいつも「黙れ」と言われ、政党幹部からも、法案提出はスタンドプレーだと非難される。

しかし、Kloop読者のAizhan Rahmanovaは、ロシアにおける若い女性移住者の現実に迫ろうとするKadyralieva議員の勇気をたたえる [5][ru]。

я полностью согласна с ней,потому что сама живу за границей и вижу что твориться с девушками.Она женщина мужественная,и спасает девушек от непонятного будущего.

まったく同感だわ。私も外国に住んで、彼女たちに何が起こっているか見ている。議員は、先の見えない境遇から彼女たちを救おうとしている。勇敢な女性よ。

ただし、法案を支持する読者の中には、民族の名誉を守れとばかりに、きつい口調で発言するものもいる。その主張は、Sapargulを襲った愛国者たちの、ロシア各都市で売春をしているらしき若いキルギス人女性を襲撃した、という弁明にも通じる。例えば、Ulanbekは次のようにコメントする [6][ru]。

Абсолютно Правильный Законопроект надо принять!!!Прочитал некоторые высказывания «Дермократов,АДВОКАТОВ» которым кажется что нарушаются гендерные права женщин,и хочу предложить задать себе вопрос «ТЫ согласен чтобы твою дочь,сестренку [воспринимали] как проститутку???»!!!!

«ДЕВУШКИ» у которых «НАРУШАЮТСЯ» права,извините что выражаюсь грубо в праздник,»ТЫ можешь заниматься проституцией сколько Тебе угодно и за сколько Тебе угодно бери хоть по рублю с клиента» НО ТОЛЬКО ПРИМИ ГРАЖДАНСТВО ДРУГОЙ СТРАНЫ НЕ ПОРОЧЬ МОЮ СТРАНУ КЫРГЫЗСТАН!!!

この法案はまったく正しい。採択すべきだ! (法案が採択されたら女性の)権利が侵されるとする「民主主義推進者」のコメントもいくつか読んだが、彼らに聞きたい。自分の娘や妹が売春婦みたいな扱いを受けても、それでもいいというのか。

女たちよ、権利が「侵害」されていると言うが、(「国際女性デー」に)あえて言わせてもらう。好きなだけ売春して、好きなだけ客に請求すればいい。でも、他の国に帰化しろ。恥をさらして、祖国キルギスに帰ってくるな。

「これは性差別じゃないの?」

Elenaは、男女で同じ法律が適用されるべきだと指摘する [7][ru]。

 Это что гендерное неравенство? Пусть тогда и парней до 23 лет не пускают… Пусть лучше дома работают, порядок наводят, заводы строят, дороги… Замуж девушек берут. А то не справедливо получается.

これって性差別じゃない? だったら、23歳未満の男たちも出国禁止にすべきよ。国内で仕事させればいい。働いて、工場や道路を作って、結婚すればいいわ。そうでないと不公平よ。

議論の中でひときわ目を引くのが、Sadanbekov弁護士のコメントだ [8][ru]。Sadanbekov弁護士は、キルギスのような汚職横行の国でこの法案が採択されると、出国を望む女性たちが負う金銭的負担は、賄賂という形で、さらに大きくなるだろうと言う。

А вы не усматриваете здесь нарушение прав человека (девушки)? Под этим соусом погранцы начнут злоупотреблять служебным положением и вымогать деньги со всех девушек. Каждый имеет право на свободу передвижений, на свободу выбора места жительства и выезда. А может быть самой Ыргал Кадыралиевой запретить выезжать за границу? Зачем нам такие парламентарии, которые палки в колеса вставляют и инициируют бестолковые законы? Разогнать надобно такой Жогорку Кенеш! Система парламентаризма в Кыргызстане не оправдала себя.

これが(女性への)人権侵害だということがわからないのか。国境警備員は、法律をたてに、女性たち全員から金を巻き上げようとするだろう。だれにでも、移動の自由、居住地選択の自由、出国の自由がある。おそらくは、Yrgal Kadyralieva議員の渡航を禁止すべきじゃないのか。意味のない法案を通そうとする、こんな議員がどうして必要なんだ。(こんな議会は)解散すべきだ! キルギスの議会制度は期待に応えていない!

また同じテーマを扱った一般市民による討論では、Yuri Puinov(反対派)とBeks Okenow(賛成派)が意見を戦わせると、ツイッター上でも熱い議論が交わされた(ハッシュタグ#kloopdebate)。投票の結果は、Puinovがわずかな差で議論を制した。

議論では、Anisa Atalova (@AnisaAtalova)が次のようにツイートしている [9][ru]。

@AnisaAtalova [10]: А что если девушки не хотят защиты? Кто-то будет спрашивать? #kloopdebates [11]

@AnisaAtalova [10]: 彼女たちが保護されたくないと言えばどうなるの。彼女たちの意見は聞かないの?

Janygul Janibekovna(@janygui)は問う [12][ru]。

@janygul [12]: Безопасность важнее свободы? #kloopdebates [11]

@janygul [12]: 安全は自由に勝るのか?

さらに、Azat Ruziev(@Azat25)は、この法案には思い込みがあると言う [13][ru]。

@Azat25 [14]: Девушки, получается не полноценные граждане… законопроект готовит их стать проститутками #kloopdebates [11]

@Azat25 [14]: どうやら、彼女たちを正当な権利を持つ市民として捉えていない。この法案は、彼女たちを売春婦にしてしまっている。

グローバル・ボイスが6月に女性移住労働者への「愛国」襲撃をとりあげた記事 [1]にもあったように、ロシア在住のキルギス人労働者の30~40%が女性であり、その多くは若い独身女性で、同伴者なくロシアに入国している。

議会の外務委員会は法案提出を支持したが、この法案決議の時期は不明である。

この記事はビシュケクにある中央アジアアメリカン大学におけるGV Central Asiaインターン・プロジェクトの一部です。
校正:Yoshiteru Akiyama [15]