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ボストン連続爆破事件はロシア人に大ショック

(原文掲載日は2013年4月19日で、記事内容は当時の状況を反映しています。訳注のリンクは日本語、他[ru]はロシア語です)

爆弾とアメリカ人の流血は、当初、遠い出来事だったが。ボストンマラソン連続爆破事件は、今やロシア人にとって他人ごとではなくなった。RuNetでは2人の容疑者がチェチェン人と判る前からも、大きな関心を持ってこの事件の調査を追ってきた。ロシアが直接かかわっている今では、いっそう熱く意気込んでいる。

ロシア人というだけでも既に都市でのテロを連想するかもしれないが、この凶暴な過激主義の歴史を持つ元分離主義共和国と関連があるとなれば、多くのありがちな筋書きに直結してしまうのも無理はない。2人の兄弟、タメルランとジョハル・ツァルナエフは恐らく本質的に、純粋なチェチェン人でもロシア人でもないだろうが、それは大して重要なことではない。彼らがキルギスタンで育ったのははっきりしている。そしてダゲスタン(別の北コーカサスの共和国)で一時期教育を受け、その後アメリカに移住し10年以上過ごした。彼らの出身民族のせいで、彼らに結びついた情報ネタは数多い。それらは、リベラル派も、民族主義派も、またクレムリン支持派も、ロシアの政治論に関わっている全ての政党が利用しそうなネタである。

ジョハル・ツァルナエフの写真、彼のVKontakte(訳注:ロシアで人気のSNS)ページより。この写真は、次回冬季オリンピックがチェチェンのすぐそばで開催されるという事実をダークにほのめかすネタになった。ネットで無料配布される作者不明の画像。

ジョハル・ツァルナエフの写真、彼のVKontakte(訳注:ロシアで人気のSNS)ページより。この写真は、次回冬季オリンピックがチェチェンのすぐそばで開催されるという事実をダークにほのめかすネタになった。ネットで無料配布される作者不明の画像。

例えば、チェチェンの指導者ラムザン・カディロフ(彼の父、前チェチェン大統領アフマド・カディロフはテロリストに暗殺された)は速やかにツァルナエフと距離をとり、 インスタグラム [ru](訳注:スマホ上の写真共有アプリ)上でこう言った。

Любые попытки провести связь между Чечней и Царнаевыми, если они и виноваты, тщетны. Они выросли в США, их взгляды и убеждения формировались там. Нужно корни зла искать в Америке. С терроризмом нужно всем миром бороться. Это мы знаем лучше, чем кто-либо.

チェチェンとツァルナエフをどんなに結びつけようとしても無駄だ。たとえ彼らが有罪であってもだ。彼らはアメリカで育ち、物の見方や信念は向こうで形成された。今回の悪の根源を探すならアメリカで探すべきだ。全世界がテロと闘わねばならない。我々は誰よりもそのことを知っている。

カディロフはチェチェン国内で発生したテロとの闘いでの成功事例を一部引き合いに出している。

Aram Gabrelyanov(タブロイド紙『ライフ』の政府支持派の編集者)は、似た文脈で、しかしツァルナエフのアメリカでの育ち方には触れずに、アメリカがチェチェン分離主義を支援しているらしいと非難[ru]している。

Обычное дело для американцев- сначала вербуют, пестуют , опекают своих террористов. Потом они выходят у них из под контроля.

アメリカ人のいつものやり口だ。− テロリストをまず募集して、養成して、面倒を見る。そのあげく手に負えなくなるんだ。

リベラル派も、違った切り口からだが、過去に着目した。ジャーナリストのオレグ・コズイレフはチェチェンを平定したロシアとの紛争こそが、兄弟を過激派に変えた究極の原因だと主張する。コズイレフのツイート [ru]より。

Ну что мы как дети “турецкие граждане”, “жили в Киргизии” и т.п. Ясно же что история так или иначе корнями уходит в нашу войну

我々はまるで子どもだ。あの兄弟が「トルコ市民だ」とか、「キルギスタンに住んでた」とか、そういったふざけた言い訳をするなんて。この話の根っこがチェチェン紛争にあることは明白だ。

Echo MoskvyのVladimir Varfolomeevもまた、ロシアに責任 [ru]があると主張している。

Простите, американцы, что мы тут вырастили и отправили к вам тех, кто, судя по всему, оказался террористами. Было бы нечестно, стыдливо открещиваясь, называть их просто кавказцами. Они наши, российские.

テロリストと判明したらしいやつらを育てて送りこんでしまって、アメリカ人に申し訳ないよ。
恥ずかしいからと彼らとの関係を否認したり、彼らを単にコーカサスの住人と呼ぶのはフェアじゃないだろう。
彼らは我らの同胞、ロシア人だ。

しかし、チェチェンは現時点で自治権があるので、もうロシアとするのは適当でないのではという説もある。
ジャーナリストのNatalia Ossは、似たような反省をしているFacebookの投稿に返信して、こう書いて[ru]いる。

Проблема в том, что паспорт российский в данном случае – чистая формальность. Чечня де-факто – не Россия

問題は、ロシアのパスポートがこの場合完全に形だけだということ。チェチェンは事実上ロシアじゃない。

連帯責任どころか、FSB(訳注:ロシア連邦保安庁)が国内テロを支援しているとの怪情報をもとに、クレムリンの『流血政権』が直接に関与しているのではと疑う人までいる。例えば、あるFacebookのユーザーはこう思いめぐらす [ru]。

У меня сразу ассоциации с делом Навального и терактом в Бостоне как отводящем внимание западных СМИ от репрессий в России. Подобный теракт выгоден Путину сразу по многим причинам. Не исключаю, что за этим взрывом стоит ФСБ России.

ボストンのテロ事件で、私はすぐにナワルニー(訳注:ロシアの反政権ブロガー)の事件を連想した。どちらも何かロシアの圧制から欧米マスメディアの目をそらせるものだ。こうしたテロ行為は、いろんな理由でプーチンに有利になる。FSBが爆破の黒幕だという可能性は除外できない。

興味深いことに、ツァルナエフ兄弟のことがニュースになる前から、ロシアの関与の可能性を口にしていた人たちがいる。
カーネギー・センターのアレクセイ・マラシェンコは、4月16日にはすでに、こう指摘している [ru]。

Обратите внимание: взрыв был двойной, то есть, «кавказского стиля» — мы такого насмотрелись и в Дагестане, и в Ингушетии, да и не только там.

爆発が2回だったことに注目してほしい。これは「コーカサス流」だ。こうしたやり口を、タゲスタンでもイングーシでもその他の場所でも、我々はたくさん見てきた。

ほぼ同じ頃、陰謀マニアのイーゴリ・ボリソフは例のごとく興奮してツイート[ru]している。

Взрывы в Бостоне: трое погибших, 144 раненых … Асимметричный ответ Кремля на “Список Магнитского”?

ボストン爆破で3人死亡、144人負傷…「マグニツキー・リスト」の件に、クレムリンが一方的に報復?
(訳注:「マグニツキー・リスト」人権侵害に関与したロシア人に対する米国のビザ制裁)

こうした妄想ぶりは、もっと最近になってイリヤ・マークマンがFacebook上にコメント [ru]した内容と、ぴったりかみ合っている。

13 апреля Рамзан Кадыров “сдаёт билет в США из-за списка Магнитского”, а через три дня два молодых чеченца взрывают Бостонский марафон.

4月13日、ラムザン・カディロフは「マグニツキー・リストのせいで使えなくなってしまった航空券を米国に返し」、その3日後、2人のチェチェンの若者がボストンマラソンを爆破したのだ。

民族主義派に属する主流のRuNetユーザーの多くもまた、この悲劇を利用しようと企んでいる。ロシアの民族主義者は概して北コーカサス全域の出身者が嫌いだが、中でもチェチェン人を激しく毛嫌いしている。ボストン爆破にチェチェン人が関与していると知ってほくそ笑んだ民族主義派が多いのは、おそらくこのためである。例えば、補助金をつぎ込んでチェチェン人を「なだめ」ようというプーチンの政策を、あるツイッターユーザーが皮肉って[ru]いる。

Американцы такие тупые, что ловят чеченца большими силами. Не проще ли раздать ему и его друзьям золотых кайенов, оружия и бояться их?

圧倒的権力でチェチェン人ひとりを捕まえようとするなんて、アメリカ人はなんてバカなんだ。彼や仲間たちに金のポルシェ・カイエンや武器を与えておいて、彼らを恐れてる方が簡単じゃないか。

民族主義のスプートニク&ポグロム出版も皮肉っぽいジョーク [ru]で、まだ逃走中のジョハルをダゲスタンの総合格闘技選手ラスール・ミルザエフにたとえている。ミルザエフは最近、殺人罪で執行猶予判決を受けた。男性を殴り、殴られた男性が床に倒れて頭を打って死んだためである。(民族主義者はこの事件をロシア法廷の少数民族優遇措置を非難する口実にしている)

ФБР уже заявило, что за теракт в Бостоне Джохару Царнаеву грозит 2 года ограничения свободы максимум. Экспертиза показала, что американцы оскорбили девушку Джохара и его реакция была справедливой, он всего лишь нажал на кнопку детонатора, а бомбы взорвал электрический разряд!

FBIは既に、ジョハル・ツァルナエフがボストンのテロ行為で最大2年の刑期を科されると発表した。
専門家は、この行為はアメリカ人がジョハルの彼女を侮辱したための正当な反撃であり、彼がしたことは起爆装置のボタンを押しただけで、爆発はただ電流が流れただけ(!)との見解を示している。

(訳注:あまりにも軽い刑罰が話題になったミルザエフのニュースのパロディ。被害者はミルザエフの彼女を罵ったため彼の怒りを買い、殴られて頭をぶつけ、数日後に死亡した

スプートニク&ポグロムはツイート [ru]もしており、国々を侵略して改造するのがアメリカの習慣だとほのめかしている。

Этот твит посвящен памяти Чеченской республики. Чеченцы, вы навсегда останетесь в наших сердцах, какой народ был, какой народ…

このツイートをチェチェン共和国の思い出に捧げる。汝らは常に我が心の中に在るだろう、汝がいかなる人であろうとも、いかなる人であろうとも…

「グロズヌイ空港−−近日開港」(訳注:チェチェン共和国の首都)ネットで無料配布される作者不明の画像。

「グロズヌイ空港−−近日開港」(訳注:チェチェン共和国の首都)ネットで無料配布される作者不明の画像。

ロシア語のSNS、VKontakteにジョハルが薄っぺらい内容のプロフィールを載せていたページ [ru]は、もちろん民族主義的レトリックの真骨頂だ。(ジョハル自身は彼のページに、プロフィールに写真を載せた他はたった2本しか投稿していないらしい)
そのページには現在何千ものコメントが残され、そのほとんどが根っから人種差別的なものだ。例えばこんな [ru]。

СКОРО АМЕРИКА СБРОСИТ НЕСКОЛЬКО ТОНН ДЕМОКРАТИИ НА ТВОЙ АУЛ, ГРЯЗНЫЙ ОВЦЕЁБ. РУССКИЕ ВПЕРЁД!

もうすぐアメリカがお前の村に何トンもの「民主主義」を投下するだろうよ、この穢れたクソ間抜け。ロシアよ進め!(最後のは民族主義者のお決まりのスローガン)

こんなの [ru]もある。

Ты зачем Америку взрываешь, гнида черножопая?

何でアメリカを爆破なんかしてるんだ、この尻の黒い寄生虫め。

しかし結局、おそらくほとんどのロシア人が関心をもっているのは、この事件にチェチェン(そしてロシア)が巻き込まれることで起こる現実的な影響だ。この影響とはどんなことだろうか?あるロシアのツイッターユーザーが推測する [ru]。

Сейчас вообще хрен кто американскую визу получит. И так плохо давали последние месяцы(

今となっては、一体誰がアメリカ行きのビザをもらえるっていうんだ。
ここ数カ月だってそうホイホイとはくれなかったっていうのに (´д`)