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日本:警察庁が匿名化システム(Tor)を警戒

カテゴリー: 日本, 市民メディア, 法律, GV アドボカシー

(2013年4月28日更新)当初、警視庁はインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)にTorを遮断するよう促す方針であると報道されていたが、この報道は後に修正された。伝えられるところによると、警視庁がTorユーザーの遮断を促したのは、ウェブ管理者に対してとのことである。

4月18日の報道 [1]によると、警察庁 [2]は、オンライン匿名化システム (Tor) [3]を使ったアクセスを「自主的に」遮断するよう、近々ウェブサイト管理者に求めて行くのではないかと報じられている。警察庁は上の提言を盛り込んだ報告書を公式には発表しておらず、警察庁がこれを実行するかはいまだ定かではない。

1月末に発表された報告書 [4]で「サイバー犯罪捜査の課題と対策」部会委員長は次のように発言している。

例えばTorについていえば、「捜査」そのものから離れて、Torからのアクセスを制限するというようなことを提言して、国民のコンセンサスを得て、政策として展開していく。本部会では、このような観点から議論していきたいと思っています

グローバル・ボイス・オンラインでは、Torのインターネット上での役割について取り上げてきた。Torは言論の自由の制限や監視が蔓延しているオンライン環境で匿名性を保つことで、ユーザーの安全を確保する役割を担っている。

警察庁の提案した方針は、犯罪者が他者を脅かすのに匿名ネットワークを使うことを防止する、自主的な取り組みとなるであろう。それでも、ハッカーグループ、アノニマスはこれに対して警察庁に意見を表明している。アノニマス日本だと主張するChanologyAgentは4月19日、Youtube上に声明動画をアップロード [5]した。

Anonymous emblem. The image has been released into the public domain by its author, Anonymous.

アノニマスのエンブレム。この画像は著者アノニマスによりパブリック・ドメインに公開された。

残念なことは、Torはあなたたちとマスメディアが仕立て上げたいような暗く危険な影のネットワークではないということです。Torは単なるツールです。そしてあらゆるツールと同様に責任を持って使うことも無責任に使うこともできます。

本当のところは、Torのネットワークはチベットのような抑圧的な国の人々が検閲をさけ、外の世界と通信することに役立ちます。また、内部告発者が自身の安全を保ちながら、権力者の非倫理的な行動を白日の下にさらすこともできるのです。Torは正当な目的のために利用可能であり、毎日使われています。

我々の最後の計測では、52のTorノードが日本で作動しており、それらのいくつかは出口ノードでした。これらのノードはそれぞれが全てネットワークの強さと安定性に貢献しています。特に出口ノードは、我々よりも恵まれない国のユーザーのために役立っているのです。

日本でのTorの使用を妨げることで、あなた達はネットワーク全体の強さを弱めてしまいます。抑圧的な体制の中にある人々のための選択肢が減ってしまうのです。 プライバシーというものの重要性が日に日に軽視されていくこの世界で、自国民がプライバシーを守るために使える正当かつ全くもって合法的なツールを奪おうとしているのです。この報告書を撤回し、日本のTorネットワークをブロックするようISPに勧告するのをやめるよう求めます。

ソーシャルネットワークや市民メディアで、ユーザーはこのニュースに対して反応したが、その多くは憤りをあらわすものであった。はてなブックマークでは、ユーザーから、日本のインターネットの「中国化」だと冷ややかなコメント [6]が投稿された。

umeten [7]:もうインターネットじゃないな

別のユーザーであるactivecute [8]は、通信手段が将来果てしなく制限されてしまうかもしれない、と冗談めいたコメントを投稿した。

activecute [8]:今から伝書鳩事業を作っておけば、30年後には…牢屋行きか

arajin [9]:「一方で、中東の民主化運動では政府の弾圧から逃れるため民衆が活用。」国内で起きているのは愉快犯。どちらが重大かは自明。

モバイル開発者のKenjiは、憲法21条 [10]で通信の秘密が保障されていることに言及して以下のようにツイート [11]している。

@needle [11]:警察がプロバイダに対してTor規制を言い出す。遅かれ早かれ言い出すだろうなと思ったら案の定か。露骨に通信の秘密に抵触しといて何が「理解を求める」だ。

テクノロジニュースブログのtechdirt.com [12][en]で、JarHeadと名乗るユーザーはこの方針のネット犯罪の抑制効果を疑っている。

JarHead [13]たとえば、Torを「効果的」にブロックする方法があるとするだろ。ユーザーたちは単純に沈みかけた船を乗り捨てて、新しい匿名ツールに乗り換えるだけだろう。匿名ツールはTorだけじゃないんだから。するとまたそのツールがブロックされるだろ。そしたらまた別のツールに乗り換えるだけ。違法じゃないアクセス経路も含めてすべてブロックされるまでこれは続くだろうな。

警察庁は去年、特定のIPアドレスを使用した市民らが誤認逮捕 [14][en]された事件で批判を受けた。ユーザーがニュースを投稿していくウェブサイト、slashdot.jp [15]では、警察のネット犯罪を取り締まる能力を疑う書き込みが多々寄せられた。

一方で、はてなブックマーク・ユーザーのfesterfesterは、匿名オンライン掲示板は犯罪の温床となりつつある [16]とし、対策が必要だと書き込んだ。

festerfester [17]警察の情報通信関係の捜査のずさんさには心底憤りを感じるけど、だからといって2ちゃんねるなどの悪質な書き込みを放置していいという話は全く別問題のはず。元管理人とかあまりにも無責任すぎると思う。

グローバル・ボイス・アドボカシーでは、日本で話が具体化してきているこの危機について、引き続き注目していきます。日本のインターネットの取り締まりに関して情報や考えがありましたら、@Advoxまでツイート願います。

校正:Hirohito Kanazawa [18]