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中国がすべてのインターネットユーザーの実名登録を検討

カテゴリー: 東アジア, 中国, テクノロジー, 市民メディア, 法律, 言論の自由

先週(訳注:2012年12月18日)、国営新聞の人民日報がインターネット監視強化の呼びかけた [1]のに続いて、新華社は2012年12月24日、中国政府が5億人のインターネットユーザーに対し実名登録を課す新たな法律を検討していると報道した [2]

新華社によると、この法律は誹謗中傷や詐欺行為からインターネットユーザーを「保護する」であろう、とのことである。全人代常務委員会の法制工作委員会副主任のLi Fei 氏は次のように述べた。

このようなID管理は水面下で実施できるであろうし、そのためユーザーは情報公開する際に別の名前を使用することができる。

今年(訳注:2012年)の前半に、中国のミニブログサービス新浪微博の利用に実名登録の導入が求められたが、技術的に 難しいという理由で頓挫している [3]。現在、政府は実名登録を法律に盛り込む予定で、4億人を超える登録ユーザを抱える新浪微博などの中国のソーシャルネットワークサービスに大きな影響を及ぼすであろう。ネット市民の中には、急速に成長する中国のインターネットサービスを規制して個人情報を保護したり、詐欺行為を防ぐことが必要であると考える人がいる一方で、大半のネット市民はこうした動きは言論の自由をさらに制限する方法でしかないと懸念を示す。地元テレビチームは、インターネットのプライバシーについて何人かのwebユーザーにインタビューを行い(Youkuからの画像)、 実名登録への草案について報道している。

地元テレビチームが実名登録への草案について報道。ネットプライバシーに関して何人かのwebユーザにインタビューを行った。(Youkuからの画像) [4]

Local地元テレビチームが実名登録への草案について報道。ネットプライバシーに関して何人かのwebユーザにインタビューを行った。(Youkuからの画像)

法律家の懸念

中国四川省に住む弁護士の廖睿氏は、新浪微博で次のように述べた [5]

廖睿:该议案提出者的直接动因,是近来微博等网络媒体上络绎不绝的反腐败举报。恳请全国人大常委,在审议此议案时,如有涉及限制宪法规定的公民言论自由权利的违宪条款时,能严肃对待,以对国家、民族负责任的态度,投下你自己一票!

廖睿 [5]:この法案の直接の動機は、昨今ソーシャルメディア上に淀みない反腐敗コメントが流れていることである。

私は全人代常務委員会に対し、真剣にこの法案に対処することを強く希望する。なぜなら憲法に規定されている言論の自由に抵触するものであるからだ。国家、国民に対し責任を持って一票を投じよ!

別の弁護士で作家でもある人は、新浪微博で次のように書いた [6]

法客瑾爷:对于保障他人名誉权、防止网络犯罪具有重大意义,但难保不会成为政府干涉言论自由的帮凶。

法客瑾爷 [7]:この法律は極めて重要であり、そのおかげでインターネットユーザの名誉を保護し、サイバー攻撃から守ってくれる。しかし言論の自由に干渉する際、政府と共謀しないという保証はどこにもない。

新浪微博で7万人のフォロワーを持つ弁護士のLiu Xiaoyuan氏は、韓国での実名登録の失敗事例を引き合いに出した。

刘晓原律师: 2012年8月23日,韩国宪法法院做出裁决,8名法官均认定网络实名制违背了宪法。宪法法院称互联网实名制阻碍了用户自由表达意见,没有身份证号的外国人很难登录留言板,此外留言板信息外泄的可能性增大,从这些因素来看,这一制度的不利影响并不小于其公益性。

刘晓原律师 [8]: 2012年8月23日、韓国の憲法裁判所は判断を下した。8人の裁判官は実名登録は違憲であると判断したのだ。 憲法裁判所の見解では、「インターネット実名登録システムによりユーザーの表現の自由が妨げられるであろう」、「住民登録番号を持たない外国人がメッセージボードにログオンすることが難しいであろう」、さらに「メッセージボード情報の漏洩も増えている」と述べられている。こうした要素を勘案すると、実名登録によるメリットよりも、デメリットの方がはるかに上回る。

一般のネット市民はどう考えているか?

东来和西去:我不知道你们立法的初衷是什么?是维护公民的言论自由还是扼杀?

东来和西去 [9]:この法律の意図が分からない。言論の自由を保護するものなのか、規制するものなのか?

扬尘无导:实名没什么可怕,怕的是应言获罪。

扬尘无导 [10]:実名登録は怖いものではないが、オンライン上の言論が罰せられるとなると恐ろしい。

zhang3:原来准备了那么多天的圣诞大礼,是网络实名制。实际也没啥。本来真要找你也是分分钟的事,现在就少走一个程序。短期会让人恐惧,长期会给人勇气,让人有担当。掘墓的,焉知不是为自家准备。

zhang3 [11]: こんな何日間にもわたって用意されたビッグなクリスマスプレゼントが、インターネット実名登録である。実際これは大した問題ではない。いずれにせよ、ユーザーを探し当てることは以前から容易なことであり、今ではもっとたやすいことだ。短期的に見れば怖いものだが、長期的に見れば恐れることはない。墓を掘る人が、将来自分がそこに入るつもりはないなんて、誰が知り得ようか?

游离的世界已经灰白 [12]:网络是悬在官员头上的一把利剑!立法是应当的,关键看这法怎么立?关键是如何处理保护官员与保护公民言论自由孰轻孰重的问题。

游离的世界已经灰白 [13]:インターネットは官僚の頭上にのし掛かる剣のようなやっかいなものである。
規制は必要だが、重要なのは官僚保護と市民の言論の自由の保護の両方にどのように対処するかだ。官僚と市民のどちらが優先されるのか?

北京第二外国語大学教授のZhan Jiang 氏は次のように提唱した [14]

展江教授: 应该首先将《政府信息公开条例》上升为法律,并扩大政府信息公开范围;同时对言论自由制定保护性法律,然后才能进行限制性立法。否则,网络实名制最后可能法不责众,不了了之。

まずは政府の情報公開条例を法律に格上げし、政府の情報公開範囲を拡大すべきである。と同時に規制をかけるような法案を推し進める前に、表現の自由を保護する法律を導入すべきである。でなければ、実名登録は世論の批判を受けてうまく行かないであろう。

この法律が施行されるのかどうか、あるいはいつ施行されるのかは未だにはっきりしない。ここ数週間、政府は海外の仮想ネットワークサービスが通常使用する回線をも遮断している。この回線は検閲規制を巧みに逃れるためのものである。中国のインターネットの規制緩和を望む者にとって見通しは暗い。

校正:Hirohito Kanazawa [15]