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国際的地位向上を狙うロシアの試みは「白象」となるか?

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, ロシア, スポーツ, 市民メディア, 政治, 経済・ビジネス, RuNet Echo

ロシアのプーチン大統領は先週、自身の公式ウェブサイトに投稿した短い動画の中で、2020年万国博覧会のエカテリンブルクでの開催に名乗りをあげた。どういうわけか、プーチン大統領の呼びかけは英語で、字幕もなかった。

ロシアブログ界の多くの人々は大統領の呼びかけが恥ずかしいものであると思い、プーチンはテレプロンプター上の原稿を読んでいるだけで、自分のスピーチ [1][ru]を暗記していなかったことに何人かの人は気づいていた。別のブロガーは彼のアクセント [2][ru]について批判した。

Какой ужасный акцент у него на англ.

彼の英語のアクセントは何てひどいんだ。

Sochi's Olympic Mascot, 21 February 2010, photo by Jennifer Jones, CC 2.0. [3]

ソチオリンピックのマスコット 2010年2月21日ジェニファー・ジョーンズ撮影 CC2.0。

また、別の人は冗談 [4]を言った。

лет ми спик фром май харт. ин инглиш

心をこめてお話します。英語で。

この台詞は以前、スポーツ大臣のヴィターリー・ムトコがかたことの訛りの強い英語 [5]で2018年ロシアで開催のワールド・カップ受諾スピーチを行ったあとに、ネットで多くのひとの目にふれていたものである。

一方、2014年冬季オリンピック開催地であるソチでは、建設費の高騰や増大する不正行為に関するさらなる詳細が明らかになった。反対派リーダー、ボリス・ネムツォフは「亜熱帯での冬季オリンピック ―ソチの腐敗と悪習―」と題してオリンピックに関連する不正行為に関する報告書を公表した(英訳はこちら [6])。ネムツォフはその報告書の中で、オリンピックの予算は現在500億ドルを上回っている、と人々に忠告した。

ネムツォフが公開取材に赴いた際、ロシア開発対外経済銀行(VEB [7])[en]の頭取はインタビュー [8][ru]で次のように語った。オリンピックの建設計画にあてられたローンの多くは資金の回収が不能であり、ロシア国民がその埋め合わせをしなければならないだろう。

LiveJournalのブロガー、Andrei Malginは「白象の災い」と題した、似たような物語 [9][ru]を掲載した [10][ru]。伝説によると、その昔シャムの国王は失脚させたい者に白象を贈っていたとされている。

Белые слоны почитались как священные животные и не должны были работать, но стоимость содержания слона разоряла получателя такого подарка.

白象は聖なる動物としてあがめられていて、労働に携わるべきではないとされているが、象を飼うのに必要な経費が、象を贈られた者を滅ぼしたのである。

これを読んである読者は次のようにコメント [11]した。

А впереди ещё ЧМ-18. Уууу…

そして2018年にはワールド・カップもある。ウゥゥゥ……

2018年のワールド・カップの予算に関するニュースも期待できるものではない。ロシアの財務大臣、アントン・シルアノフは先週、ワールド・カップの白地手形に署名することはできないと語った。さらに彼は、来年のソチ冬季オリンピックを前例として引き合いにだした [12][en]。2018年ワールド・カップの経費に制限を設けるための前例としてである。

その他の主要な行事、たとえばソチオリンピックほどの行事での経験は次のようなことを示している。いくつかの行事では経費の増加問題があるだろうし、また項目の追加がさらに必要となる企画もあるだろうということだ。このようなわけで、現在、追加経費の総額は2500億ルーブルを上限とするのが妥当であろうと我々は考えている。

 

2010年12月、2018年のワールド・カップ主催の特権を勝ち得て、チェルシー・フットボール・クラブのオーナーでもあるロマン・アブラモヴィッチのような寡頭資本家から資金を調達する、とプーチンは堅く約束した。そして「アブラモヴィッチがこれらの計画のいずれかに参加することはかまわない。少し彼の懐から出させよう。彼にとっては大したことはない。痛くもかゆくもないはずだ。彼は大金持ちなんだから。」とプーチンは語った [13][en]。アブラモヴィッチが資金援助をしたかどうかは不明である。

[14]

ジョーカーに扮したプーチンがソチの街を見下ろしながら立ち、ロシアのオリンピック資金を燃やしているところ。2013年6月13日、Petr Leycansによるイメージ画像。

コメント投稿者、Valery Tyukhtin [15]は、国際的地位向上のためのプーチンの企ての背後に、もっと邪悪なものを予見した。

России нужны не PR-акции мирового масштаба, а национальные проекты с реально полезными результатами: внедрение передовых технологий, строительство новых современных предприятий, улучшение ЖКХ и т. п. Но Путин, как какой-то диверсант, придумывает всё новые сверх затратные проекты, от которых не будет никакой пользы народу.

ロシアにはこのような世界的規模での宣伝プロジェクトは不要である。真に役立つ結果をもたらしてくれる国内用のプロジェクトが必要だ。たとえば、先進技術の導入、時代遅れでない新規事業の立ち上げ、住宅および公共サービスの改善などである。しかしプーチンはまるで破壊者のようにこれら超高額の新しいプロジェクトを次々と繰り出してくる。それらはロシア国民に資するところはないだろう。

ロシアは投資に値する国であると示すために、国際イベントを利用する政策をプーチンが推し進め続ける中、ロシアの納税者たちは勘定を支払っているのは自分たち国民なのだ、ということに気づき始めている。

校正:Yasuhiro Hagiwara [16]