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セルビア:樹齢600年のオークの木を守るため立ち上がる

カテゴリー: セルビア, デジタル・アクティビズム, 市民メディア, 抗議, 環境, 行政, 開発

トルコでは、イスタンブールにあるゲジ公園の取り壊し計画によって、この数週間(訳注:原文の掲載日は2013年7月10日)に大規模デモ [1][en]が起きたが、セルビアの人々も同じような戦いに直面している。幹線道路計画では、中央セルビアにある樹齢600年のオークの木を切り倒すことになっていた。しかし連日の抗議運動の結果、政府は圧力に屈して、オークを保存するように建設計画を修正したようだ。

2013年6月下旬 [2][sr]発表の情報によると、回廊11号建設のため政府は公債で3億4000万ユーロ(約450億円)を確保し、さらに7億ユーロ(約926億円)を見込んでいる。回廊11号 [3][sr](訳注:汎ヨーロッパ回廊にちなんで名付けられた)は、中央セルビアを縦断する幹線道路で、長い間待ち望まれた戦略上の重要箇所である。

ところで、幹線道路がゴルニ・ミラノヴァツ近くのSavinac村にある、樹齢600年のオークの木の場所をまっすぐ通るだろう、ということにセルビア人はすぐに気が付いた。計画に反対する動きは速かった。人々はソーシャル・ネットワーク上で反旗を翻し、すぐにSavinac村やオンライン上での抗議活動を計画した。

素晴らしい自然の財産であり、歴史的に重要であることに加えて、オークの木を切り倒すと不幸どころか死にいたる、という迷信がセルビア人の間にある。セルビアの田舎に住む年配者なら、この地方で大いに敬われる自然現象といえるオークの木を、絶対にもてあそぶなと言うだろう。このオークの木が回廊11号の道筋にあることを知っていたなら、国会議員と道路建設の担当者は、解決策を見つけていたかもしれない。しかし、都市計画・建設省のヴェリミール・イリッチ大臣によると、この問題が事前に彼らの「注意を引くことはなかった」そうだ。

セルビアのソーシャル・ネットワークは、ツイッター [4]フェイスブック [5]も、ハッシュタグ#hrast(オーク)を使った市民からの何百もの抗議で、すぐに炎上した。

"In hrast [oak] we trust" became a popular banner held by many at the protest in Savinac and shared on social networks; photo courtesy of Institute for Sustainable Communities - Serbia Facebook fan page.

「hrast(オーク)は我らのより所」は、Savinacの抗議で多くの人に掲げられ、ソーシャル・ネットワーク上で共有されて、流行の標語になった。Institute for Sustainable Communitiesのセルビア支部フェイスブック提供の写真。

ソーシャル・ネットワークで始まり、すぐにセルビアのマスコミに広がった、オークの木の切り倒しに対する抗議に、イリッチ大臣は素早く対応した。樹齢600年、高さ40メートル、幅7,5メートルの巨大な木を移動させる方法を見つけるつもりだ、と彼は述べた [6][sr]。この解決策について異議を唱え、専門家に話を聞いたものの一つに、オンラインタブロイド新聞のTelegrafがあった。

Da bi se taj hrast, te veličine bezbedno iskopao, to zahteva veliki posao, veliki broj radnika i veliki prostor, odgovarajuću mehanizaciju. Teorijski je moguće, ali niko nema to iskustvo, te verujem da bi iskopavanje hrasta bio i njegov kraj. To je sve besmisleno. U zemljama koje drže do sebe takvo drvo bi se “uklopilo” u ambijent – kaže botaničarka Vasić.

この大きさのオークの木を無事に移動させるには、十分に準備して、大変な作業や多くの労働者、広い場所が必要となる。理論上は可能だが、誰も経験したことがないので、私は移動がオークの最後になると思う。まったく、無意味だ。自身の国のものを庇護する国々であれば、そのような木も舞台背景の「一部」だろう、と植物学者Olja Vasić氏は述べる。

大臣とその他の官僚たちが、この問題の別の解決策を探す一方で、Savinacにある木の周りでのデモを市民は計画した。6月の終わり頃、木を守るためその周囲に市民は集まりだした [7][sr]。この土地で生まれたセルビアの詩人ドブリツァ・エリック氏、「セルビアの緑」のような非政府組織(NGO)などが、参加し指揮した。デモは「オークを切り倒してはいけない」と呼ばれた。

"Green of Serbia" activists gather around the 600-year-old oak tree in Savinac; photo courtesy of Insitute for Sustainable Communities - Serbia Facebook fan page.

「セルビアの緑」の活動家は、Savinacにある樹齢600年のオークの木の周りに集まる。Institute for Sustainable Communitiesのセルビア支部フェイスブック提供の写真。

抗議は、2013年7月の初めの週末まで続いた。この問題を議論する会議は、イビツァ・ダチッチ首相の内閣だけではなく、都市計画・建設省でも開かれ、その後、7月9日にイリッチ大臣はオークの木を守るという公式声明を出した。タブロイドの日刊新聞Kurirが、以下のように報道 [8][sr]した。

“Asfalt će biti potpuno odvojen jednim betonskim armiranim nosačem, tako da asfalt ne ošteti žile, a ni žile asfalt. Na taj način će se izbeći moguća oštecenja auto-puta”, rekao je Ilić.

「鉄筋コンクリート梁によって完全に隔てられているため、アスファルトが根を傷付けることはないし、根がアスファルトを傷付けることもない。この方法だと、幹線道路への起こりうる損害が避けられる」とイリッチ氏は述べた。

多くの国より何百年も昔からあるオークの木と幹線道路は、どちらもセルビアにとって非常に重要だ。幹線道路により、農業と製造業が盛んなセルビアの地方に、必要不可欠な物流の解決が約束される。しかしセルビア国民は、これほどまでの犠牲を払う気がないことを示した。

ブロガーのZoran Sokić [9]氏は、セルビアを動揺させたオークの木に関連して、中央セルビアの山地の森で過ごした子供時代を語り [10][sr]、子供時代と成人になってからを大きく変えた3本の木の重要性を指摘し、そして話をこう締めくくる。

Mogu samo da kažem da će se u mom kraju slaviti čovek koji tu dovede auto – put i pominjaće ga na slavama i okupljanjima u lokalnim kafanama, nakon branja malina, bar deset narednih vekova. Stara je lokalna priča, verovatno koliko i taj hrast u Savincima, da smo pravo slepo crevo, da komunisti nisu dali da tuda prodje pruga jer je četnički kraj, da će se sva omladina odseliti ako ne dodje put … Slažem se. Ali sa druge strane, ne bih dao ni jedno od ova svoja tri drveta ni za tri auto puta ili tri pruge.

これだけは言える。私の故郷で少なくとも次の10世紀の間、スラヴァ(家族の守護聖人を祝うセルビア正教会の儀式)でも、ラズベリーを摘んだ後に地元のカフェで行われる集会でも、幹線道路をもたらした男のことを褒め称え、話題に出すだろう。おそらくSavinacのオークと同じくらい昔から、この地方は言われてきた。この地域は行き詰まりだ、チェトニックの領域だったため共産主義者はここに鉄道を通させなかった、幹線道路が来なければ若者たちはみんな出て行くだろう、と。・・・その通りだ。しかし一方で、私のこの3本の木は、1本だって渡さない。たとえ3本の幹線道路や3本の鉄道のためであっても。

校正:Yuko Aoyagi [11]