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イエメンはアラビア半島の南部に位置し、豊かな文化、伝統、歴史を誇る。イエメンの人々はとても親切で、もてなしの心を持った人たちだ。
しかし、そのことがニュースになることはない。
欧米メディアでは、イエメンの負の面が強調され、歪曲されて報道されることが多い。多様なバックグラウンドを持つ国民2400万人が暮らすこの国が、「アルカイダ…戦争、貧困、カート(訳注)、部族主義、あるいはウサーマ・ビン・ラーディンの先祖の地ということばかりが言われるようになった。」 こう嘆くのは、「イエメンに対するメディアの偏った切り口 [1]」という記事を書いたブロガーAtiaf Alwazir (@womanfromyemen [2])だ。
(訳注: 麻薬の一種。飲酒が禁じられているイエメンでは嗜好品として欠かせない)
Today’s journalism on Yemen is no longer about getting the facts right, or inspiring people to think independently, it is about who can write the most sensationalized story on the country – no matter how many times it has already been told – because that is what sells.
今日のジャーナリズムはイエメンについて、もはや正しい事実を把握したり、人々に自立した思考を促したりすることに関心はなく、いかにセンセーショナルな記事が書けるかに終始している。過去すでに何度語られた話であろうと関係ない。なぜなら、その方が売れるからだ。
しかし、現状を変えようと試みているイエメン人もいる。彼らは、映画、写真、ブログ、ソーシャルメディアを活用することで、イエメンが誇る豊かな芸術、特徴ある建築、そして息をのむような風景を世界中の人々に見てほしいと考えている。
イエメンを知ろう
イエメンは世界最古の文明発祥の地であり、その歴史は紀元前1千年紀にさかのぼる。このころのイエメンは、幸福なアラビアを意味する「アラビア・フェリックス」として一般に知られていた。
実際、イエメンには4つの世界遺産がある。まずは、古都サナア [4]。世界最古の都市のひとつで、103以上のモスク、14のハンマーム(公衆浴場)、6000以上の泥レンガ造りの高層家屋があり、その建築様式は独特で、ステンドグラスの窓をはめ込んだ装飾的な外壁が見事である。
サナア旧市街の様子-ユネスコ [5]提供。
二つ目がシバーム [6]。「砂漠のマンハッタン」とも言われ、世界最古の摩天楼として、11階建ての泥レンガ造りの家500棟が立ち並ぶ。
三つ目はソコトラ島 [8]。ソコトラ群島最大の島であり、多様な生物が生息し、島独特の動植物相を構成している。ユネスコによると、「ソコトラ島に生息する植物825種の37%、は虫類の90%、陸生巻き貝の95%は、世界的に見てもソコトラ島にしか生息していない。」
ソコトラ島をひと巡り-ToYemen [9]投稿のYouTube動画。
最後に挙げるのは、狭い路地と焼成レンガ造りの建物が特徴の、美しい海岸の町ザビード [10]。
メディア描写の向こう側
イエメンに対するメディアの偏狭さに対抗するため、オンラインでさまざまな取り組みが行われている。
この20分の短い影像作品は、ブリティッシュ・カウンシル主催のズーム短編映画コンペティション2010 [11]のために制作され、同コンペティションがYouTubeに投稿したものである。この作品は、イエメン人のシンプルな生活を映し出すことで、メディアの歪んだ報道が作り出したイエメン人に対する誤解を正そうと試みている。
イエメンの歴史と伝統について知ってもらうため、ロンドン在住のイエメン詩人Sana Uqba (@Sanasiino [12])は、イエメンを題材にした力強い詩を書き、朗読している。(動画はYemeniah Feda'aih [13]投稿)
私のブログで最も人気のある記事のひとつ「イエメン: 私の美しい故郷、その姿 [14]」では、イエメンのあまり知られていない事実をいろいろ紹介している。例えば、イエメンは世界でも有数の高品質で高価な「ドアン産ハチミツ」 の産地であり、モカ港からは国産ブランドのコーヒーが輸出され、ヨーロッパにコーヒーを紹介した最初の国でもある。
エジプトのカイロに住むイエメン男性Fahd Aqlan [15](35才)は、イエメンに対する誤解を払拭するため、「So you think you've seen Yemen? [16](イエメン、知ってるつもり?)」というFacebookページを立ち上げ、ニュースで報道されないイエメンの姿を世界に発信している。
ニューヨークを拠点とするイエメン人活動家のブロガーSummer Nasser [17]は、「The People of Yemen [18](イエメンの人々)」というFacebookページを立ち上げた。「これはイエメンの生活を伝えるフォトプロジェクトで、投稿ごとに1枚の写真が世界中の人たちに届けられるのよ」とコメントする。
イエメンを応援する声は他にもある。イエメン拠点のジャーナリストAdam Baronは、無人爆撃機に関する特別委員会での証言で、次のように語った [19]。
Yemenis, as a rule, are nearly unfathomably friendly and welcoming.
イエメン人は基本的にどこまでも他人に親切で、惜しみなく歓迎してくれる人々だ。
Word Press Awardを受賞したスペイン人の写真ジャーナリストSamuel Aranda (@Samuel_Aranda_ [20]) は、外国人の視点からイエメン応援の言葉をツイッターに投稿した。
@Samuel_Aranda_ [21]: For who thinks that in Yemen are only extremist. Visit Yemen!!! http://www.youtube.com/watch?v=yNMsm1Fl_X8&feature=related [22]…
@Samuel_Aranda_ [21]イエメンにいるのは過激主義者ばかりだと思っている人たちへ。ぜひイエメンに行ってみたまえ!!!http://www.youtube.com/watch?v=yNMsm1Fl_X8&feature=related [22]…
代表的なイエメン料理
イエメン料理は、せっ器 [23][ja](陶磁器の一種)で調理され、自家製パンとともに出されることが多い。この写真の献立は、典型的な朝食または夕食。そら豆やレバーを使った料理とパン、それにカルダモン入りのミルクティーがつく。
Bint El Sahnはとてもポピュラーかつ伝統的なイエメン料理で、直訳すると「皿の娘」と意味。何層にも重ねた生地を焼き、その上から蜂蜜をかけて出す。デザートではなく、食事のメインディッシュとして食べる。
Yemeni Kitchen [26]はイエメン料理を紹介する素晴らしいブログだ。このブログは、著者も述べているように、「歴史の風味を添えてイエメン料理を紹介」している。料理のレシピをひとつひとつ説明するだけでなく、その歴史的背景にも触れている。
イエメンの音楽とダンス
イエメン北部の伝統的なダンスはBara'aと呼ばれ、イエメン独特の短刀(Janbiya [27])を手に持ち、素早い動きで、太鼓と笛(muzmar)の演奏に合わせて踊る。以下の動画は、若者らの踊る様子を映している。(GTB313 [28]投稿によるYouTube動画)
南部に行くと、Hardamoutとよばれるダンスと音楽があり、Yemen Reform [29]が投稿した以下の動画 [29]で見ることができる。
イエメンのさまざまな歌とリズムを聴くには、以下のリンクをたどってみるとよい。Ayoub Tarish [30]はイエメンの有名な歌手で、作曲家でもある。Yemen Reform [31]は、Alharethi、 Alanessi、 Alkebsiら、イエメンの歌手のパフォーマンスやイスラム歌謡(Nasheed)のYouTube動画を提供している。さらに、Asswat Yemenia [32](イエメンの声)では、Abu Bakr Salem Balfaqih、Ali Thahban、Mohammed Morsehd Najiらの歌を聴くことができる。My Diwan [33][ar]にはイエメンソング最大のコレクションサイトがある。Ahmed Fathi [34]はイエメンの傑出した音楽家であり、歌手、作曲家、ウード [35][ja]演奏家である。
美術、写真、風景
次のTourYemen [36]投稿の動画では、イエメンの美術や文化、それに息をのむほど美しい風景を見ることができる。(訳注:別動画に差し替えられています)
tomeriko [37]投稿のYoutube動画でも、イエメンをパノラマ映像でめぐることができる。
写真家のAmeen Al-Ghabri [38]とAbu Malik [39]のFacebookページを訪れると、さらに息をのむような写真の数々を観ることができる。
最も有名なイエメン人画家として、 Lamia Al-Kibsi [43]、Fouad Al-Foutaih [44]、Mazher Nizar [45]らがいる。こちら [46]とこちら [47]のページで、彼らの作品を多数観ることができる。
欧米メディアではなく、The Yemen Times [48]やLa Voix du Yemen [49]など、イエメン発のメディアをチェックして現地の文化や社会の話題をフォローしよう。