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マンデラ氏追悼式、手話通訳者が偽物!?

カテゴリー: 南アフリカ, ユーモア, 市民メディア, 政治, 言語

(記事中のリンク先はすべて英語のページです)
90か国以上の首脳 [1]が参列したネルソン・マンデラ元大統領の追悼式では、失策までも平等に分け合ってしまった。南アフリカ共和国のジェイコブ・ズマ大統領、アメリカのオバマ大統領、イギリスのキャメロン首相、デンマークのシュミット首相 [2]は、式典の最中に「自分撮り」をしたことで批判を受けた [3]。さらに、その会場には偽物の手話通訳者がいたのだ!

そう、マンデラ氏の追悼式で手話通訳をしたタマサンカ・ジャンティ氏は、偽の通訳だった。手話の内容はすべてでたらめ。エディンバラのヘリオット・ワット大学で通訳翻訳研究部部長を務めるグラハム・ターナー教授は、ろう者向けのニュースサイト「Limping Chicken [4]」で、以下のように指摘した [5]

He didn’t use South African Sign Language. In fact, he didn’t use any language. What he produced there was 100% authentic gibberish.Lost 

彼は南アフリカの手話を使っていなかった。実際のところ、何の言語でもなかった。彼がしていたことは、100パーセント間違いなく意味不明だった。

タマサンカ・ジャンティ氏は、天使が見えたり [6]複数の声が聞こえたりする統合失調症の症状 [7]に見舞われていたせいだ、と主張した。

そのうえ、世界各国の首脳たちから数メートルのところに立っていたこの「手話通訳者」は、2003年に殺人の嫌疑を掛けられていた [8]という疑惑が浮かび上がった。

南アフリカ共和国政府は、この手話通訳者のせいで不快な思いをしたすべての人々への謝罪を表明した [9]

南アフリカの作家Sarah Britten氏はThought Leader [10]のブログで、南アフリカでは仕事を得るのに何の能力も必要ないということが偽の手話通訳者によって世界に知らされた、と述べた [11]

In South Africa, the signing man told the world, you don’t actually have to know what you are doing in order to get a job. You don’t have to have any ability whatsoever, as long as it looks, to most, as though you can go through the motions — whether you are a teacher, a police officer, a bureaucrat, a government official or (as some have suggested) a state president.

There are those who see through you and complain, but they are ignored. Ours is not a culture of accountability. So one gig leads to the next. You’ve done it before so you get to do it again, because everyone in a position of power agrees that the emperor’s new threads are stylish. You stand there and tell us that the appearance of something becomes more important than the substance of it.

あの手話男が世界に向けて語っていたように、実は南アフリカでは、自分が何をしているのかわからなくても仕事に就けるのよ。何の能力も必要なくて、たいていの場合、やってる振りをしておけばよし。教師だろうと、警察官、役人、官僚や(指摘されているように)大統領だろうとね。

正体を見破って文句を言う人もいるけど、どうせ無視されるわ。この国には説明責任の文化が存在しないから。そうやって1回仕事をすれば次につながる。あんたたち、そんな風に仕事を続けて繰り返してきたんでしょ。だって地位のある人たちはみんな、王様は裸だなんて言わないもんね。そして、あんたたちはそこに立って、国民に訴えるのよ。本質よりも見た目が大事ってね。

ジャンティ氏がどう訳していたのか気になる人は多いだろう。ネット上には、ジャンティ氏の手話を解説する通訳者たちが現れた。偽の手話通訳者がほんとうは何と言っていたのか明らかにすべく、YouTubeユーザーのThis is Genius氏が投稿した愉快な動画はこちら。

グラハム教授は、偽通訳者事件から得た10の教訓をリストアップした [5]

1. Using a sign language fluently is not something one can do just by waving one’s hands around. Sign languages are grammatically-structured, rule-governed systems like all other natural human languages. You can’t produce meaningful signing off the cuff and – equally importantly – you can’t understand it spontaneously just by looking.

2. If you can’t sign, but require interpreting, you need reliable processes to help you identify effective provision. Interpreting isn’t a game: it should be run on a professional basis. This time, we saw a spectacular insult to the world’s Deaf people: but no-one died. Worldwide, every day, the result of inadequate interpreting leads to poor schooling, imprisonment, unemployment and health disparities. This must stop.

3. Without proper training, screening and regulation, people can and will take advantage. Even in countries like the UK, where sign language interpreting has become increasingly professionalised since the 1980s, smooth operators (who can talk the talk but not sign the sign) are legion. If you can’t sign, they may appear wholly plausible and be wholly bogus. Don’t guess and you won’t be fooled.

1. 適当に手を振り回しても、流暢に手話を使いこなしていることにはならない。手話は他のあらゆる自然言語と同じように、文法的に構造化され、規則に支配された形式を持つ言語である。思いつきで意味ありげな手話を作ることはできないし、同じく重要なことに、勉強もせず見ただけで理解できるものでもない。

2. 手話がわからなくて通訳を要求する場合は、信頼性の高い方法で有効条件を確認する必要がある。通訳はゲームではない。仕事として行われるべきものだ。今回我々は、世界のろう者に対する驚くべき侮辱を目の当たりにした。が、人が死んだわけではない。世界中で日々、通訳が不正確であるがために、教育の質が下がったり、投獄されたり、失業したり、健康格差が生まれたりしているのだ。こうしたことは、何としても阻止せねばならない。

3. 適切な訓練を受けず、審査や規程などをすりぬけて、うまく立ち回る者はいるし、これからも出てくるだろう。1980年代から手話通訳者の職業化が進められているイギリスのような国でさえ、要領のいい者(口ばっかりで手話はさっぱりなタイプ)はたくさんいる。手話ができない人にはそれっぽく見えるだろうが、まったくの偽物だ。疑ってかかれば、だまされることはない。

Twitterでは、怒ったユーザーたちがハッシュタグ#fakeinterpreter [12](インチキ通訳)を用いて、今回の問題に対するそれぞれの意見を交換した。

インチキ通訳(#fakeinterpreter [12])で大騒ぎだけど、この国はインチキ大統領のもとで4年経っても、何の問題もないじゃないか。

ニュース速報:インチキ通訳(#fakeinterpreter [12])がオバマ大統領に対して暴言を吐きました。クリスマス休暇をもらえなかったことが原因とのことです。

実は、インチキ通訳はこう言っていた。解読・@Julius_S_Malema。

タマサンカ・ジャンティ氏が学んだのは、絵文字研究所(IOE)。

2012年に投稿されたYouTubeの動画によると、どうやらジャンティ氏は以前にも同じようなことがあったらしい。

それで、子どもたちにはどう説明したらいい? 大人になってもインチキ通訳(#fakeinterpreter [12])にはなるなって? 子どもの夢が台無しだよ。

こんなにたくさんの起訴が取り下げられたなんて、このインチキ通訳者(#FakeInterpreter [22])は次の大統領候補だな。

殺人やレイプ、窃盗等の罪に問われていた人物が、オバマ大統領にあんなに接近できるなんて、セキュリティは大丈夫なの?

「ズマ大統領にブーイングしろって聴衆に合図を出したんだよ……やるじゃん……!!!」 ……アハハハ :) インチキ通訳(#FakeInterpreter [22])タマサンカ・ジャンティ

:””D “@iRep_YungEmpire [26]: くだらん :””D “@AbortedNews [27]: 実は、このインチキ通訳(#fakeinterpreter [12])は、電子料金徴収システムを回避できる抜け道のヒントを教えてくれてるのかもよ。

非常に偽善的。このインチキ通訳(#FakeInterpreter [22])のおかげで、みんなが突然ろう者社会を気にかけるようになったんだ。手話がわかる人なんてどれだけいる?

何てことだ、ネルソン・マンデラ氏の思い出が、いかさま手話野郎のせいで汚されてしまう。追悼式のどの写真にもあいつが写っている!

インチキ通訳者(#fakeinterpreter [12])は、サラ・ペイリンと仕事をするべきだ。いずれにせよ彼の手話は意味不明だろうが、少なくともそれで正しいことになる。

校正:Kyoko Tashiro [32]