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孤独な中国人男性は愛を求めてベトナムをめざす

カテゴリー: 東アジア, ベトナム, 中国, 女性/ジェンダー, 市民メディア, 法律, 経済・ビジネス

「中国本土では恋愛に縁がない?じゃあベトナムに行きませんか?ベトナムなら中国人独身男性は“本物の愛“を見つけることができます。もっとはっきり言うと、ベトナムなら結婚の前提にアパートや自家用車を要求したりしない花嫁を見つけることができるのです。」これは、共同購入による割引で有名な中国のウェブサイト、窝窝团(55tuan.com [1])が昨年11月11日の「独身の日」を記念して、独身の中国人男性向けにベトナム旅行プレゼントを企画した際の宣伝広告である。

中国人女性との結婚費用がますます高くなってきている中、中国の独身男性はますます海外に伴侶を求めるようになっている。これは中国人女性の新婦側の家族が娘を嫁に出す代償として新郎側に高額な贈り物を要求する場合が多いこと、また中国の性別人口比が男性に比べて女性が顕著に低いという不均衡から生じている。この窝窝团(55tuan.com [1])が企画したベトナム旅行プレゼントにも2万8,629人から応募が集まった。

The lottery advertisement on November 11, 2013. [2]

A11月11日の「独身の日」を記念して、ウェブサイト窝窝团(55tuan.com)が独身の中国人男性向けにベトナム旅行プレゼントを企画した際の宣伝広告

中国の、競争が激しく高額な結婚市場

ここ数年、中国のこの高額な結婚費用に対して、ますます多くの男性がウェブ上で不満を表明するようになってきた。中国では結婚に際して、新婦の家族が新郎に対して、自分たちが要求する具体的なリストを作成することが習慣となっている。アパートや自家用車、また安定した高収入の職に就いているといったことが新婦側が望む条件のトップに並んでいる。しかし現状では平均的収入の独身男性が自分の収入だけでアパートを購入するのはもはや不可能に近い。

これとは対照的に、ベトナム人女性との結婚にはたった数万元 [3](約数千米ドル)程度の出費で済む。この金額ならば普通の独身男性にも支払い可能だ。加えて、ベトナムの女性は働き者で質素で家庭的だという一般的に良いイメージもある。

前述した中国の性別人口の不均衡も結婚市場で花嫁が不足している原因になっている。 凤凰网(ifeng news)ニュースの記事 [4] [zh] によると、現在の性別人口比は全国平均で男性119に対して女性100であるが、地方によっては130対100のところまである。この不均衡の背景には、女児より男児を重んじる中国の封建的文化がある。これにさらに国策の「一人っ子政策」、および妊娠初期段階で性別が判別できる現代の医療技術が加勢して、新生児の男女比率は極端に男児が多い「いびつ」な結果になっている。 たとえば第5次人口調査 [5] [zh]によると湖北省武穴 (Wuxue)では男児198.3に対して女児100という結果が出ている。

一方ベトナムでは近年まで状況が逆であった。つまり女性の人口比が男性を上回っていたのだ。しかしこのところ男性の人口が若干女性を上回る傾向が出てきた。ますます多くのベトナム女性がより豊かな生活を求めて外国人と結婚をするようになってきたことが、さらにこの傾向を加速させている。 今世紀に入ってここまでで 29万4000人の比較的貧しい地域に住むベトナム女性が外国人と結婚した [6] [zh]。なかでも中国人、韓国人が結婚相手として特に好まれている。

こういう状況と裏腹に、ベトナム、中国間の 国際結婚詐欺 [7] [zh]も増えてきた。 中国に到着するやいなやベトナム人新婦が中国人新郎の前から失踪するケースが増えている。なかには結婚仲介業者自体が詐欺に関わっているケースさえある。 この状況を受けて、中国国家公安部は営利を目的としたベトナム人花嫁紹介サービス業への厳しい取締りを開始する [8] [zh]と発表した。

「費用が安上がりな外国人女性と結婚するのは当然ではないでしょうか」

こういった状況を背景に、上述した窝窝团(55tuan.com [1])の広告はインターネット上でも大いに議論を巻き起こした。当事者の窝窝团(55tuan.com [1])は、「同社ウェブサイトはただ単に幸運な中国人男性にベトナムへのグループ旅行を提供するくじ引きを企画しただけだ、もし(当選者たちが結果的に)結婚に至ったとしても、それははあくまで当事者間の愛情に根ざしたものだ」と自己弁護 [9]している。

国際社会では、国際結婚仲介サービスやメールオーダーブライド(訳注: インターネット上に掲載された女性の写真と経歴のカタログから男性が花嫁候補を選ぶ)は人身売買の一形態で不道徳だとみなされるが、中国人ネチズンたちの多くは、中国公安当局による今回の国際結婚仲介サービスへの取り締まりに対して、中国版ツイッターの新浪微博(Sina Weibo)上で反対 [10]を表明している。

作家の尚建国(Shang Jianguo) [11]は、中国の消費者がベトナム人花嫁の「共同購入」を望むのは、悪化する一方の中国の性別人口の不均衡が真の原因で、これが結婚市場に悪影響を与えているからにほかならないと確信している。

团购越南新娘折射剩男问题。第六次人口普查数据显示,80后非婚人口男女比例为136:100,70后非婚人口男女性别比例206:100。30-39岁男性中有1195.9万人处于非婚状态。同龄女性中有582万人处于非婚状态。

このベトナム人花嫁の「共同購入」という現象は売れ残り男性という社会問題を反映しているのだ。第6次人口調査によれば80年代生まれ以降の世代では独身男女の人口比は男性136対女性100、70年代生まれ以降の世代では206対100となっている。現在30歳から39歳の男性のうちいまだ1195万9000人の男性が独身であるのに対して、女性で独身なのはたった582万人である。

結婚年齢になった@Zhazi77 は将来に不安 [12]をいだき始めた。

作为一个研究森不知道能不能毕业,毕业能不能找得到超过两千五一个月工资的穷人家的小孩,我要是能在三十五岁之前结婚就真的感谢全世界了。

現在大学院の学生です。貧しい家庭に生まれたため、卒業しても月に2500元(約400米ドル)以上稼げるかどうかわかりません。こんな事情なのでもし35歳前に結婚できれば万々歳というところでしょうか。

IT ビジネスミニブロガーのJiu Hengxingは、結婚は一つの経済制度なのだから結婚費用が安上りの海外に花嫁を求めるのは賢明である [13]と述べる。

在大城市里,没有房子、车子,相亲成功概率低,就算姑娘同意,还要过丈母娘这关!随着国内结婚成本的增高,一些中介抓住了空子,比国内结婚更省钱又能娶到国外老婆,有何不可?

今、大都市に暮らしていて、アパートも車も持っていなければブラインドデートをしても花嫁を見つけるのは難しいでしょう。もし相手の女性が積極的に結婚したくても、彼女の母親とやりあわなければならないのです。結婚費用が増加している中国の現状では、安上がりな外国人女性との結婚に向っても当然ではないでしょうか?

このように中国では結婚は不動産業の成長と結びついているため、「Big eye brother」(訳注: 中国政府、警察を暗に揶揄)は、警察による今回のベトナム人花嫁「共同購入」への取り締まりの動きを、不動産業者の利益を代弁したものだと嘲笑している。

当然要严打,都去娶越南新娘了,内地的房地产经济怎么办?

もちろん警察は「ベトナム人花嫁仲介サービス」の取り締まりを遂行しなくちゃならない。なぜなら、もし中国人男性が全員ベトナム人女性と結婚してしまったら中国本土の不動産業はどうなるんだい?

しかし、ジャーナリストのYuan Yi [14]は、結局このような関係は長続きしないだろうと述べている。

看完纪录片对越南新娘嫁到台湾全程有了解,因为贫富悬殊很多越南美女嫁往台湾内地。异国婚姻克服文化习俗差异才能长久。

台湾のベトナム花嫁に関するドキュメンタリーを観て、ベトナム人女性との国際結婚についてその全容を知りました。中国人、台湾人と結婚するベトナム人女性の動機の多くは(貧しさから逃れて)豊かな生活を求めるためなのです。しかし、国際結婚が長続きするかどうかは結局お互いがお互いの文化の違いを乗りこえられるかどうかにかかっているのです。

校正:Satomi Sakuragi [15]