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ハイチ地震の後に建てられた復興住宅。実際の住民は誰なのか

この記事はハイチ・グラスルーツ・ウォッチ(Haiti Grassroots Watch)が2014年1月8日に配信した記事を編集・要約し、記事共有協定の一環としてグローバルボイスに再掲するものである。

2010年1月12日の地震から4年経過した。しかし、ルネ・ガルシア・プレヴァル前大統領およびミシェル・マテリ現大統領が策定した主だった4つの震災復興住宅事業については、今も疑問がつきまとっている。この事業で建てた住宅には誰が住んでいるのか。誰が管理しているのか。居住者は家賃または住宅ローンを払うことができるのか。居住者は震災被災者なのか。

ある推計によると、この大災害により一夜にして約20万人が亡くなり、130万人が家を失った。しかし、この新規震災復興住宅事業は必ずしも震災被災者に十分な住宅を供給したとはいえない。20万人以上の被災者がなお、テント生活を送ったり、またはカナーン、オナビル、およびエルサレムと呼ばれる新たにできた三大スラムで生活している。

Empty homes at the heart of the Lumane Casimir Village. Photo: HGW/Marc Schindler Saint-Val

Lumane Casimir村中心部の空き家群
 写真:HGW/Marc Schindler Saint-Val

ハイチ・グラスルーツ・ウォッチは、20回以上のインタビューその他現地取材を含め、多数の調査を行った。その結果、新しく住居を確保できた家庭もあるものの、その内の多数というよりもおそらく大多数は、必ずしも震災被災者ではないということが明らかになった。また、多数とはいえないもののいくつかの家庭は、不十分な行政サービスや絶え間ない蛮行、盗難、および廃棄物投棄に悩まされている。

高価すぎる住宅

2011年7月21日、 マテリ大統領、ビル・クリントン元米国大統領、および当時のジャン=マックス・ベルリーヴ首相は住宅展示場を開設した。Zoranjeにあるこの展示場には約60の特色ある見本住宅が展示されている。

ハイチ復興暫定委員会(Interim Haiti Recovery Commission)が最初に承認した展示施設の一つでは、その展示物に公共復興資金のうちの2百万ドル以上を費やした。ハイチ国内外の建設会社および建築事務所もまた少なくともさらに2百万ドルを消費した。その目的は震災復興住宅建設に携わる政府機関および商社に見本住居を示すことであった。

誰もがこの展示会は失敗だったと認めている。会場を訪れる人はまれであった。また、見学者が復興住宅の建築時に見本住宅の一つでも取り入れた事例はさらに少なかった。見本住宅の多くはハイチ人の生活水準から見ると高価すぎるのである

ハイチ国UCLBP(Unit for the Construction of Housing and Public Buildings:住宅建設および公共建築部)の David Odnell部長によると、3つの政府機関のうち一つは住宅問題に絡んでいたということである。

There were some really odd examples. Some of them had nothing to do with the way we Haitians live or think about housing. It was a completely imported thing.

展示施設の中には実に変てこな事例がいくつか見られた。例えば、我々ハイチ人の生活様式とは無縁のものや、ハイチ人が住居について持っている考え方とはほど遠いものがいくつか見られた。こういったことはことごとく海外から持ち込まれたものだった。

今日では、朽ちかけてひびの入った住宅が雑草や山羊に囲まれて、何十人もの不法居住者の住処となっている。

両親が「借家人」という妊娠中の若い女性は、下記のように述べた。

All the houses have new owners. They have been taken over.

全ての家屋には新しい所有者がいる。家屋は彼らに乗っ取られてしまったのです。

A woman cooking in front of a model house on the Expo site.  Photo: HGW/Marc Schindler Saint-Val

展示施設の見本住宅の前で調理をする女性。
写真:HGW/Marc Schindler Saint-Val

上記の妊娠中の女性の家の「所有者」だという若い女性は子供と一緒に近くに座っていた。この二人の女性は二人とも名前を明らかにしないようにして欲しいといっていたが、所有者だという女性は喜んで自分にまつわる話を語った。

I didn’t follow any procedure got get this. I just took it. My brother was the security guard here. Nobody asked us to pay anything and nobody said anything. And in any case, who would we pay?

この家を手に入れるために手続きなんて踏んでいないわ。ただ、手に入れただけだわ。私の兄はここでガードマンをやっていたわ。家の代金を払えなどと誰も言わなかったし、誰も何も言わなかったわ。一体全体、誰に払えばいいの。

政府のコンサルタントだけでなく少なくとも4人の居住者によると、不法居住者は皆、元々 Zoranjeに住んでいた人たちだということである。多くの居住区域の家屋は今、賃貸に出されている。

2013年11月のインタビューで、Odnell建築部長は認めている。

Yes, that’s possible, and you know why. There is a void…and there is no authority there. But [the project] is not exactly a waste. I could call it poor planning, because the houses can always be recuperated.

確かにそういったことは有りうることです。その理由はご存じの通りです。欠陥が有るのです…、また、管理する組織が整っていないのです。しかし、この震災復興住宅事業は必ずしも浪費とはいえません。計画がお粗末だったと言えばそう言えないことも有りません。なぜなら、見本住宅は常に修復工事が行われる可能性が有るからです。

政府のFAES(Fund for Social and Economic Assistance:社会経済支援基金)の職員で、Odnell部長と同じ立場にあるPatrick Angladeもほぼ同様のことを言っている。

Aside from the inauguration week, the project has been forgotten. Nobody goes over there because nobody was really managing the project. The entrepreneurs left and nobody promoted the houses. It’s a problem that can be solved, but we have to figure out how to do that.

この展示会はスタートした週は別として、もう忘れ去れてしまいました。この展示会の運営に携わる人は実質的に誰もいないので、誰もここにはやってきません。興行主は去ってしまい、住宅を宣伝する人は誰もいなくなってしまいました。こういった状況は解決できるはずです。そして、我々はその解決策を見いださなければならないのです。

不法居住者が占拠

もう一つの新事業が道路を隔てて震災復興住宅事業の向かい側で行われている。この事業では、128棟の共同住宅がベネズエラ政府から(政府発表の数字によると)490万ドルの出資を受けてウゴ・チャペス同国大統領の任期中に建設された。この共同住宅は通常「Kay Chavez yo」-「チャペス住宅」と呼ばれる

耐震設計で、スポーツタイプの寝室二間、浴室、リビングルーム、それに台所があり、鮮やかに色彩を施された住宅の多くは、今日ではドアをぶち破り侵入してきた人たちに占拠されている。128棟のうち42棟だけに「正規の手続きを踏んだ」居住者が住んでいる。これらの居住者はベネズエラ大使館の招聘を受けて入居した家族である。15ヶ月間空き家だった 何棟かは取り壊された。作り付け家具、トイレ、流しその他水道ポンプなどの住宅設備類は盗まれたしまった。

居住者はもう既にドアを替えたり、窓を取り付けたり、門や塀を作るなど家屋に修正を加えている。

One of "The Chavez Houses". Photo: HGW/Marc Schindler Saint-Val

「チャペス住宅」の一例 写真:HGW/Marc Schindler Saint-Val

隣人に囲まれ、Jules Jamleeは壊れたいすに座っている。その位置から道路を隔てた向こう側には部屋を増築中の住居がある。彼は、隣人たちと同様に「自分の」住居の所有権にこだわっている。

The president knows very well that we are revolutionaries. He might make threats but he knows we don’t agree with them.

大統領は我々が革命家だということをよく知っている。大統領は我々を脅すかもしれないが、我々はそんなものに動じないということを知っている。

住宅開発にはなお水不足がつきまとっている。そのため、水を十分に使えないので、トイレがまともに機能しないと居住者は不平を漏らしている。多くの居住者は生理的欲求を処理するために、トイレの代用として近くの草むらを利用している。

ハイチ・グラスルート・ウオッチが2013年6月同地区を訪れ、同記者団が10人の住民に聞き取り調査をした。その結果、6人が水を確保するためにバケツを持って行くということが分かった。また、4人がトイレは機能していないと話した。

粗末な建築物

マテリ大統領が100日のうちに400棟の住宅を建設すると公約したことで、400%プロジェクトまたは「100日に400棟」プロジェクトとして知られている事業がある。この事業は米州開発銀行から約3千万ドルの資金提供を受け2012年2月27日に発足した。この開発地には、延長3kmの舗装道路、水道(ごく最近まで給水量は不足していた)、電力供給、街灯およびバスケットコート付きの公園が計画されている。

しかし、ここに新しく入居した全ての人が震災被害者というわけではない。多くは行政機関の従業員である。当初は入居者ラッシュが有った。しかし、この事業には複雑な障害もいくつか存在している。なぜなら、住宅は贈与されたものではないからである。入居者は5年間の住宅ローンを払わなければならない。

住宅ローンの支払いは月々39ドルから46ドルの間である。契約書によれば、「賃借人/受益者が3ヶ月連続して支払いを怠った場合は、賃借人/受益者に対し支払いを怠った月毎に5%の違約金を科す」とし、また、「支払いの滞納により退去させられることも有りうる」ということである。

この契約書は多くの不満の種となっている。二人の子供の父親であり、目下失業中のYves Zephyrは2012年11月からこの開発地に住んでいるが、彼は次のように述べている。

The president did not give us a house. He is selling it to us. They are too expensive. What can a person do in this country where there is no work? How can one find 1,500 gourdes (US $39) each month?

大統領は我々に住宅を与えてくれなかった。彼は住宅を我々に売りつけている。でも、住宅は高価すぎる。仕事もないのにこの国で俺たちに何ができるというのだ。毎月1500グールド(39ドル)をどうやって稼ぐんだ。

FAESはいくつも問題に直面していることを認めている。

We are not achieving 100% payments, not even 70%. At least 30% are behind.

100%の貸付金回収は達成はしていない。70%でさえ難しい状況だ。少なくとも貸付金の30%は回収できていない。

ハイチ・グラスルート・ウオッチが実施した小規模な聞き取り調査の結果、居住者の中に、なぜローンの返済が遅れている者があるのか、その理由が分かった。聞き取り調査を行った10人の居住者のうち半数は、自分たちは失業中だと語った。

このプロジェクトを発足させたとき、政府は用地確保、住宅建築、および電力系統の立ち上げのために融資を受けた。しかし、水道、浄化槽の清掃、市場、学校、診療所および中心街へ行くための手頃な料金の交通手段といった住宅開発に実際に必要なサービスは融資の対象となっていなかった。UCLBPのOdnell部長は下記の通り述べた。

The unused toilet of one resident, who said the septic system  is not deep enough. Photo: HGW/Marc Schindler Saint-Val

使用されていないトイレ。ここの居住者の話によると、浄化槽の深さが不十分であるとのことである。写真: HGW/Marc Schindler Saint-Val

We have space for all the necessary services. They were all in the initial plan, but we couldn’t achieve all of them. In the end, we could only build the houses. We were only able to put in the water recently, once we looked for and got the necessary financing.

UCLBPは全てのサービスに必要な用地を確保している。これらサービスは当初の計画に全て含まれていた。しかし、全てを達成することはできなかった。結局、住宅を建てることができただけだった。かつて、融資を求めそれを確保したのに、我々は最近になって水道を設置することができたに過ぎない。

多くの居住者は新しい住宅が確保できて満足していると言うが、一方では問題もあった。雨のたびに雨漏りがする住宅もあった。また、電気が通るのはまれであるとも言っていた。居住者が引っ越してくる前に破壊されていた家もいくつかあった。例えば、ブリキ屋根やトイレがなくなってしまっていた。何軒かの家の浄化槽も問題の種となっている。

難局に積極的に立ち向かうのか?

ハイチ政府は多数の課題に直面していることを認めている。15万人ほどの震災被災者は今も約300のキャンプで生活している。またこのほかの5万人は新たに無秩序に広がっているカナーン、イナビルおよびエルサレムと呼ばれるスラムに住んでいる。UCLBPおよびCCCM(Camp Coordination and Camp Management:収容所調整管理委員会)/Shelter Clusterからの2013年10月の報告書によると、収容所の半数は下水施設がなく、また水道施設があるのはわずか8%ということである。100以上のキャンプに居住する者には強制退去という危機が差し迫っている。12月には、126家族が Lumane Casimir村のカナーン・キャンプ内の住まいから退去させられた。

政府によると、農村部や小さな町を離れ都市部へ人口が流入する結果、住宅関連の赤字額は増加するばかりであるということである。

UCLBPの新住宅および都市計画方針(PNLH:Policy of Housing and Urban Planning)によると下記の通りである。

Haiti needs to meet the challenge of constructing 500,000 new homes in order to meet the current and housing deficit between now and 2020.

ハイチは現在抱える住宅関連赤字を、現時点から2020年までの間に解消するために、50万戸の住宅を新築するという課題に取り組む必要がある。

この新方針は意欲的であるが曖昧である。方針書で語られている文言には、政府は民間企業との協力関係を築くことで赤字解消を探るということが暗に示されている。こういった種類の方向付けは必ずしも直ちに否定すべきものではないが、すでに、Lumane Casimir村の事例、400%プロジェクトの事例、およびチャペス住宅の事例が示すように、政府はハイチ国民の大多数の手に届くような公共住宅を建設するつもりはもはやないようだ。