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写真:パキスタンに設置された巨大アート、米国無人戦闘機の操縦士に訴える

カテゴリー: 南アジア, パキスタン, 人権, 市民メディア, 意見, 戦争・紛争, 芸術・文化
From the campaign's website. Photo meant for press use. [1]

上空から見た少女の写真。#NotABugSplatキャンペーンのウェブサイトより。プレス用写真。

パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州では、地元住民の協力のもと、反無人機運動を行う美術家団体 [2] が、無人機による攻撃から生き延びた少女の巨大な顔写真を地表に設置した。同州は部族地域ワジリスタンに境界を接し、米国のプレデター型無人戦闘機が2004年以降監視を続けている。

 この巨大写真を設置した目的は、米国の無人戦闘機の犠牲になった民間人が一人の人間であるということを示すためだ。 the Bureau of Investigative Journalism [3]によると、2004年から380機以上の無人戦闘機がパキスタンを攻撃目標 [3] とし、少なくとも3500人以上の人々の命を奪った。そのうちの200人は子どもだったという。

米国の無人機による攻撃作戦はパキスタン国内にあるタリバンの拠点を壊滅させることを目的としている。 前パキスタン政権は米国の無人機攻撃を表向きは非難したが、ウィキ・リークスは 前政権が無人機による攻撃を水面下で容認していた [4] ことを暴露した。2013年5月、パキスタンの司法裁判所は パキスタン国内での米中央情報局(CIA)の無人機による攻撃は違法である [5] という裁決を下した。

この画像はTwitterのハッシュタグ#NotABugSplat [6]で、広く共有されており、#NotABugSplatはキャンペーンの名前である。このサイト [7]では次のように書かれている。

In military slang, Predator drone operators often refer to kills as ‘bug splats’, since viewing the body through a grainy video image gives the sense of an insect being crushed.

To challenge this insensitivity as well as raise awareness of civilian casualties, an artist collective installed a massive portrait facing up in the heavily bombed Khyber Pukhtoonkhwa region of Pakistan, where drone attacks regularly occur. Now, when viewed by a drone camera, what an operator sees on his screen is not an anonymous dot on the landscape, but an innocent child victim’s face.

軍の俗語で、プレデター型無人戦闘機の操縦士は人を殺すことについて 「虫つぶし」bug splats とよく表現する。不鮮明なビデオ映像を通して人間の体を見ているので、虫がつぶされるような感覚を持つのだ。

民間人に犠牲者が出ているという認識を高めることはもちろん、こうした無感覚さと戦うために、ある美術家団体は無人機による攻撃が定期的に行われ激しい攻撃にさらされいるパキスタン、カイバル・パクトゥンクワ地域で上空を見つめる巨大なポートレートを設置した。そして今、無人戦闘機のカメラを通し、操縦士がそのスクリーンで見るものは何の特徴もない地表のドットではなく、巻き添えになった子どもの顔だ。

Setting up the poster. [1]

巨大写真の設置。#NotABugSplatのウェブサイトより。プレス用写真。

#NotABugSplatのウェブサイトによると、この写真の少女の名前はわかっていない。このキャンペーンと提携しているパキスタンの非営利団体the Foundation for Fundamental Rights [8] によると、この写真の少女は両親と二人のきょうだいを無人機の攻撃によって亡くしているという。

しかし、Twitterの利用者によって少女の顔と2009年の犠牲者の写真(注1)が一致したようだ。
(注1)この犠牲者の写真の中には生存者も含まれており、写真の少女は生存しており、その後叔父に引き取られている。

これがパキスタンでの反無人機運動 #NotABugSplatで使用された巨大写真の原物だ。

Zahra Ahmerは#NotABugSplatのウェブサイト [12]で次のように述べている。

This is a beautiful post and the girl in the photo is so innocent, so pure and the way these drones have harmed her…its scary for me to these read comments which express empathy for the children but say using these machines is necessary. I mean, it is so ingrained in your brains that this is the ONLY means to fight the Taliban. Do you actually think so? Do you actually think that with all our technology and all our creativity, this is all we can come up with? It might be the easiest. But really, the only one? Well, I’d like to ask, would you like a government to hunt down criminals in this way among you? Especially a foreign government?

Any way of hunting down terrorists in a way that puts innocent people’s lives at risk should not be used. Instead a better method should be thought about and brought to actuality. It might be easier for you to accept this girl’s fate, living comfortably in your homes, but actually for a moment try to imagine her reality and her memories and the environment she will be living in. And please, really think about it and then say, drones are necessary.

これはとてもすばらしい記事だ。写真の中の少女は純粋無垢で彼女を傷つけた無人機を使ったやり方は… 私は「子どもたちには同情するが、無人機の使用はやむ得ない」というようなコメントを見ると恐ろしくなります。私が言いたいのは、これがタリバンと戦う唯一無二の方法であるということが人々の頭の中に深く定着しているということです。あなたは本当にそう思いますか? 私たちの技術と創造性のすべてを注いでも、思いつくのはこの方法だけなのでしょうか。無人機による攻撃は最も簡単な方法なのでしょう。だけど本当に、唯一の方法なのでしょうか。私はみなさんに伺いたいのです。政府にこのようなやり方であなたたちの中に紛れ込んでいる犯罪者を追い詰めてもらいたいですか? 特に他国の政府の手によって。

テロリストを捕らえるためとはいえ、罪のない人々の命を危険にさらすようないかなる手段も決して使うべきではない。代わりにもっとよい方法を考え、それを実行に移すべきです。自宅で快適に暮らしながら、この少女の運命を受け入れるのは容易いことでしょうが、少しでも彼女の現実、記憶、そしてこれから彼女が生きていく環境を想像してみてほしいのです。このことを本当に考えてから、無人機は必要であると言ってほしいのです。

Villagers with the poster. From the #NotABugSplat campaign website. Photo meant for press use. [1]

巨大写真と村人たち。#NotABugSplat のウェブサイトより。プレス用写真。

John Uebersaxは次のように投稿 [13]している。

This is an excellent idea. Opposing military aggression with anger and hatred fuels continued aggression. It is better to appeal to conscience, so that the aggressor wakes up and realizes “What we are doing is wrong.”

これは素晴らしいアイデアだ。怒りと憎しみを糧に軍事攻撃に対抗すれば攻撃はさらに続くだけだ。攻撃者側の目を覚まし、「自分たちのしていることは間違っている」と気づかせるには良心に訴える方がよい。

無人機のように目標を正確に攻撃することが犠牲者の減少につながると、無人機の支持者たちは主張する。しかし、無人機による民間人と戦闘員の犠牲者の数に関しては意見が分かれている。というのも米国は徴兵年齢に達しているすべての男性を「敵戦闘要員」と定義しており、無人機による犠牲者の数は米国と非政府系組織とでは大きく異なっている [14]からである。  アムネスティ・インターナショナル [15] によると、無人機攻撃の犠牲者の多くは非武装で、無人機の攻撃は 戦争犯罪 [16] 同然のものもあるという。 国際危機グループによる報告書では無人機による攻撃はパキスタン内の戦闘員と戦う方法としては「有効ではない」と結論づけられている。 [17]

ここ100日の間、パキスタンでは無人機による攻撃は行われていない。これは2011年以降で最も長い中断となる。ワシントン・ポストによると、パキスタン政府が国内のタリバン勢力と和平交渉に努めている間、 攻撃の自粛を求めたのを受けて、米国は無人機による攻撃を縮小したという。 [18]  

校正:Fumio Takeuchi