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フィリピン:台風30号が去って6ヶ月が経過 台風被災者はいまなお援助と公正な対応を求めている

カテゴリー: 東アジア, フィリピン, 人道支援, 市民メディア, 政治, 災害, 環境, 行政, 難民
Typhoon Haiyan caused a ship to ran aground in Leyte, destroying houses in a crowded coastal village. Photo by Alessandro Pavone/ Save the Children [1]

台風30号は船を陸上に打ち上げ、沿岸村落に密集する家屋を破壊した レイテにて 写真:Alessandro Pavone/ Save the Children

グローバルボイスの特集記事「フィリピン台風30号被害」もご覧ください [2]

6ヶ月前、スーパー台風ハイエン(フィリピン名:ヨランダ)(訳注:以下台風30号と表記)がフィリピンの東ヴィサイヤを襲い、数千人が亡くなった。政府が総合的な被災地復興マスタープランを策定していていない [3]ため、今なお数千の人が悲惨な状態から抜け出せない [4]でいる。

報告を受けて現地の実情を知った上院議員Chiz Escuderoは、地方担当部局は事の重大さを理解していないとして厳しく非難 [5]した。

This is very sad. Six months after Yolanda, more than a year after the previous disasters we don't even know what exactly the affected communities need? It is not about what we can give or what we will to give. This lackadaisical attitude is prolonging the anguish of victims. It is bordering on criminal already.

非常に悲しいことだ。台風30号が去ってから6ヶ月経過したが、前回の被災の後1年以上の間、政府は被災地が真に何を求めているのか把握さえしていない。何を提供できるかまたは何を提供しようかといった問題ではない。地方担当部局の怠惰な姿勢が被災者の苦悩を長引かせている。このような状態にしたことはもう、犯罪と言ってもよいほどである。

政府関係機関の連携の欠如が、問題を悪化させているのだ。

台風30号( #Yolanda [6])が去ってから6ヶ月、関係機関の連携が欠如しているため、台風30号被災地の復興が遅れている。このことを政府行政官は認めている。

昨年11月、台風30号により高潮 [8]が発生し、何千もの村が破壊され、1600万人以上が被災した。

複数の関係機関の調査によると、台風被災者はゆっくりと立ち直りつつあるものの、多くの問題がなお存在している。赤十字社は、幾つかの地域で基本的な住民サービスが、まだ元通りに回復していないと、遺憾の意を表した [9]

Affected communities have shown remarkable strength and many are on the road to recovery. However, high levels of pre-existing poverty are holding people back and in some areas basic services have not been re-established.

被災地域の強靱さには目を見張るものがある。多くの人は復興への道を歩んでいる。しかし、以前から有った極貧の中に押しとどめられている人もいる。また、ある地域では基本的な住民サービスがまだ元の状態に回復していない。

台風被害を受けた州内の半数の診療所がようやく診療を再開したところである。再開が遅れたため、母親や新生児の健康がむしばまれている。下記はセーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)からのリポート [10]である。

At a medical center in Eastern Visayas, several babies died from conditions that are normally treatable, such as hypothermia and hypoglycemia, often because nurses were unable to examine newborns properly at night because there was no power for lights.

東ヴィサイヤの医療センターでは、何人もの子供が、低体温症や低血糖症といった通常なら治療が可能な疾患の下で命を失っている。照明のための電力がないために看護師が夜間、新生児を適正に見守ることができないのでこのような事態がしばしば生じている。

台風30号が去ってから4ヶ月後に被災地域では、ようやく半数が医療センターを再開することができただけである。タクロバンおよびレイテでは、難産時や新生児ケアの問題は特に深刻である。

また、オックスファム [11]は沿岸地域20万の被災住民がさらなる貧困に陥る 恐れ [12]があると警告している。政府は被災住民を安全な居住地に移住させる計画を立案しているが、移住後にどのようにして生計を立てるのかといった点については十分な検討を行っていないからである

Carl Ramota教授はフィリピン大学マニラ校パロキャンパスを訪れ、キャンパス内の悲惨な状況 [13]を報告した。

Six months after typhoon Yolanda decimated its campus in Palo, Leyte, there is still no clear plan for the rehabilitation or relocation of the UP School of Health Sciences. While nearby structures are already being reconstructed, the Palo campus remains in ruins. Worse, the asbestos roofing in the old SHS building has not yet been removed, posing a threat to the maternity clinic beside it and other residents.

台風30号がレイテにあるフィリピン大学健康科学部パロキャンパスに大打撃を与えた。あのときから6ヶ月が経過したが、パロキャンパスを修復するのか移転するのか明確な計画がまだ示されていない。近隣の建造物はすでに再建されつつあるのに、パロキャンパスは破壊されたままの状態である。さらに悪いことには、健康科学部の既存校舎に使われているアスベストはまだ除去されていない。このアスベストが、隣接する産婦人科病棟や近隣居住者の健康に影響を与えるのではないかと懸念されている。

Photo from Facebook page of Carl Ramota [14]

Carl Ramota教授のフェイスブックから転載の写真

若者のリーダー Divs Mosqueraも台風30号の「直撃地」 [15]であるタクロバンを訪れ、被災者の話に心を打たれた [16]

Months after Yolanda, Leyte is still a tent city. I've cried buckets since I arrived, hearing the survivors’ stories just breaks my heart.

台風30号が去ってから数ヶ月が経過したが、レイテはいまもテントの町である。私はここに来てからバケツに一杯の涙を流しました。被災者の話を聞くと私の胸は張り裂けそうになります。

政府の統計によると、台風30号による死者の数は約6300名である。しかし、この数字はさらに多くなる可能性がある。被災地では、いまも遺体が収容されているからである。レイテ州の住民Al Octavianoによると、政府に報告されていない 遺体 [17]が多数あるということである。

I personally retrieved 14 bodies - two children, four women, the rest were men. I tied them together so they would not be washed away by the sea, but you know when bodies are immersed in sea water, they fall apart. There are also many bones buried in the mud of the shallows, but people don’t report these anymore.

私自身は14の遺体を収容しました。2体は子供、4体は女性、残り8体は男性でした。沖合に流されないよう遺体を一緒につなぎ止めました。でも知っての通り、つなぎ止めた遺体も海水にさらすと、ばらばらになってしまうのです。また、浅瀬に埋まった遺骨が多数有ります。しかし、そのことはもはや報告されません。

こういった事に関して、政府の救援活動に対する批判が有ることを政府は認めている。しかし一方、被災の状況をうまく利用し自己の政治活動を有利に進展させようとする政治家がある。政府はこういった政治家に対し警告 [18]を与えている。

…we are likewise cynical of those whose agenda includes misleading our people to believe that government is not sensitive enough to alleviate the suffering of the survivors. We detest politicians and political groups who strive to put blinders in exploiting the vulnerability of victims of Yolanda.

…政府の対応は、被災者の苦しみを和らげる配慮に欠けていると宣伝する政治家がいる。しかし、政府はこうした者を冷ややかな目で見ている。そればかりでなく、国民の批判の目を政府に向けさせ、自らは台風30号被災者のうちひしがれた気持ちにつけ込もうとする政治家および政党を強く非難する。

校正:Yoshiki Oda [19]