マダガスカルの冒険

マダガスカルを初めて訪れた人は、公共交通機関に問題を感じるだろう。その理由は多くある。まず、59万平方キロメートルという広い国土にもかかわらず、道路は老朽化し十分に整備されていない。また、鉄道網は広がりつつあるが、通じていない都市がほとんどだ。

市街中心部での公共交通機関は超満員のバスやミニバンだけであり、鉄道が利用できるのは首都アンタナナリボだけとなっている。

アンタナナリボの公共交通機関が整っていないのはよく知られた問題である。人口は200万人近く、車両は推計11万台あるとされる。以下の写真にあるように、都市部の道路は頻繁に渋滞している。

Urban traffic in Antananarivo via Mada aventures CC-NC-2.0

アンタナナリボ中心部の渋滞が目につく。(写真はブログ「Aventures et vie à Madagascar」より。CC-NC-2.0)

viva madaがアップしたこのビデオでも、交通量が都心部の通勤に及ぼす影響がどれほどか分かる。

こういった渋滞は住民にとって耐えがたいものであり、アンタナナリボ市は、市内で1、2番目に人口の多い2つの丘陵地域をつなぐケーブルカー導入を検討している。

Cette ligne devra desservir la Haute Ville et Mahamasina. Toutefois, le PDS n’a pour l’instant fourni aucun détail quant au début des travaux ni au coût financier du projet.
En ce qui concerne l’utilisation de téléphérique urbain, la Capitale se dotera de ce mode de transport en commun après la Paz.

ケーブルカーは山の手地区とマハマシナ地区をつなぐ計画だが、市長からは着手する時期や費用に関する詳細はまだ示されていない。都市型ケーブルカーシステムの選定にあたって、市はラパス(訳注:ボリビアの首都)で開発されたシステムに影響を受けそうだ。

同様のプロジェクトであるラパスのシステムで1億6,600万ユーロ(2億3000万ドル)と見積もられた費用や、市内あちこちに感じられる貧しさを考えると、当事業には懐疑的な見方も多い。マーク・ハメールは次のように書いた。 

Plutôt que de penser construire un téléphérique, ne faudrait il pas commencer à raser les bidonvilles , reloger ces gens comme des êtres humains , soigner et scolariser leurs enfants ?

ケーブルカー導入を検討するよりも、まずは、スラム街を一掃し、そこに暮らす人々人々がより人間としての尊厳に適う場所で暮らせるようにしたり、医療を提供し、子どもが教育を受けられるようにすべきではないか。

マダガスカルの公共交通機関

交通渋滞が都心部の主要な課題だというなら、都市間を結ぶ道路は加えて大規模な修繕も必要な状況だ。ビル記者(マダガスカル・トリビューン紙)によれば、未整備の箇所が多いとのこと。

11 700 km de routes à réparer dans tout Madagascar en 6 mois […] l’OTU (Office des travaux d’urgence) va se consacrer aux travaux d‘urgence et aux entretiens provisoires des routes endommagées par les catastrophes naturelles

マダガスカル全土において1万1700キロもの道路を6カ月以内に改修しなければなりません。[…]緊急対応局(UTO)が、急を要する道路の修繕や自然災害による被害を受けた道路の仮修繕を担うことになっています。

NGOのLalana(「マダガスカルの道」を意味する)はアンタナナリボと主要港トアマシナを結ぶ幹線道路である国道2号線の状態について注意を促している。

Le patrimoine routier du pays se dégrade. La crise politique a complètement chamboulé le mécanisme de financement du programme d’entretien routier et des travaux d’urgence. Des dégâts, laissés par les cyclones qui ont frappé le pays, l’année dernière, ne sont toujours pas réparés à l’heure actuelle. C’est le cas, entre autres, de la route nationale 2, reliant Antananarivo à Toamasina. Plusieurs mini-éboulements, des portions de route emportées par les torrents

国中で道路の劣化が進んでいます。政治危機により、道路のメンテナンスや急を要する修繕といった計画の資金繰りがまったく機能していません。昨年この国を襲ったハリケーンによる損傷も現時点ではまだ補修されていません。こうした状況はアンタナナリボとトアマシナを結ぶ国道2号線で特にひどく、落石も見られます。洪水により道路が流されているところもあります。 

National roads in Madagascar - viaTananews- Public domain

マダガスカルの国道を走る「田園タクシー」。(Tana News提供。Public domain)

公共交通機関でマダガスカルを見て回るのはまたとない経験となる。最も安く済ませるなら、田園タクシーの「タクシー・ブルース」だ。何種類か車両はあるが、上の画像にあるようなミニバンがほとんどだ。アンタナナリボ以外の都市では、「プース・プース」を使うことができる。次の映像にあるような「人力車」を表す現地語である。   

マダガスカル在住のグローバル・ボイス寄稿者アリニアイナさんは、人力車に関する法令が改正されたが、依然として多くの地元民にとっては重要な足だとしている。 

Rickshaw as a mean of transportation pulled by a human being has been considered a violation of human rights. So the Commune [city hall] of Antsirabe [the second largest city in Madagascar] launched the “cyclopousse” – a rickshaw pulled by a bike.  Yet, “traditional” rickshaws are still the main transportation for many Antsirabe residents.

交通手段である人力車を人間に引かせるのは人権を侵害していると考えられています。そこで、マダガスカル第二の都市アンツィラベのコミューンでは、自転車で引く力車である「サイクロプース」を導入しました。それでも、「伝統的な」人力車(訳注:rickshawはjinrikishaが短縮されたもの)は多くのアンツィラベ住民にとって今も主要な交通手段なのです。 

Ariniana posing with a rickshaw owner and his rickshaw in Antsirabe, Madagascar (with her permission)

オーナー車夫と一緒に彼の人力車を引いてポーズを決めるアリニアイナさん。マダガスカルのアンツィラベにて。(掲載許可済み)

公共交通機関は急増するマダガスカルの人口に追い付こうとしているが、少なくとも当面は経済的な制約に翻弄されるだろう。

校正:Naoko Mori

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