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日本:減少する日本人留学生-米国はじめ各国で

カテゴリー: 北アメリカ, 東アジア, アメリカ, 日本, 市民メディア, 教育, 経済・ビジネス, 若者, 言語

*訳注:オリジナル記事掲載(2010年7月5日)から4年が経過した。念のため、下図に示された各指標のその後の推移概要を、補足として把握できた範囲で記事末尾に記す。

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撮影はFlickr ユーザーKawa0310

最近、全米アジア研究所のJapan-US Discussion Forum(訳注:主に日米関係をトピックとしたインターネット上の意見交換の場)で、米国の大学に留学をする日本人学生が著しく減少している [2]ことについて議論がなされた。2000年以降、米国の大学の学士課程への日本人入学者数は50%以上落ち込んだ。一方、インド人、中国人の入学者数は飛躍的に増加。2000年、米国の大学への海外留学登録総数において韓国人は日本人とほぼ同数だったが、現在、日本人の2.5倍(韓国人7万5000人に対し日本人2万9000人)を上回っている。2009年秋にハーバード大学へ学部入学した日本人はたった一人だった。

いまだ他国に比べると海外留学する日本人は多い [3]。しかしその数は減少しており、留学後、渡航国に永住している日本人はほぼゼロである [4]

下の図は国別の海外留学中の日本人大学生数(出典:株式会社トゥモロー [5])を示している。比較材料として海外在留邦人数(「expats」と記載)(出典:外務省 [6])、日本人出国者数(出典:法務省 [7])、3か月以上の日本人高校生留学者数(出典:文部科学省 [8])、大学間の協定等に基づく日本人留学生数(出典:独立行政法人日本学生支援機構 [9])もグラフに加えた。

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海外留学プログラムを通して [11]留学する学生数が増加しているにも関わらず、全日本人大学生に占める海外留学生の割合は、日本の減少する出生率 [12]を考慮したとしても一律に減少しているようだ。

この著しい留学者数減少の原因は何なのか? 下記は数名からの見解である。

株式会社ディスコのジャーナリストである恩田敏夫は次のように述べている [13]。居心地のよい日本に育つと安心感を得てリスクを避けたがるようになるものだ。それに企業や教育機関も「ハングリー精神」を育てるための積極的な手段を講じていない。

世界における日本の位置づけなど日本にいては分からない。年々国際的地位が低下し、存在感を無くしているというのに、未だ経済大国の残像にとらわれ、変身をためらい、内にこもっている。若者に訴えたい。世界の優秀な人たちが集まる場所に出かけ、異なる文化を持つ人々と出会い、価値観をぶつけ合う中で、自分の価値観を磨いていくことがどれだけ大切なことか。目を開いて世界に挑み、世界に学ぶ貪欲さを持って欲しい。といっても若者の内向き志向を変えるのも難題だ。リスクを取って荒波にもまれた日本人留学生を企業がもっと積極採用するとか、ポスドクの欧米企業・大学への派遣を増やすなど政府も大学、企業も世界に羽ばたく人材育成に本腰を入れる時である。

某州立大学統計学科助教でブロガーのWillyは次のように述べた。この日本人留学生の減少は [14]、外の世界に対する憧れの低下、他国に比べて弱体化する経済に起因すると考えられる。しかし何よりも、国内での就職の可能性を最大限に高めることが目標であれば、海外で教育を受けることは断じて実用的でないからだ。

日本社会は博士号に対する評価が非常に低い。
理学系や社会科学系の博士など取ってこようものなら、
まともな就職すらままならない。
新卒一括採用主義(しかも原則25歳まで)という
日本の特殊な雇用慣行が原因であろう。

上位3カ国の学生が、アメリカで就職しても良いし、
母国に帰ればかなり良い待遇の職を選べるのに対し、
日本人留学生は(一部の社会科学系を除き)コネがないと
日本での就職が厳しい、というなんとも不利な立場に追い込まれる。
この点に関しては、他国の留学生にはなかなか理解してもらえない。
また、米国での就職にしても、小学校から英語で勉強している
インド人等に比べた場合の語学力でのハンディはいかんともし難い。
こんな理不尽な状況では、留学生が増えないのは仕方ないだろう。

日本IBMの森島秀明 [15]によるとアメリカでは [16]、英語学習コース(集中英語コース)をとる日本人学生の割合が多い。また大学院留学生に対して学部留学生(特に2年制大学への入学が多い)の割合が高く、最も人気のある教科はビジネス、続いて社会学という傾向があると指摘している。同氏は一般企業について、若者の海外留学に関してある程度鍵を握っており、政府内で立ち往生する税制改正を待たなくても今の行き詰まり状態を打ち破るためにもっと柔軟な対応がとれると述べている。

日本の留学生は、もともと企業派遣か2年制短期大学への語学留学みたいなところが中心であるようだが [16]、 その中でも「ビジネススクールなどでは、企業派遣の低下が近年著しい」というのが定説のようである。実際、私の日本人同級生でも、私を含めて9人中8人が自費であった。企業派遣が減った理由としては、最近の経済情勢に加えて、「留学帰りの社員はすぐ辞めて転職するから留学させない」という事情があるよう だ。そのため、学位を取れる2年コースではなく、わざと1年くらいに短縮した企業派遣や1-2週間のセミナーなら認めるという企業などもあるらしい。

企業側の人事部の都合もわかるが、これではあまりに了見が狭いという気もする。

そこで、提案だが、「個人での自費留学に関する費用を、必要経費として税金還付の控除対象とする」という施策はいかがだろう?

ロサンゼルス在住の留学生でブロガーのTatsukiの考え [17][dead link]はこうだ。英語力の欠如に加え、英語を容易に操れるようになるのにばかげた金銭投資をせざるを得ないため、多くの日本人が海外留学へ大きく踏み出せずにいる。日本が他のアジア諸国に比べて暮らしやすく大学のレベルも高ければ、なおさらリスクの高い海外留学をためらうだろう。

日本で勉強してこなかったからか、語学学校+ESL地獄に飲み込まれ、お金と時間を無駄にする人が多い。基本的に留学生はいい鴨だから、英語力がなければ 語学学校とコミカレに高額な学費を払い続けることになる。私もカウンセラーにESLを取ることを強要されたが、強く拒否し、結局取らなかった。私にとって ESLは無意味だと思ったし、私の進路くらい私が決めたかった。噂によると語学学校とESLに日本人が沢山いて、そこから抜け出すことの出来る人間が極端 に少ないらしい。私が知っている限り、ESLには6つ以上段階がある。最初のプレースメントテストで良い点数を取らないと、ESLの底辺から始める事にな り、卒業までにとてつもない時間と費用が掛かる。語学学校も含めれば、7年近くアメリカに滞在している日本人もいるらしい。最低限の英語が出来ないと、留学してもお金と時間の無駄になるので、個人的に留学は考え直した方がいいと思う。

全体的に他国に比べると日本人学生にとって海外留学はメリットが少ないように見える。また少なくともアメリカでは語学力というさらなる障害がある。

*補足:2010年以降の日本人海外留学生関連指標推移について
・海外在留邦人数は増加を続け、2013年度で125万8263人
・出国者数は2010年度に増加に転じ、2013年度は2013年 1747万2748人
・高校生留学生は2006年度以降、2008年度調査で3208人(前回比18.5%減)、
2011年度調査で3257人(前回比2%増)と推移
・大学間の協定等に基づく日本人留学生数は、2012年度43,009人まで増加
なお、文部科学省ウエブサイト [18]よると、平成26年3月10日より、官と民が協働で創る新たな海外留学支援制度「官民協働海外留学支援制度~トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム~」 [19]の公募が始まっている。

校正:Naoko Mori [20]