
ロシアのソーシャルメディアユーザーは、プーチンによる飲食物の輸入禁止に対し怒りを見せ、空のグラスを思い、嘆く覚悟を示している。写真は筆者による合成。
(訳注:原文の掲載日は2014年8月6日であり、記事内容は当時の状況を反映している。)
スコッチ・ウイスキーやフランス産チーズが手に入らないことに、ロシア人はすぐに気がつくだろう。特に問題となるのはウイスキーである。ウラジーミル・プーチン氏は新たな大統領令に署名をし、ロシアに対し以前から経済制裁を課していた国々からの農産物輸入を禁止した。クレムリン広報のウェブサイトから今日(訳注:8月6日の記事)発表されたこの命令により、今後1年の間、ヨーロッパ連合諸国及びアメリカ合衆国産の飲食物が禁じられる。これはウクライナ紛争でのロシアの動向に対して圧力をかけた各国の試みへの報復である。
ドミトリ―・メドベージェフ氏の報道官、ナタリア・チマコワ氏によれば、正確な禁止品リストはまだ準備段階ではあるが、唯一確信が持てるのは、そのリストにはベビーフード及びワインは含まれないということである。しかし他の政府関係者は、該リストに果物、野菜、食肉加工品、チーズ及び乳製品が含まれるのは確実だろうと伝えている。
ロシアのインターネットユーザーはこの輸入禁止のニュースに対し怒りを呈したが、何よりも心配なのは欧米産の酒が手に入るかどうかだと示した。
ユーザーの一人、イワン・コルパコフ氏は、CAPS LOCKが押されたまま、大文字入力でつぶやいてしまうほど関心を持っていた。
А ЧТО С БУХЛОМ-ТО БУДЕТ БРАТЦЫ?
— Ivan Kolpakov (@kolpakov) August 6, 2014
なあ、酒はどうなってしまうんだ?
イワン・ダビドフ氏はリストが発表される前であったが、彼の好きな酒に別れの言葉を告げた。
Пожалуй, схожу сегодня, попрощаюсь с виски
— ivan davydov (@ivan_f_davydov) August 6, 2014
今日でウイスキーとはお別れをすることになりそうだよ。
アンドレイ・ミーマ氏のツイートからわかるように、お決まりのジョークですら悲しみに満ちていた。
-Папа, водка подорожала. Ты теперь станешь меньше пить? -Нет, сынок, это ты станешь меньше есть.
— Andrey Mima (@amima) August 6, 2014
-お父さん、ウォッカがとても高くなるそうだよ。飲む量を減らすのかい?
-いや、息子よ。お前の食べる量を減らすまでだ。
ナデージュダ・アステル氏のようにこの禁止令が持つプラスの側面に目を向けようとする人々も、少数ではあるがいる。彼女はとうとうダイエットが成功するはずだと期待している。
НУ ХОТЬ ПОХУДЕЮ!
— Надежда Astel (@astel_) August 6, 2014
少なくとも私の体重は減るわね!
インターネットユーザーが、プーチン氏の報復戦略及びその成り行きに対するより手の込んだジョークを探っていったように、飲食物輸入禁止に対しわきあがる意見のほとんどは、ユーモアあふれるものであった。デニス・チュジョーイ氏は、この禁止によって、インスタグラムのグルメたちの写真投稿はどうなってしまうのだろうかと案じている。〔訳注:インスタグラム・・・無料の画像共有(英語版)アプリ、foodie・・・食べ物等の写真を投稿しているグルメなユーザー〕
Шёл 2015 год. Российские инстаграмы опустели…
— Денис Чужой (@fe_city_boy) August 6, 2014
2015年末には、ロシア人のインスタグラムアカウントは空っぽだ。
料理の選択肢が狭まるから、近所の国へ少し旅行に行く。そんな言い分が通じるようになるのではと、ツイッターユーザー「Wylsacom」はほのめかした。
- Ты где был на выходных? – В Минске, обедал.
— Wylsacom (@wylsacom) August 6, 2014
-先週末どこへ行ってたんだい?
-ミンスク(訳注:ベラルーシ共和国の首都)だよ、昼食を食べにね。
ブロガーのロマン・ボロブエフ氏は見込みのあるビジネスソリューションを思いついた。
А еще я медиа-стартап придумал: я тут в Риге буду покупать разную еду, есть ее, и рассказывать вам какая она.
— Roman Volobuev (@romanvolobuev) August 6, 2014
あ!新しいメディアを思いついたわ。リガ(訳注:ラトビア共和国の首都)で現地の食べ物を全種類買うの。食べて、どのような味かを伝えるのよ。
このニュースを耳にして、多くのツイッターユーザーが即座に思い出したのは、ソビエトの物資不足と空っぽの店に並ぶ長蛇の列という記憶だった。それはロシアの30歳代の人々の多くが子どものときに経験したことである。マキシム誌では、当時の出来事が今日人々の目にどう映るのかと再び思いをはせた。
Этой осенью в российских магазинах. #новостибезподробностей pic.twitter.com/IG9knHUwrq
— MAXIM Online (@ru_maximonline) August 6, 2014
ロシアの店に今年も秋が来た。(画像内のキャプション:「このベラルーシ産リブ・アイ(訳注:リブロース。部位としてはサーロインの隣)は新鮮?」「生ハムにはなっていないのかい?」)
さらに物憂げな雰囲気のつぶやきもある。ジャーナリストのロマン・ドブロホトフ氏は、過去の食料不足時に撮られた白黒写真を投稿した。(輸入禁止決定のニュースが発表される前に投稿された。)
Вообще-то Кремль уже когда-то назло Западу запрещал все иностранные продукты и выглядело это так: pic.twitter.com/ABJtMdiVYh
— Roman Dobrokhotov (@Dobrokhotov) August 5, 2014
実は、クレムリンはとっくに外国製品輸入を禁止しており、欧米諸国を困らせようとしている。それで、この写真のような有様だ。
またドブロホトフ氏はフェイスブックにてフラッシュモブを提案した。好ましく懐かしむなどあり得ない数々の苦難の記憶を呼び起こし、ソビエトの「古き良き」時代の記憶を共有しようと読者に呼びかけている。
ロシアの政府関係者は、外国製品の輸入が禁止されても、国内の食料価格に影響はないと保証した。また、禁止品リストにはさらなる変更が見込まれると述べている。しかし国民の現実問題は次の通りである。大好きな酒との別れを本当に告げなくてはならないのか? そしてスニッカーズやキンダーサプライズ(訳注:中にカプセル入りの玩具が入っている卵形のチョコレート)を買いだめておくべきなのだろうか?
ロシアの有名な起業ニュースサイト「Цукерберг Позвонит」のツイッターアカウント管理者が、この点について非常に的を射た表現をしている。大衆文化の持つ見識は、ロシア当局者の頭の上を完全に素通りしたようである。
Эй, вы не так поняли цитату Джобса “Stay hungry. Stay fooloish.”
— ЦП (@morketolog) August 6, 2014
ジョブズ氏が引用した「Stay hungry. Stay foolish.」という言葉を完全に誤解しているよ。(訳注:引用文は「ハングリーであれ、愚かであれ」の意)