人違い!? ロシアネット上のジェン・サキ報道官ネタ

U.S. State Department Spokesperson Jen Psaki would seem to have inspired Russian trolls into a gaffe of their own. Images mixed by Kevin Rothrock.

ロシアのネット上の中傷屋たちは、アメリカ国務省のジェン・サキ報道官ネタに釣られて墓穴を掘ったようだ。Kevin Rothrock による画像合成。

ロシアのウェブサイトを見ていくと、アメリカ国務省のジェン・サキ報道官をパロディにした画像を見つけるのに時間は掛からないだろう。ほとんどのアメリカ人はサキという名字を聞いたことはないだろうが、ロシアではありふれた名前である。そのロシアでは政府や政府筋のメディアが、彼女を国民のサンドバッグに仕立て上げている。

しかしながら、最近のサキ報道官ネタによって暴かれたことがある。それは、たとえロシアの気高い愛国者であっても、アメリカ国務省をネタにする時にはアメリカのウェブサイトの情報に頼っている、ということだ。実際に、新たなサキ報道官攻撃ネタに使われた画像は、最近ロシア政府検閲官によって閲覧が禁止されたあるアメリカのサイトから拝借されている。そのサイトdeviantArtの閲覧許可を求め、これもアメリカのウェブサイトChange.org(訳注:オンライン署名サイト)に請願署名のキャンペーンが立ち上げられた。もしそれがなかったならば、devianArtは未だに閲覧できなかったことだろう。

サキをターゲットにしたキャンペーンは、ネット上のネタをいくつも作り出した。通常は、彼女の弱点と思われる部分をとらえてネタにするのだが、ロシアのインターネットユーザーは、彼女の記者会見での発言をつぶさにチェックし、小さなミスでもすくい取ってしまう。もし、失言が無いと分かれば、彼らは喜んで彼女の言い間違いをねつ造していた。サキの最も不名誉な失言である「ベラルーシには海岸がある(訳注:ベラルーシは海に面していない)」は、完全に作り話である。サキは決して、そんなことは言っていない。

6月初旬、ロシア側のサキ攻撃への対策と思われるのだが、副報道官であるマリー・ハーフがアメリカ国務省の記者会見の場に立つ回数が増えた。(実際に、ハーフが記者会見をしはじめたとき、ロシアでは心から警戒している人が多いように見えた。)

しかしながら、この援護活動によっても、会見での報道官の発言をロシアのネット界がねじ曲げるのを制止できていない。実際にロシアのインターネットのほとんどは、それにこの動きに同調している悪徳なPR会社もどこもみな、サキがアメリカ国務省の唯一の代表者であるかのように装いつづけている。

先週の8月14日(訳注:この記事は8月19日に投稿された)、マリー・ハーフは定例会見の場で、ウラジミール・プーチンがクリミアへ訪問したことについてコメントを求められた。クリミア編入後のロシアの旅行産業不振を ネタにして、こう述べた。 「あー、私が聞いた限りでは、彼はこの夏にそこを訪れた唯一の旅行者だったようですね。」ロシアのニュースでは、直ぐにハーフのこのコメントが、アメリカによる見過ごせない主張である、として報道された。ロシアのドミトリー・ロゴージン副首相は「アメリカ国務省は我々のまさに眼前で落ちぶれつつある」と述べ、ハーフのジョークはまったく現実の状況を反映していないとほのめかした。(たまたま、ハーフの記者会見のほんの数時間前に、ロシア旅行産業組合が今年のロシアへの外国人旅行者数が50%減少したと発表していたのだ。)

ハーフの発言であるにも関わらず、「ロシアの旅行業界のジョーク」に対する反発のほとんどは、サキに向けられた。ロシアのネットでは、サキ報道官ネタを作りやすいように、彼女を過剰に攻撃してきたように見える。期待されたとおりに、ブロガーたちはすぐに 有名なネタを改変して、旅行業界に対するジョークをサキが言ったかのように表現した。サキが拘束服と下着だけを身に着けて、拘束部屋の角に佇む画像が作られた。その画像の右側には、人でごった返すセヴァストポリのビーチ写真が配置されている。サキの肩には“Stoned Fox”(訳注:「石の狐」という意味。ロシアで流行のミーム画像。キツネのぬいぐるみを模したもの)が乗っており、「心配しないで。彼らは妄想よ。ビーチに居るのはプーチンだけよ」 と言って、サキをなだめようとしている姿が描かれている。

「心配しないで。彼らは妄想よ。ビーチに居るのはプーチンだけよ」

この拘束部屋にいる女性の写真のオリジナルは、サンフランシスコに拠点を置くモデルのRaynaのものだ。ウェブサイト deviantart.com に2007年10月、彼女自身によって投稿された。サキを中傷する人々は、以前はより愛国的な素材を見つけることが可能だったことが判明した。というのも、ロシアの検閲官が最近、エッチなポルノの温床になっているという理由で、devianArtを閲覧禁止にしたからである。deviantArtのファンたちは、別のアメリカのサイトchange.orgにおいて 署名活動を開始し、1万2千人のロシア人がdeviantArtへのアクセス復活を求める公開状に署名した。これを受けて、ロシアのインターネットプロバイダーは、deviantArtへのアクセスをようやく復活させ始めた。

ジェン・サキ報道官への中傷キャンペーン騒動はまとめるとこういうことだ。ロシア国民はアメリカの署名サイトのシステムを利用して、自国の役人を説得し、アメリカの画像共有サイトへのアクセスを認めさせている。そのアメリカのサイトで、ロシアの「愛国者」たちはカリフォルニア女性のエロティックな画像を拝借しているのだ。そして、記者会見でのとある何気ないジョークを別の人が発言したと間違え、その間違いを広めている。

校正:Maki Kitazawa

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