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太平洋諸島の島民 カヌーで気候変動に立ち向かう

カテゴリー: オセアニア, オーストラリア, トンガ, バヌアツ, パプアニューギニア, 市民メディア, 抗議, 科学, 移住と移民
Canoe building in Pohnpei, the Federated States of Micronesia, where the warriors are learning the canoe building process from local elders. Photo credit:

ミクロネシア連邦、ポンペイ島におけるカヌー作り 気候変動と戦う島民たちが島の長老からカヌー作りを学んでいる。 写真提供者: 350.org

この記事は、世界の気候変動問題に対する運動を育てている組織350.org [1]へ Fenton Lutunatabuaが投稿したものである。コンテンツ共有の合意のもとにグローバルボイスへ再掲した。

気候変動が太平洋諸島に激しい打撃を与えている。海面上昇や気温上昇にともない、深刻の度を増している高潮や洪水が水道水を汚染し、また作物を台無しにしてしまった。こういった壊滅的な影響を受けたため、ある島の島民はすでに島を去る決意を固めた [2]

状況は、悪くなるばかりのようだ。それなのにオーストラリアは、太平洋上の隣人の窮状を無視して再び化石燃料推進に方向転換 [3]した。

しかし、太平洋諸島の島民たちはそんなことにめげずに闘っている。武器はカヌーだ。16の島国から集まった参加者は、350.orgが主催するパシフィック戦士キャンペーンの一環としてオーストラリアまで航海し、化石燃料産業を支持する多数派のもとに島伝来のカヌーで乗り込もうとしている。こうすることで、太平洋諸島の島民は自分たちの文化、故郷そして海洋を守るために平和裏に行動をしていることをオーストラリア国民に示そうとしているのである。

今年の初め、太平洋諸島から集まった気候戦士 [4]たちは、カヌー作りのスタートを切った。バヌアツで、厳選された樹木がこのカヌー作りチームに贈呈されカヌー作りが始まった。下の動画はカヌー作りの責任者ウォルター・ナムアとのインタビューの様子を写したものである。この中で、彼はこの樹木の意義を説明している。

我々は、通常は樹木を切り倒すようなことはしない。事実、350.orgの太平洋事務局は過去5年間に渡り何千もの樹木を植樹してきた。しかし、今回はこのイベントのために各島から1本ずつ樹木を切り出すこととしている。そして、その多くがこの目的に向かって寄贈された。我々はカヌー作りの責任者や長老と共に一本一本の樹木に祈りを捧げ、それから樹木をくりぬくカヌー作りの作業に取りかかるよう努めている。

カヌー作りの伝統は、年を重ねるにつれ島の発展および技術の進歩という名目のもとに太平洋諸島の社会から徐々に消滅してきた。船は日常生活に用いられていたが、中にはとりわけ貴重な財産になるものもあった。カヌー作りは通常、地域住民全員が参加して行われていた。役割が振り分けられている作業(男は船体や艤装を作り、女は帆を作る)がある一方、装置を括り付けるための綱やひも作りなどは、男も女も、老いも若きもが一緒になり村人総出で行う作業とされていた。

不毛でやせた土地に育った樹木がカヌーの材料として選ばれることとなっていた。カヌーは、物々交換のために島々を巡るものとして使われるので、これに用いられる樹木は海洋の過酷な条件に耐えられることが重要とされた。

今回のキャンペーンは、気候変動に関するメッセージをオーストラリアへ届けるために、カヌー作りの技術と島伝来の航海術を取り戻そうとするものである。

ミクロネシア連邦ポンペイ島では、気候戦士たちは、キチ地区エニペイン村の支援を受けて、長老から島伝来のカヌー作りの技法を学んでいる。一方、トンガの気候戦士たちは、4月12日のアクションデーにシピタウというトンガの戦勝祈願の踊りを実演するとともに、木彫り職人の指導の下にトンガ式カヌー作りを始めた。

トケラウでは人々はカヌー作りを始めるに当たり、カヌー作りに長(た)けたアタフ島民の支援を求めている。また、パプアニューギニアでは、気候戦士たちがポートモレスビーの町を行進し、気候変動について、またパシフィック気候戦士のこの地域における役割について、および市民がこの運動を支援する方法について、人々の意識向上に努めた。

校正:Yuko Aoyagi [5]