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韓国:なぜ9時授業開始が議論に?

カテゴリー: 東アジア, 韓国, 市民メディア, 教育, 若者, 行政
Young Korean children studying at a "hagwon." Image by Flickr user knittymarie (CC BY-SA 2.0) [1]

「学院(ハグウォン)」とよばれる学習塾で勉強する韓国の子どもたち 画像はFlickrユーザーknittymarieより(CC BY-SA 2.0.)

競争が激しく過酷な教育制度で知られる韓国。幼い子どもたちは早朝から深夜まで勉強を強いられる [2]。学校の正式な授業時間は午前8時から午後4時までにすぎないのだが、ほとんどの場合、生徒たちは放課後に「ハグウォン [3]」と呼ばれる民間の学習塾に通い、夜遅くまで、ときには明け方まで勉強を続ける。

8月中旬、韓国の京畿道 [4]は、子どもたちの睡眠時間を増やす [5]目的で、学校の始業時刻を1時間繰り下げることを決定した。この新たな「9時始業制」が韓国全土で議論 [6]を呼んでおり、同様の制度を検討する自治体もいくつか現れている。

ネット上の反応は二分している。この「改革」は以前に実施されていた授業時間に戻しただけという意見がある一方で、新制度の悪用を懸念する声もある。異常な教育熱を持つ親たちなら、なんとしても新たに早朝の勉強時間を増やそうとすることが予想できるからだ。

9時始業制を議論の対象とみなす人たち。それは、まるで高速道路を時速100キロ以上で走行する運転手たちが、制限速度を守って時速100キロ以下で走行する「良識ある運転手」を「おかしなやつ」と非難するのを見ているようだ。

以下の2件の投稿はいずれも1300回以上リツイートされた。

教育ママたちのおしゃべりが聞こえてきてぞっとした。9時始業なんかにしたら学習の効果が弱まると、みな失笑しているのだ。新制度が開始されたら、彼女たちは午前7時前に子どもを起こして、参考書などをやらせるのだ。どうかしている。

多くの子どもたちは、実は9時始業制に反対している。終業時刻も繰り下がれば、すでに限られている自由時間がさらに削られてしまうからだ。例えば、登校日が週6日から週5日に減ったときには、休暇期間が短くなってしまった。土曜休みになっても年間休日数は変わらないためである。規定の登校日数こそ減らさなければならないのだ。

9時始業制が議論になっているのは、生徒たちの健やかな生活を思ってのことだけではもちろんない。心配の多くは、子どもたちの勉強よりも、働く親たちのスケジュールに関係していることの方が多いのだ。実際、ある調査によると [10]、生徒の73パーセント以上が新制度に賛成だが、賛成している親たちは56%にとどまる。

共働きの親たちが、9時始業制に合わせるのが難しいことはよくわかる。しかし、朝のニュースでインタビューされた母親が、「仕事をしているから」と新制度に反対している姿を見てやや当惑した。学校に対して、始業前に何か他のことを子どもたちにさせてほしいと要望するのならわかるが、ただ都合が悪いという理由で反対するのは筋違いではないか。

校正:Naoko Mori [12]