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メキシコ:学生失踪事件で検事総長の発言に怒りの声

カテゴリー: ラテンアメリカ, メキシコ, 市民メディア, 抗議, 政治, 行政
The hashtag #YaMeCanse – I'm tired – was trending on Twitter and inspired street demonstrations in Mexico. Photo from Flickr by Somos El Medio/ Carlo Echegoyen. CC BY-SA 2.0 [1]

#YaMeCanse(スペイン語で「うんざりだ」) のハッシュタグがツイッターのトレンドに上がり、これをきっかけにメキシコでは路上でデモ活動が行われた。写真提供はSomos El Medio(訳注:メキシコの市民メディア)のFlickrより、Carlo Echegoyen氏撮影(CC BY-SA 2.0)

メキシコ連邦検事総長が11月7日(訳注:元記事は11月9日に掲載)に発表したところによると、2014年9月26日に消息を絶ち、行方不明となっていた43名の教員養成学校の生徒(スペイン語では normalistas )たちは、ごみ処理場で射殺された後に焼かれ、黒のビニール袋に入れられた状態で濁った川に投げ捨てられていた。

このへスース・ムリージョ・カラム検事総長 [2]の発言に対して、被害にあった学生の親族のみならず、国内外からも疑念と怒り、憤りの声があがった。というのも、検察側が麻薬カルテルの殺し屋である容疑者3名の証言 [3]を決定的証拠のないまま信用したためである。また、彼らの証言をもとに処理場近辺から発見された遺体の身元も未だ特定されていない。

行方不明となっているアヨツィナパ教員養成大学の学生の父母たちは、生存していることへの希望を捨てておらず、検察の発表を信用しないとする声明を発表した。

ある学生の母親は次のようにコメント [4]した。「我々家族としては、このような発表を受け入れることは出来ない。それはこの発表が確かだという証拠が未だにないからだ。今は情報が必要。確かな情報が得られるまでは子供たちの生存を信じている。私たちも引き続き子供たちの捜索を行うと共に、当局に対しても捜索を強化するように求めていく。」

学生が死亡したとする明確な根拠がないという事実は、報道機関やネットユーザーにも広まっており、政府の姿勢に対して非難の声が上がっている。被害に遭った学生たちの支援を行うための独立執行委員会のメンバーでもある弁護士のJ・エルナンデス・バロス氏は次のようにツイートした。

アヨツィナパの事件の場合、被害者の死亡が確定してないのなら、生存を想定して捜索を続けるべきだ。

ムリージョ・カラム検事総長によると、43名の学生は9月26日夜ゲレロ州南部の町コクラのごみ処理場で殺害されたという、麻薬カルテル「ゲレロス・ウニドス」に雇われた3名の殺し屋たちの供述には根拠があるように思えた。関係者によると、アバルカ市長は、4台のバスで移動する学生たちが市内に入り、市長の妻マリア・デ・ロス・アンヘレス・ピネダ氏の演説を妨害しようとするのを阻止するように事前に命令してあったという。

経済教育研究センター(Centro de Investigación y Docencia Económicas)の学生たちはムリージョ検事総長の発表に対して反発し、報道分析サイトのアニマル・ポリティコは次のように報じている。

「アヨンツィナパ失踪事件に関するカラム検事総長の発言が容疑者の自白を根拠にしたものであることを憂慮する」

金曜日に行われた1時間に及ぶ記者会見を、ムリージョ・カラム検事総長は次の言葉で締めくくって [10]いる。「これ以上の質問は受け付けない。うんざりだ。」
この発言に対しては、検察の事件への対応を非難する声が上がっており、ツイッター上では#YaMeCanse(スペイン語で「うんざりだ」の意味)のハッシュタグがトレンドに名を連ねた。中には、「恐怖にうんざりだ」「人殺しの国にうんざりだ」「汚職と責任逃れにうんざりだ」といったコメントが寄せられた。

こんな政府にはうんざり。社会が求める変革を行動で示す時が来た。#FueElEstado

メキシコ人俳優のエクトル・スアレス・ゴミス氏もウェブ上での抗議活動に参加しており、次のようにツイートしてる。

国歌に謳われる外敵にはうんざりだ。敵は政治家たちであり、彼ら自身が国を蹂躙(じゅうりん)し、血を流させている。

ハッシュタグもきっかけとなり、メキシコ市内のソカロ広場の路上で11月8日にデモ活動が行われた。

あと数分後にソカロ広場でフラッシュモブが始まる。 #MexicoCity #YaMeCansé

遺体は焼かれているため損傷が激しく身元特定につながるDNAを採取する事が困難で、捜査機関はオーストリアの専門の研究所に最後の 希望 [20]を託している。この分析にどの程度の期間を要するのかは分かっていない。

この事件についての特集ページを見る。(英語)Bring Back Mexico's Missing #Ayotzinapa Students [21]

校正:Takeshi Nagasawa [22], Yuko Aoyagi [23]