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「Bent」キューバ公演を目指す クラウドファンディング・プロジェクトに込めた思い

カテゴリー: カリブ, ラテンアメリカ, キューバ, デジタル・アクティビズム, ニュース速報, 同性愛者の権利 (LGBT), 市民メディア, 意見, 芸術・文化
Bent se realizó por primera vez en 1979 en Londres (Foto compartida en la plataforma Indiegoogo)

1979年ロンドンにて、「Bent」初公演が行われた。(写真は「Indiegogo」より)

キューバの首都ハバナで活動を行う劇団「La Peña Meisner」が、クラウドファンディング [1]サイト「Indiegogo」にて資金調達のキャンペーン [2]を行っている。1万5千英ポンド(およそ2万5千米ドル)を調達し、ナチス・ドイツにおける同性愛者への迫害を描いた作品「Bent」をキューバで制作・上演しようとしている。

「Bent」は「やがて第二次世界大戦へと進んでいくナチス・ドイツにおける同性愛者への不当な扱いや強制収容の実態を、心の底から湧き出る強い信念を込めて表現している。また、個々のアイデンティティーを個人と社会がいかに受け止めるかということを探求している」といった内容がプロジェクトページに記載されている。

「La Peña Meisner」は非公式の団体で、キューバ政府からの資金援助は受けていない。劇団員は、イギリスで経験を積んだステファン・ベイリー監督のもとで活動を行う俳優や監督で構成されている。そして同劇団は次のように語る。「今回の作品『Bent』に描かれている同性愛者に対する迫害や偏見といったテーマが、現代のキューバ社会で今なお重要な意味を持っている。また、世界的な視点から見ても同様である」

キューバでは新労働法典が承認されて間もないが、批判的な意見 [3]が相次いでいる。同法典は、性同一性 [4]という概念が性差別の誘因となっているとする明確な認識を欠き、性転換者が差別を受けやすい状況を放置している [5]からだ。これまで、キューバのLGBT [6]とされる人たちは差別や迫害を受けてきた。しかしこの何年間で、権利獲得という観点から見れば大きな前進を遂げている。もちろん、取り組むべき課題はまだ残っている。 

同劇団の前作である「Blue/Orange」は、イギリスとノルウェー両大使館に加え、キューバ国内のスポンサーから資金援助を受けた。今回もノルウェー大使館からの援助が予定されているが、「Bent」は前作を凌ぐ意欲的なプロジェクトになるはずだ。

クラウドファンディングサイト「Indiegogo」は寄せられた資金を、リハーサル会場や劇場のリース料、音楽、照明、マーケティングキャンペーン、印刷物やグラフィックデザイン、衣装や小道具、演劇の撮影費、俳優・監督・プロデューサーの移動費などに充てると説明する。

Los requisitos del diseño de producción incluyen seis conjuntos completamente diferentes en el primer acto, y la construcción de un campo de concentración para el segundo acto. El vestuario y los accesorios abarcan numerosos uniformes nazis, tanto de las SA como de las SS, los uniformes de los presos, pelucas equipadas, fusiles descargados, juegos de gafas con montura de concha, cuchillos de la época, etc.

プロダクションデザインに必要なのは、第一幕に用いる全く異なる6種類のセット、第二幕で使用する強制収容所のセット。それに加えて、ナチス突撃隊(SA)と親衛隊(SS)の多種多様な制服一式、囚人服の着替え、役に合うウィッグ、演劇用ライフル、角縁メガネ、演劇用ナイフなど、衣装や装飾品も必要になる。

ベイリーは、「キューバの歴史的瞬間に立ち会えることを、大いに誇りに思う。私がキューバへ来てから数年の間に、キューバ国内ではLGBTへの関心が徐々に高まってきた。(…)だからこそこの時点で、「Bent」を上演することは(…)、世論を動かす力につながるはずだ」と語る。

「La Peña Meisner」は、その現実を見据えた活動により、ラテンアメリカ演劇界のリーダー的存在となった。2012年2月、「Las Tumbas Olvidadas」(訳注:「忘れられた墓」の意)でデビューを飾り、ハバナで開催された「ブリティッシュ・ウィーク」期間中に上演を行った。

2013年6月に公演を行った「Blue/Orange」に出演者の一員として参加したIdalmis GarciaとHector Noasは、キューバで最も栄誉とされる賞の一つ、「the Premios Caricato」にノミネートを果たした。

「Bent」初公演は、1979年ロンドンにて、イアン・マッケランとトム・ベル主演で行われた。なんとイアン・マッケランは、キャンペーン用に作られた動画に登場する。そして、「世界中で上演されているこの作品が、ようやくキューバ公演に辿りつくのだと思うと本当に嬉しい。『Bent』はどこで演じられようと、今日を生きる我々の生活と関連性を持ったものだと、誰もが気付いたと思う」とコメントを寄せいている。

1980年、「Bent」ニューヨーク公演の際にはリチャード・ギアが主演をつとめた。同公演は、1980年ピューリッツァー賞へのノミネートを果たしたとともに、ドラマティスト・ギルド演劇作品賞を受賞している。1997年にはショーン・マサイアス監督で映画化されている。

このクラウドファンディングのキャンペーン終了日は2014年7月23日だ。

校正:Masato Kaneko [7]