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勇敢な記者 後藤健二氏の死 世界中で悲しみの声

カテゴリー: 中東・北アフリカ, 東アジア, シリア, ヨルダン, 日本, メディア/ジャーナリズム, 人権, 市民メディア, 戦争・紛争, 政治

[リンク先には英語のページも含まれます。]

The world remembers Kenji Goto, the Japanese journalist beheaded by the ISIS. Photograph shared on Twitter by @halona [1]

世界は後藤健二氏を忘れない。ISISにより斬首された日本人記者。写真は@halonaによりツイッター上でシェアされた。

「イスラム国」と名乗る過激派組織(ISIS)によって支配される少し前のラッカで撮られたモバイル画質の動画 [2]で、日本人記者の後藤健二氏はシリアの人々は3年半にわたって苦しんでいること、そしてシリアでのISISとその行動について報道したいという思いを述べた。「もう十分だ」と彼は訴えた。

2月1日、ISISが後藤氏を殺害したというニュースに世界は震撼(かん)した。彼の妻が夫の命を助けてほしいと嘆願をした [3]わずか数日後のことだった。

妻の倫子さんによると、後藤氏は2014年10月25日にISISに捕らえられた。「それ以来、彼の解放のために、陰で根気強く働きかけをつづけています」音声メッセージの中で彼女は言う。「健二が捕われたことによって世界中のメディアが関心を高めていました。メディアの注目から子どもたちや家族を守ろうとしてきたので、今まで公にはしていませんでした」

倫子さんは注意深く、この出来事がどう進んでいったかを述べた。2014年12月2日にISISがメールで接触してきたことにも触れた。その約1ヶ月半後には、ISISが後藤氏と湯川遥菜氏 [4]の解放に対して2億ドルの身代金を求める動画を投稿した [5]。それでもなお、「武装集団との間で何度かメールでのやり取りがありました。私は健二の命を救うために闘ってきました」こう倫子さんは続けた。

しかし、身代金要求の期限が過ぎたあと、ISISは湯川氏を斬首した。それから、倫子さんには最後の要求が突きつけられた。それはもしヨルダン当局がイラクでの自爆テロ犯であるサジダ・リシャウィ死刑囚 [6]を解放すれば、その見返りに後藤氏を解放するという内容だった。

ISISは倫子さんに「世界中のメディアに今すぐに」伝えるよう要求した。さもなければ、後藤氏だけでなくISISに捕らえられているヨルダン軍パイロットのムアーズ・アル・カサースベ中尉の命も犠牲になるだろうと言った。倫子さんはISISの要求に従い、後藤氏の命を救うための努力を繰り返した。だが、この過激派組織は後藤氏を斬首し、後になってその動画を公開したとされる。

世界中で抗議の声

後藤氏の死が人々に与えた影響は、この過激派組織の最近の行動に対する世界中からの抗議の声に如実に現れている。世界中が、後藤氏をISISによって犠牲になった人物として記録されるのを拒んでいる。代わりに、Karimのように多くの人が、紛争地域の人々に傾けていた後藤氏の思いやりを称賛している。

アレッポで苦しむシリア人を見たあと涙する後藤健二氏。今回はシリア人が彼のために涙を流した。

シリア人ブロガーのNaderは後藤氏の勇敢さを称える。

後藤健二氏に敬意を表します。彼は真の国際人だった。地元の人々を支配するためだけに遠くから来たISISの極悪漢とは違った。安らかに眠れ。

ベイルート・アメリカン大学を卒業したHaya Atassiもまた、後藤氏のことを求められる以上の仕事をした経験豊富な記者だと述べた。

後藤健二(#KenjiGoto [10])、#ISIS [11]が殺害した日本人記者は#Lattakia [12]郊外にシリアの子どもたちにパソコンを教える学校を開いた。

ツイッターの自己紹介でこの7年間シリアに居住したと言うJean Pierre Duthionも、みなの態度に同調する。

#ISIS [11]の犠牲者として彼を示す写真は投稿したくない。これこそが後藤健二(#KenjiGoto [10]) だ。ISISは昨日、彼を斬首したのだ。

ほかの多くの人と同様に、サウジアラビア人アーティストのMalik Najerも、後藤氏の家族に哀悼の意を表明した。

サウジアラビアのMalik Nejerです。後藤健二さん(#KenjiGoto [10])の家族に哀悼の意を表明します。彼は良き人物でした。彼が安らかに眠れますように。

クウェート人のコラムニストであるDalaa AlMouftiは、涙を流す後藤氏の母親の写真とともに、ISISの犯罪者たちは、アラブ人の母親たちを恐怖に陥れるだけでは飽き足らず、日本にもそのテロ行為の手を伸ばした、とアラビア語でつづっている。

ISISの犯罪者たちはアラブ人の母親たちを恐怖に陥れるだけでは飽き足らず、そのテロ行為を日本にも伸ばした。こちらはISISによって殺害された日本人記者の母親です。

セレブや政治家たちも同様に、弔意を表した。著名な作家のパウロ・コエーリョもツイートで後藤氏を褒め称え、#IamMuath のハッシュタグを使い、カサースベ中尉との結束を表す声を上げた。

勇敢な後藤健二(#KenjiGoto [10])、あなたは我々の心で生きつづける。#IamMuath [19]と言うときが来た。神よ、この発言をお許しください。たとえ、私自身が彼はすでに死亡していると思っていたとしても。

アメリカ合衆国国務長官のジョン・ケリーも、声明文の中で、後藤氏の殺害は野蛮行為だと述べた。

後藤健二さんの奥様、家族そして日本の人々に心から哀悼の意を表します。彼がこのような野蛮な方法で殺害されたことはISILの残虐性を表しています。

匿名で運営されていて202万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント Historical Pics でも、後藤氏をその優しさで覚えておこうと呼びかけている。そして、シリアの子どもたちと会話中の後藤氏の写真を再掲載した。

私たちは後藤健二さんをこの姿で覚えているべきだ。真に勇敢で、素晴らしい人物だ。

だが、後藤氏の死に衝撃を受けたままの人も多くいる。ロンドンに拠点を置くEmily Finchはこう言う。

後藤健二さんが処刑されたことを知って、とても張りつめた気持ち。この事件を最初から見ていたから。

記者のDima Khatib はこのような行為はシリアだけでなく、誤ったイスラムという名の下で起こっているという悲しみの気持ちを伝えた。

後藤健二氏(#KenjiGoto [10])のような人が(彼に限らず誰であっても)、殺害されるのはとてもつらいことだ。私の祖国であるシリアで、イスラムの名の下で。 #Arab [26]

フリージャーナリストのBoutaïna Azzabi は昨年だけで118人の記者が殺害されたという目の覚めるような事実を思い出させてくれた。

また一人、記者がISISによって斬首された。後藤健二(#KenjiGoto [10])だ。2014年だけで、世界中で118人の記者が殺害され、220人が投獄されている。

後藤健二氏の47年の人生は、妻、そして2歳と生まれて数カ月の娘に受け継がれている。

校正:Sayuri Ishiwata [29]