フィリピン、スペイン語事情

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マニラの夜景 撮影:Flickrユーザーjoiz (CC BY-ND 2.0) .

東南アジアに位置し、7,000以上の島々からなるフィリピン。ラテンアメリカの国々と同じように、かつてはスペイン帝国の植民地であった。行政上はヌエバ・エスパーニャ副王領の一部であり、その支配は3世紀にも及んだ。植民地政府の主要言語はスペイン語であり、英語が優位を占めるようなったのは米西戦争にスペインが敗れ、フィリピンが2,000万ドルでアメリカに譲渡されて以降である。

20世紀を通してフィリピンのスペイン語人口は減り続けた。特に、マニラ市街戦(訳注:1945年連合軍と日本軍の戦闘)ではイントラムロスと呼ばれる昔からのスペイン文化の残る地域(西語)は大きなダメージを受けた。第2次世界大戦とその後の近代化の結果、フィリピンでは英語が主要言語の位置を占めるようになった。

1946年にフィリピンが米国から独立してからも、英語はフィリピン語 と共に公用語の地位を保った。今日フィリピンでは土着言語とともに、英語も母語として受け入れている。一方、フィリピンのスペイン語人口は、全人口の1%に満たないと推測されている。

2008年、ガスパル・カネラはブログ「Reino Desiam」で、フィリピンでスペイン語を話す人は実際には非常に少なくなっている事について考察し、スペイン語が、土着語に代わってフィリピン人の母語になるほど浸透できなかったのがその原因だと述べて(西語)いる。

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イントラムロス(訳注:スペイン時代に築かれた城壁)撮影: Flickrユーザーshankar s.(CC BY 2.0).

Muchos filipinos, los menos estudiados, hasta desconocen que estuvieron sometidos a un reino ibérico durante más de tres siglos. Los estadounidenses, tras expulsar a los españoles, trajeron a Filipinas barcos repletos de profesores de inglés. Tuvieron más éxito que los españoles en extender el uso de su idioma, pero tampoco todos en las islas dominan hoy día la lengua de Shakespeare.

フィリピンが3世紀以上にも渡ってスペイン帝国の支配下にあったことも、今となっては多くのフィリピン人は実感しづらい。スペイン人を追い払った後、アメリカ人は大量の英語教員をフィリピンに連れてきた。全土に7,000以上ある島々の全部を、シェークスピアの使った言葉の前にひざまずかすことはまだできていないが、それでもスペイン人よりもずっと、自国語を普及させることに成功した。

しかしながら、スペイン語がフィリピンから全く消えてしまったわけではない。フィリピン人の(西語)の多くはスペイン語に由来しているし、都市名、史跡(英語)、それに 通りや広場の名前(英語)もスペイン語だ。 そしてフィリピンの 古典文学(英語)はスペイン語で著されており、20世紀になってからも文学ではスペイン語の時代が長く続いた。その中でも、フィリピン民族主義(英語)の歩みに大きな足跡を残したとされるホセ・リサールの「ノリ・メ・タンヘレ (Noli me tangere)」(英語)は高く評価されている。

1896年12月30日、リサールは扇動の罪でスペイン当局によって銃殺されたが、今日ではリサールは国民的英雄として評価されており、処刑の前夜に彼が残した詩、「我が最後の別れ (Mi último adiós)」(英語)にはリサールのフィリピンへの想いが語られている。YouTubeユーザーのHispanic Filipinoがこの詩を朗読する動画。

ではフィリピンではスペイン語は死語(英語)になってしまったのだろうか?いやそんなことはない。ちょっと見には気付かないが、スペイン語は今でもフィリピンの島々に深く根を下ろしている。マニラで発行されているスペイン語週刊誌Nueva Eraの編集長、ギジェルモ・ゴメス・リベラは、スペイン語の将来に楽観的で、ブログFilipinas Única上で次の様な意見(西語)を述べている。

El español es bien fácil para cualquier filipino que hable tagalo, bisaya, bicolano e ilocano porque en estas lenguas indígenas están incrustadas miles de hispanismos. En estos idiomas indígenas todas las prendas que se llevan en el cuerpo se llaman en español: sombrero, camiseta, cinturón […] Todos los muebles y enseres que se encuentran dentro del hogar se llaman en español: cocina, cuarto, sala […] Todo lo que es infraestructura de urbanización se llama en español: […] esquinita, avenida, plaza…

フィリピンのタガログ語、ビサヤ語、ビコール語、イロカノ語話者にとってスペイン語の習得は非常に容易です。なぜなら、これらの土着語では何千ものスペイン語の単語が借用語として使われているからです。例えば衣料に関連した単語のすべてはスペイン語に由来しています。 帽子はソンブレロ、シャツはカミセタ、ベルトはシントゥロン[…]、家具や家の中の備品では台所はコシーナ、部屋はクアルト、居間はサラ […]、 街中でも交差点はエスキーナ、通りはアベニーダ、広場はプラサ[…]、と言った具合にスペイン語からの借用語が多数あります

こちらはチャバカノ語で書かれたEloiodoro Ballesterosの詩を Neptuno Azulが朗読している動画。チャバカノ語はスペイン語と土着語が混ざってできたクレオール言語。

近年、フィリピンではスペイン語への関心が再び増加している兆候が見られる。これはセルバンテス文化センター(西語)やその他のスペイン、フィリピンの教育機関、そしてフィリピンで話されてきた言語の遺産を守ろうとしている人々の努力の成果である。これらを支援する政府の動きとしては、2009年にはグロリア・アロヨ前大統領は、中等教育でスペイン語教育を部分的に再開(西語)している。教育分野だけでなく、ビジネスの分野(西語)でもスペイン語への関心が再び高まっている。

ブログFilipinas Únicaは、セルバンテス文化センター・マニラの館長、ホセ・ロドリゲスの2010年の発言を掲載(西語)している。

«Hace cuatro años el Instituto Cervantes de Manila tenía tres mil estudiantes y hoy tenemos más de siete mil. Nuestra sede es una de las que más alumnos de español tiene de todo el mundo», «Tenemos todo tipo de alumnos, desde jueces que quieren estudiar las leyes de la época colonial hasta personas que buscan un trabajo en un “call-center” que da servicios en español, pasando por el joven que quiere recuperar el idioma de sus abuelos».

4年前、セルバンテス文化センター・マニラでは3,000人の生徒がスペイン語を学んでいましたが、今日では7,000人以上に達しています。マニラセンターは世界中で最も多くの生徒を迎えているセンターの一つです。スペイン語学習の目的も人によって様々です。例えば、スペイン植民地時代の法令を研究している判事、スペイン語を使ってコールセンターの仕事に就きたいと希望している人、自分の祖父母が使っていた言葉を取り戻したいと考える若者と言った具合、目的はそれぞれ異なります

スペイン語がフィリピンで生きた言語だということを教えてくれる、Enseñando Español en Filipinas(訳注:フィリピンでスペイン語を教える)によりYouTubeに投稿された動画。フィリピン人の生徒が学校で学んだスペイン語を披露している。

Globalizado blog(西語)よりの転載。

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