シンガポールとマレーシアの「通行料戦争」に悲鳴を上げる利用者たち

Singapore-Johor Causeway. Photo from Wikipedia


ジョホール・シンガポール・コーズウェイ。ウィキペディア。

マレーシアのジョホール・バルとシンガポールのウッドランズを結ぶ、ジョホール・シンガポール・コーズウェイ(訳注:全長1kmあまりの橋のこと)は、何千人もの人々から通勤、通学、貿易や旅行等の目的で利用されている。この橋は、二つの国をつなぐ非常に大切な連絡道になっている。双方の国はそれぞれに、橋の維持整備費、および交通量規制の目的で通行料を徴収してきた。

昨年8月1日、シンガポールは車両入国許可料金 (VEP)を値上げした。(訳注:車両入国許可料金は、国外登録車両の入国に際し徴収しているもの)一方でマレーシアは、コーズウェイの通行料を値上げすることによって、それに応酬した。その結果、この橋を利用するのにかかる費用は突然これまでの約4倍に跳ね上がってしまった。

シンガポールのネット民たちは即座に反応し、今回の通行料の値上げがシンガポール経済に及ぼす悪影響を嘆いた。ブロガーのBetter off Tedは、マレーシアとの取引がいままでより高額になるだろうと 警告している

These toll hikes are poorly thought out and will just hurt businesses and trade. Your food, raw material imports are going to be more expensive as traders claim that they need to recover their costs.

この大幅かつ突然の通行料の引き上げはまったくずさんで、商取引の害になるだけだろう。貿易業者は輸送コストが上がった分の埋め合わせを求め、その結果マレーシアから輸入している食料や原材料の値段は今より高くなるだろう。

Jeff Cuellarは自分のブログで、コーズウェイをめぐる「値上げ合戦」 が既に多くの苦痛をもたらしていると述べている。

The causeway is more than just a bridge – it’s a link between the two countries that accounts for plenty of commerce going both ways. Both sides should have known that any toll/fee increase from one side would elicit a reactionary “I’ll raise my toll too!” response from the other.

Now, we’re all caught in something of a “price war” that’ll only end up hurting everyone in the end.

コーズウェイは単なる橋ではない。この橋は二つの国をつなぎ、盛んな交易の要として機能している。もし一方が通行料を値上げすれば、もう一方が「ならばこちらも値上げしようじゃないか」というような対抗姿勢を示すであろうことは、双方とも分かっていたはずだ。

いまや我々は、皆が痛手を受けるだけに終わる「値上げ合戦」のようなものにまきこまれてしまった。

新料金が適用開始となった昨年8月1日、マレーシアでは100名を超えるバスの運転手が通行料を払うのを拒否し、渋滞が発生した。この渋滞は、当局が料金の再検討を約束することにより、ようやく解消された。この「バス・ストライキ」が原因で、何千人もの通勤・通学者たちはコーズウェイで足止めを食らい、シンガポールまで歩くことを余儀なくされた。

バスのストライキで足止めとなった通勤者・通学者たちは、徒歩でシンガポールに向かった。

車両入国許可料金の引き上げに反対して、コーズウェイでバスがストライキ中

足止めされたマレーシア人たちが、ジョホール・バルからコーズウェイを歩いて渡ってる。何百人ものマレーシア人が足止めされてる……

ジョホール・コーズウェイは、通行料を払って車で通る以外に、シンガポールまで歩いて渡れるようにすべきだ。

C.N. Chongはマレーシアの日刊紙であるザ・スターに投稿し、この通行料の値上げがいかに労働者を痛めつけるかについて訴えている

これだけの高額な料金を毎日払わなければならないというのは全くひどい話だ。シンガポールに通勤する私たちがシンガポールドルで稼ぎを得ているからといって、皆が裕福というわけではない。

私たち通勤者は、確かに「身動きの取れない」人間の集まりだ。シンガポール人旅行者や週末に遊びに来る人たち、商用でマレーシアにやってくる人たちだったら、行き来する回数を減らすことでこの法外な通行料の負担を軽くすることもできるだろう。

しかし毎日の通勤にコーズウェイを使っている人たちは、通行料が高くなったからといって仕事に行く日を減らすことはできない。

マレーシアの野党である人民正義党のSteven Choongは、通行料の値上げの決定に透明性を求めた

私たちジョホールの住民は、コーズウェイで通行料が徴収されるようになって以来この25ないし30年、目立った保守整備工事をしているのを見たことがない。

私たちは関係するすべての省庁から説明を受ける権利があるし、収支計算書は市民が精査できるよう速やかに公開される必要がある。

シンガポールとマレーシアの「通行料戦争」はより多くの収入と利益を生み出すだろうが、双方は通行料の値上げがそれぞれの国の経済に及ぼす長期的な影響について考え直さねばならないだろう

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