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カツオ人間―日本人の心を掴んだ魚の頭型キャラクター

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katsuo ningen mascot [1]

高知県民イチオシの「店」と「メニュー」を選ぶイベント「『高知県の食卓』県民総選挙2015」のPRをするカツオ人間。写真は、 まるごと高知・高知県地産外商公社 [1]の厚意による。

日本には変わったキャラクターが数多く存在するが、その日本人でさえも「カツオ人間 [2]」にはいささか驚いている。「カツオ人間」は、日本で最も馴染みのない県の一つである高知県のキャラクターで、ふんどしをした人型のカツオである。

なぜそんなに驚いているのか?

後ろから見ると分かるのだが、カツオ人間の頭は、明らかに巨大な魚の頭を切り落としたものである。

カツオ人間 [6]は、2011年に高知県庁が東京・銀座にある県の観光推進事務所のマスコットキャラクターとして作ったものである。以来、カツオ人間は活動の場を大都会・東京から高知へと移し、 [7]様々な観光地を回り、高知県のあらゆる魅力をアピールしている。

カツオ人間は、本拠地・高知からFacebook [8]Twitter [9]を更新している。どちらも人気だが、Twitterがより人気がある。彼は、高知県をPRするウェブムービー、「カツオ人間・ザ・ムービー『はりまや橋 [10]であいましょう』」にも出演している。

全体的に見て、カツオ人間の人気は、田舎の高知県にとっては大成功だった。彼の名前と形はカツオが由来になっているが、日本中の人々が昔から高知といえばカツオを思い浮かべるのである。

かつお節は和食に欠かせない食材で、多くの地域でだしを取ったり料理に乗せたりして使われている。このかつお節を、日本中に長きにわたり大量に供給してきたのが、高知県の漁業である。

「カツオ」と聞いて日本人の大半が真っ先に思い浮かべる場所は、高知である。

A Katsuo, or Skipjack

張りぼてのカツオ。高知県・桂浜のみやげ物店にて。写真はNevin Thompsonの厚意による。

県民にとって、高知を日本の中で真っ先に思い浮かぶ場所にすることが、重要なことである。高知は、四国の太平洋沿岸に位置し、山々に囲まれており、どの高速鉄道からも遠く離れている。アクセスが悪いため、観光客(と、その観光客が落とすお金)を高知県に絶えず誘致するのに悪戦苦闘しているのである。

Seared katsuo with sea salt, garlic and citrus dip - a Kochi specialty. Photo courtesy Nevin Thompson.

カツオのたたきの食品サンプル。塩、にんにく、かんきつ類の果汁で食す高知の名物である。写真はNevin Thompsonの厚意による。

観光などの産業の振興もまた、重要である。県の定期報告によれば、高知は、日本の都道府県の中で時給と年間世帯収入が最も低く、若年層の失業率も最も高い都道府県の一つである。

東京への頭脳の流出が進行していることも、高知が他の都道府県より速く高齢化が進む原因となっている。

カツオ人間の仲間たち

日本の全ての地域、ごく小さな村までも、観光客を引き付ける強固なブランド作りのためにこぞって ご当地キャラクター [11]を制作している 。

カツオ人間は正真正銘の人気者になったが、他にもご当地キャラクターのスーパースターが存在する。

くまモン [12] は、熊本県が2010年に東京と熊本を結ぶ九州新幹線の開業をPRするため制作したものだが、県外でもおなじみになった。

ライセンス契約における巧みな戦略によって、くまモンの顔は下着からトイレのビニールスリッパまで至るところで目にするようになった。

地方では、マスコミに大きく取り上げてもらうために、ご当地キャラクターを活用してあらゆることをするようだ。

船橋市の非公式キャラクター・ふなっしー [16] 船橋市の特産物である梨のキャラクター)は、東京にある外国特派員協会で会見している。

ウォールストリートジャーナルが、ふなっしーの時給はいくらなのか尋ねている(何に対しての時給かは分からないが)。梨1,000個だとのこと。

ぱっと見ではその魅力がよく分からないキャラクターもいる。

愛知県岡崎市の非公式キャラクター・オカザえもん [19]は、もともと市の美術展の作品として作られた。

独特の見た目と若干皮肉な生い立ちにもかかわらず、オカザえもんは、後に作られたその女の子版である オカザえんぬ [22]と共に、国内で熱狂的なファンを獲得した。

ご当地キャラクターは、地方にとって日本中から観光客を呼び込むことができる強力な手段であることが、証明されたようだ。

高齢化による税収減と支出増の昨今、地方行政にとってもっと相応しい税金の支出先 [25]があるのではないかと指摘する人々も出てきている。

そのため、2014年はご当地キャラクターの淘汰 [26]が進み、人々に認知されていないと判断されたものは廃止された。

しかし、カツオ人間は今も活躍し続けている。日本人がカツオのたたきを好きなことも理由の一つだろう。

校正:Takako Nose [32]