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ロシア:「おしとやかさ」を競う美人コンテストで巻き起こる議論

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, ロシア, 女性/ジェンダー, 市民メディア, 芸術・文化, RuNet Echo
A small collection of the submissions to the "Russian Beauty" contest (both from competitors and protesters). VKontakte.

「ロシアンビューティー」コンテストに寄せられた参加者と反対者の写真の一部。VKontakteより。

3月8日の国際女性デーを記念して、ロシア最大のSNSであるVKontakteのあるコミュニティーが、女性の「おしとやかさ」を賛美する美人コンテスト [1] を開催した。参加を希望する女性は、頭にスカーフを巻いた姿の写真を送付しなければならない。「ロシアンビューティー [2]」と名付けられたこのコンテストには、応募が殺到した。しかし、排他主義的かつ性差別主義的であるとの批判を受け、主催者はこれに対するフラッシュモブ [3]をアップした。

このコンテストの主催者は、VKontakteの上のグループで、Duma(ロシア議会下院)と若干の結びつきがある討論クラブであるParliamentary League [4]だ。彼らは、3月3日付の発表で、次のように述べた。「我々は、女性を引き立たせる最高のアクセサリーはしとやかさであると考えています。そのため、このコンテストでは応募者にスカーフの着用を条件づけているのです。」

[5]

Anna Kazantsevaが掲げるカードには、「おしとやかさと性差別万歳」と書かれている。VKontakteより。”

コンテストの開催が発表された直後、Parliamentary Leagueが、しとやかさとヘッドスカーフをコンテストのメインテーマとしたことに対して、VKontakteユーザーの批判が始まった。女性だけでなく、一部の男性も、頭にスカーフを巻いた写真を投稿し、コンテストに参加した。彼女らは、次のようなカードを掲げて写真に写っていた。「おしとやかでもなく、性差別的でもなく。」また、Annaの写真を皮肉って「おしとやかさと性差別万歳」と。たくさんの女性が「おしとやかさ」というテーマを皮肉り、胸元を露出したり、ヘッドスカーフ以外何も身に着けないで写真を撮る女性もいた。

やがて、Parliamentary Leagueは挑発的な写真を削除し始めた。しかし、それによって、コンテストを批判する人々が、国際女性デーに女性のしとやかさを賛美することへの反対意見を示した公開書簡を書いてきたのである。

[6]

Inna Denisovaは、「おしとやかでもなく、性差別的でもなく。」と書いたカードとともに写っている。 VKontakteより。

Inna DenisovaはVKontakteで最初に #этонедебаты [7] (#これは討論じゃない)というハッシュタグを使用した一人である。3月3日に自身のブログで、コンテストへの異議を唱えている。

Потому что организаторы считают, что «девушка должна быть скромной». Нет, друзья, девушка в лучшем случае должна звонить родителям раз в день и чистить зубы утром и вечером (по желанию). Каждый из нас — вне зависимости от гендера, расы, внешности и возраста — вправе быть в этом мире кем угодно.

主催者は、「女の子はおしとやかであるべき」と考えているの。そうじゃないのよ、みんな。女の子は、せいぜい1日1回親に電話して、朝と夜歯を磨けばいいのよ。本人がそうしたいならね。わたしたちはみんな、性別、人種、見た目、年齢に関係なく、自分がなりたい自分でいる権利があるのよ。

コミュニティーのウォールに投稿されたある男性からの批判に対して、Parliamentary Leagueは、例え保守的だとしてもこのコンテストはまっとうな企画であると反論した。

Конкурсом мы поддерживаем образ скромных девушек, который считаем правильным и хотим распространить его по России. Почему мы не распространяем образ, например, независимой клубной распутницы? Потому что не считаем его правильным.

Мы поддерживаем одну из моделей поведения девушек. Другие мы не запрещаем. Если кто-то, в отличие от нас, желает распространить другой образ (например, вышеупомянутый “клубный”) – это его право. Мы же за скромность и порядочность.

このコンテストによって、我々は、我々が正しいと考え、ロシア全土に広める価値のあるしとやかな女性像を支持しているのです。なぜ我々が、例えば、独立心旺盛でクラブ通いの派手な女の女性像を広めようとしないのか?我々がそれを女性として正しくないと考えているためです。

我々は女性の行動の様々なモデルのうちの一つを支持しています。他を禁じているわけではありません。もし誰かが他のモデル(例えば「クラブ通い」)を広めたいのであれば、それはその人の権利です。しかし、我々は、しとやかさと上品さが好ましいと考えているのです。

[8]

Yekaterina Buller, VKontakteより。

RuNet Echoは、入賞者 [9]の一人であるYekaterina Buller [10]に、コンテストが女性差別的であるとの批判について伝えた。Bullerは、Parliamentary Leagueの主張と同じく、コンテストは全く性差別的ではなく、批判する人々は無知か「馬鹿」なのだと述べた。

Что “критики” считают патриархальным? Я бы не судила с этой позиции , а даже если и так , то, что в этом плохого. Во всех мировых культурах положительным является образ скромной и целомудренной женщины , жены, матери и хранительницы традиций. В условиях современной действительности нравственного разложения общества считаю разумным напомнить о этой позиции . Я не осуждаю феминисток и представителей других течений, но себя к ним не отношу. Все дискуссии по этому поводу лишь от отсутствия у нас (современной молодежи) четких понятий добра и зла, а так же от навязанных попкультурой лживых ценностей.

「批判家」たちはコンテストが家父長制的だと考えているの?私はそうは思わないけど、もしそれが正しい表現だとしたら、何がそんなに悪いっていうの?世界中のどんな文化でも、女性、妻、母親、そして伝統を大切にする人たちはしとやかさを昔から重んじているの。現代は社会的なモラルが崩壊しているから、こういった伝統的な役割を思い出すということは理にかなっていると思うわ。フェミニストや他の団体を批判するわけじゃないけど、私はそうじゃないの。こういう議論が起こるのは、私たち(のような現代の若い)世代が善悪について明確な概念がないことと、ポップカルチャーによって押し付けられた間違った価値観が原因なのよ。

Parliamentary Leagueにまつわる騒ぎは、今回が初めてではない。彼らは、今年2月にロシア正教の活動家であるDmitry “Enteo” Tsorionovを中絶禁止についての討論会での講演に 招待した [11] 。彼は、ゲイ、イスラム教徒、その他の団体に対して過激でしばしば暴力的な言動をすることで知られている。また、右翼政党であるLDPR(ロシア自由民主党)の若手下部組織のメンバーを、憲法改正と国の公式な価値体系の再形成について議論するイベントに招待したこともあった。

校正:Masato Kaneko [12]