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ネパール地震:僕の故郷を襲った悲劇

カテゴリー: 南アジア, ネパール, ニュース速報, 人道支援, 市民メディア, 災害, 行政, 架け橋
ネパールのタプレク村は地震により完全に破壊された。写真撮影:マダブ・アディカリ、許可を得て使用 [1]

ネパールのタプレク村は地震により完全に破壊された。写真撮影:マダブ・アディカリ、許可を得て使用

4月25日にネパールを襲った大地震 [2]による死者数は既に5千人 [3]を超え(原文掲載日は4月28日)、最悪1万人に達する [4]見込みだとも伝えられる。負傷者は8千人以上 [5]になる。地震とその余震の被害範囲は甚大 [6]である。復興には巨額の費用が必要になるだろう。国連によれば、800万人が被災し、140万人に食糧援助が必要だという。それをへき地に届けるのは特に難しい。

僕は英国在住だが、カトマンズから北西に約100km、ヌワコット郡 [7]タプレク [8]VDC(村落開発委員会)の生まれだ。ヌワコット郡は今回の震源地にかなり近い。土曜の大地震で、僕の家も含め、村は丸ごと全壊した。大自然の力によって僕は故郷を失った。

親類が4人亡くなったほか、10数人の親族や隣人が重傷を負った。タプレク村に政府の手の届く気配もなく、土曜の出来事以来、救援チームも来ていない。村人はひどい状態だ。けが人は手当てを待っている。子供も老人も寒さと雨に苦しんでいる。水も食料もない。

4月25日のマグニチュード7.8ネパール地震における地域別推定震度

ヌワコット郡 [7]やゴルカ郡、ラムジュン郡、ダディン郡といったカトマンズ盆地周辺は、最も地震の被害を受けた地域だ。国際社会は救援チームを派遣し、捜索・救助活動を援助してくれるが、まだ十分ではない。外国からの救援作業員はインド [11]や中国、英国、米国、シンガポール、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ブータン、カナダ、ポーランド、EUなどから来ていて、カトマンズ盆地内で捜索・救助活動を行なっているが、へき地の村落にはまだ到達していない。

インドのヘリコプターにイスラエルの病院、マレーシアの医師…世界中からネパール救援に駆け付ける

ニュースを聞いて、僕は英国から家族に何度も電話しようとした。心配なことに電話はつながらない。僕は次第にパニックしてきた。1分1分が1年にも感じられた。ネパール時間で土曜(4月25日)の深夜になって、やっと電話がつながった。僕は両親と電話越しに話し安否を聞こうとした。父から母に電話をかわってもらうと、僕が口を開く前に母は言った。「元気かい? 私らは大丈夫。でも家は無くなってしまったよ。親戚も、それに村そのものも」。僕は電話する前にテレビでこの地震の特集を見ていたから、悪い知らせを聞く心構えはしていた。泣くまいと頑張って、母と話している間はなんとかこらえた。でも通話を終えたら、もう涙を抑えることはできなかった。

この女性は米粒を粉塵や砂利からより分けていた。4月25日にネパールを襲ったマグニチュード7.8の地震で、家だけでなく、蓄えてあった家族の食糧も破壊されたからだ。カトマンズの約8km南、ブングマティ村にて。著作権 Demotix(2015/4/27) [16]

この女性は米粒を粉塵や砂利からより分けていた。4月25日にネパールを襲ったマグニチュード7.8の地震で、家だけでなく、蓄えてあった家族の食糧も破壊されたからだ。カトマンズの約8km南、ブングマティ村にて。著作権 Demotix(2015/4/27)

家族と話した後、ネパール警察本部や在ネパール米国大使館、インド大使館になんとか連絡を取って、救援チームを僕の村へ派遣する手配をしてもらおうと試みた。しかし電話回線はまともに機能していなかった。翌朝(4月26日)、村の救援の件でまた電話を開始した。インド大使館と米国大使館には、ツイッター経由で連絡を取ることができたが、残念ながらカトマンズ盆地の対応で精いっぱいで、僕の村まで救援チームの派遣はできないとのことだった。

(米国大使館「電話が使えるなら100番に掛けるか、9851281363宛テキストメッセージで警察に救援依頼を」に対し)
ヌワコット郡タプレク村、9851024011、9801024011…。救援願います。

他の人のツイートに励まされた。

インド軍、インド外務省対策室、こちらの救援状況はどうなっていますか?

ゴルカ郡、シンドゥーパルチョーク郡、ラムジュン郡、ダディン郡では村々が全壊している。救援求む。

そして、へき地の人々が放置されていることを懸念する人もいる。

ネパール地震で村々の犠牲者が放置されているのではと多くの人が思っている。これは見過ごしてはおけない。人の道に外れている。彼らにも救援が必要だ。

私たち(訳注:災害救助犬協会)の災害救助基地周辺の村々は、深刻な被害を受けた。

しかし、結果的に僕の村救援の動きには至らなかった。世界からの反応には、共感の意を表すものもあった。

ネパール地震題材の、よくできたサンドアート。「手を携え被害者救援を」とメッセージが添えられている。インドのオリッサ州プリー海岸にて。

ラプラク村は地震で完全に破壊された。

何千もの人たちと一緒に命がけで逃げた。二度と同じ目に遭いたくない。

地震当日以来、へき地の村人たちは救援事業の到着をむなしく待ち続けている。しかし今日(4月28日)付の報道 [40]によると、ネパール軍がへき地の救助活動を準備中だという。

校正:Takeshi Nagasawa [41]